青春と夏。KinKi Kids「ジェットコースター・ロマンス」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はKinKi Kids「ジェットコースター・ロマンス」(1998年リリース) です。




1997年に「硝子の少年」でいきなりミリオンセラーとなる、鮮烈なデビューを飾ったKinKi Kids。歌手活動に並行しながら、日本テレビ系ドラマ「ぼくらの勇気 未満都市」に2人揃って主演を務めたり、フジテレビ系「LOVE LOVE あいしてる」などを始めとしたテレビ番組のレギュラーなどを抱えるなど、一躍トップアイドルの座を掴むなど、所属事務所にとってかなり期待されているアイドルデュオでした。さらに、2枚目のシングル「愛されるより 愛したい」も「硝子の少年」に続いてミリオンセラーとなり、人気を不動のものにしていきます。

デビュー初年の忙しい1997年を経た翌年の1998年の一発目のシングルとしてリリースされたのが、この「ジェットコースター・ロマンス」でした。

この曲は、2人が出演した全日本空輸(ANA) '98 パラダイス沖縄キャンペーンのCMソングに起用されました。

この曲を手掛けたのは、デビューシングル「硝子の少年」と同じ、松本隆さんが作詞、山下達郎さんが作曲のコンビでした。

この曲は元々、KinKi Kidsのデビューに際して作った曲で、事務所側の了承まで得ていたものでした。しかし、達郎さんが「これでは100万枚いかない」と納得がいかず、事務所側に「もう1週間ください」とお願いして作られたのが「硝子の少年」でした。その為、デビューシングルとしてはこの曲はお蔵入りとなりましたが、3枚目のシングルとして改めて作られることになりました。

通常、達郎さんがプロデュースする曲の場合、編曲も達郎さんが手掛けます。自身や竹内まりやさんの一連の作品は勿論ですが、吉田美奈子さんのアルバム『TWILIGHT ZONE』、水口晴幸さんのアルバム『BLACK or WHITE』や、マザー・グースのシングル「貿易風にさらされて/マリン・ブルー」、鈴木雅之さんのアルバム『Radio Days』なども、プロデュースとアレンジを手掛けていました。作曲・編曲を担当した「硝子の少年」も例外ではなく、プロデュースを務めていました。しかし、この「ジェットコースター・ロマンス」は、作曲・プロデュースを務めながらも、アレンジに関しては、当時達郎さんが自身のアルバム『COZY』の制作で多忙だったことで時間が取れず、達郎さん自身によるアレンジは断念し、代わって多くの男性アイドルの作品を手掛けてきたアレンジャーの船山基紀さんに依頼し、アレンジをお願いしたそうです。その際、船山さんには達郎さんから、アレンジのイメージを伝える為に、達郎さんによるデモ・テープが渡されたそうですが、船山さんのアレンジはデモ・テープのものとは大きく離れたものだった為、達郎さんが驚いたというエピソードがあります。


上のリンク先は、達郎さんのラジオ番組「山下達郎のサンデー・ソングブック」で過去にオンエアーされた「ジェットコースター・ロマンス」の達郎さん歌唱によるデモ・テープです。KinKi Kidsによる船山さんアレンジの完成品とは、16ビートであることと、一部のシンセサイザーの音色が同じくらいで、デモ・テープは、もう少し落ち着いた、「硝子の少年」に近いテイストのようなポップスとなっています。また、Aメロスタートとなっており、違いは一目瞭然です。

現在よく知られているKinKi Kidsの「ジェットコースター・ロマンス」は、達郎さんの『FOR YOU』時代のような開放感のあるリゾート・ミュージックのような作品となっています。船山さんがそれを意識してアレンジしたかは不明ですが、そのような感じに聴こえます。また、サビスタートにすることで、インパクトを感じ、一気にリスナーを惹き付ける効果もあります。長年、歌謡曲の世界で多くの作品をアレンジしてきた船山さんの熟練の技が光ります。そして、この時期の船山さんは多くのミュージシャンと同様に、コンピューターによる音楽の制作に興味を持っていたことから、シンセサイザーやコンピューター・プログラミングを用いて作られていますが、ドラムやブラス・セクション、パーカッションなどの生音も積極的に使い、「コンピューター+生音」の折衷を違和感無く表現しています。シンセサイザー、コンピューター・プログラミング(ベースもコンピューターによるもの) は船山さん自身による演奏、ドラムは島村英二さん、エレクトリック・ギターは松原正樹さん、パーカッションは浜口茂外也さんと、過去に山下達郎作品に関わったミュージシャンが演奏に参加しています。また、この曲にはカヴァキーニョという、ブラジルの弦楽器が使われています。


カヴァキーニョ。

カヴァキーニョは、元々はポルトガルで用いられていた楽器で、ポルトガルから渡ってきた移民によってブラジルで広く波及するようになった弦楽器です。ブラジルでは国民的な音楽ジャンル「サンバ」などで使われます。そんなカヴァキーニョを使うことで、サンバのリズムのような、より明るいリゾート・ミュージックの趣を出すことに成功しています。カヴァキーニョを弾く日本人ギタリストは数少ないのですが、ギタリストの田代耕一郎さんが、あらゆる民族楽器を弾けるスペシャリストであり、このカヴァキーニョも演奏のプロだったことで、田代さんがこの曲のカヴァキーニョを演奏しています。

ブラス・セクションのうち、トランペットの数原晋さんと、サックスのジェイク・H・コンセプションさんは、やはり達郎さんの作品に参加したことのあるミュージシャンです。バイオリンはバイオリニストの友田哲明さんが弾いています。そしてコーラスに達郎さんが参加しています。

歌詞は松本さんによる、若き夏の青春をイメージしたものです。

夏はアミューズメント・パーク
濡れた髪が踊るたび Wow wow 虹が飛び散る

舞台は海岸ですが、その海岸を一つの「アミューズメント・パーク=遊園地」と見立てています。そこで過ごす一組の男女の物語のようです。濡れた髪がはしゃいでそよぐ度に、虹が出現しているような透明感が出ているようだと言っています。本来、虹が飛び散ることは無いですが、この表現には舌を巻きました。やはりスゴい、御大・松本隆。

サーフ・ボードに寄りかかりながら見てた Wow wow 海辺のシルエット

男はそんなはしゃぐ女の子を、サーフ・ボードに寄りかかって見とれていました。

何故か So Sweet はしゃいだあと So Sad 黙り込んで
瞳の奥 沈む真珠探しあった

楽しそうにしてた刹那、何処かに悲しみをみせるような表情に変わりました。
これは普通に読むとはしゃぎすぎて例えばペンダントを海に落としてしまい、女の子が悲しんでしまい、その悲しい瞳が見ていられなくなって、海辺で探しているとも読めますが、個人的には、その不意に見せた沈む表情が気になり、気にかけて話していくうちに、その女の子の心を探りあうような感じになり、本音を見せていく過程に繋がるんじゃないかとも読めました。

波はジェットコースター 素敵な風を集めながら 君をさらいたい いいだろう?

さっきの海岸=アミューズメント・パークという喩えだと、この波はジェットコースター。展開が早く、そして風を感じる乗り物です。そんな波に乗って風を感じ、その風の如く君をさらって僕のものにしたいという感じでしょうか。

恋はジェットコースター 時のレールを走りながら ぼくの手をギュッと抱いてて

そして恋もジェットコースターのように展開が早いです。時間を少しずつ経ても、ずっと手を繋いでいて、と呼び掛けています。

この曲の明るい雰囲気、「硝子の少年」とはまた違った、KinKi Kidsの醍醐味を味わうことが出来る作品だと思います。