大人に向けたチアアップソング。山下達郎「CHEER UP! THE SUMMER」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は山下達郎「CHEER UP! THE SUMMER」(2016年リリース) です。




実に新作のリリースは2013年の「光と君へのレクイエム」以来約3年ぶりとなりました。その間にもさまざまな事がありました。2014年に自身のライブツアーを開催しますが、これまで演奏されることの無かったレアな曲を中心に披露した「Maniac Tour」を開催し、成功すると共に、2014年度の「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞し、「パフォーマンス」も成功した形となりました。同じ年には竹内まりやさんの新作アルバム『TRAD』リリースとそれに伴う全国ツアー、2015年にはシュガー・ベイブのアルバム『SONGS』の40周年盤をリリースしました。2016年初めにはまりやさんが作詞、達郎さんが作曲・編曲を手掛けた嵐のシングル「復活LOVE」もリリースされ、大ヒットとなりました。

その一方、デビューを後押しし、その後も交友が深かった大瀧詠一さんが亡くなるなどの不幸や、2015年~2016年の半年に及ぶライブツアーでの岩手公演における喉の不調による中止など、達郎さんにとって波乱万丈な3年でもありました。

そして3年ぶりの新作としてリリースされたのがこの「CHEER UP! THE SUMMER」です。

この曲は松嶋菜々子さん主演のフジテレビ系ドラマ「営業部長 吉良奈津子」の主題歌として書き下ろされました。


「営業部長 吉良奈津子」のワンシーン。

ドラマは息子が3才になったのを機に、育休を取得していた広告代理店のクリエイティブ局に勤めていた吉良奈津子が、夫の理解を得て復帰するも、畑違いの営業開発部の部長に抜擢され、子育てと仕事の両立に奮闘するという作品でした。松田龍平さんや石丸幹二さん、松原智恵子さんといった実力派の俳優や、当時はまだ俳優として未知数だったDAIGOさんと中村アンさん、お笑い芸人ながら俳優としても活躍する板尾創路さんと原田泰造さん、そして「名探偵コナン」などのアニメに出演し、民放のドラマに初のレギュラー出演となった声優の高木渉さんが出演するなど、話題となりました。

ツアー終了後にオファーがあった為、制作がかなり大変だったそうですが、それでもスタッフに応える上質なチアアップ・ソングとなっています。自身を「座付き作家体質」と話すなど、作家的なイメージで曲を制作することが多い達郎さんは、当初はドラマのストーリーに寄り添った、アーバンな雰囲気な曲を作ったものの、スタッフから「もっと明るい曲にして欲しい」という要望があった為、現在の曲に作り替えました。但し、若い頃に言われた「夏だ! 海だ! タツローだ!」のような突き抜けたものでは無く、「現在の山下達郎」が作る夏の歌というテイストで作られ、突き抜け過ぎず多少抑制を効かせたといいます。

その為、テンポ自体は速めですが、アレンジにおいては1980年代のリバーヴ(エフェクトの1つで、残響音や反射音を加えることで音に深みをや広がり感を出すもの) の感じを出すなど、底抜けな明るさよりも、大人の上質な深みを意識したサウンドとなっています。ストリングス以外のエレクトリックギター・ウクレレ・ピアノ・ブズーキ・グロッケン・リズムプログラミングといった演奏は全て達郎さんによるものとなっています。勿論、代名詞とも言えるギターのカッティングも健在です。ストリングス・アレンジは作曲家でアレンジャーの牧戸太郎さんが手掛けています。

歌詞ですが、元々達郎さんは「言葉がメロディーに勝っているのが好きじゃない」と常々語っており、また歌詞においても「具体的な歌詞じゃなくていい」というポリシーもあり、この曲においても割と抽象的で広義的な歌詞となっています。でも私はこの達郎さんの紡ぎ出す歌詞はとても好きで、「文字コンプレックスなので、作詞家のような歌詞は書けない」と言っている達郎さんですが、こういった具体的では無いけど、とても想いが詰まった、心に響く歌詞だと思っています。それは「世界の果てまで」や「メロディー、君の為に」などといった曲にも当てはまります。

前述したように、チアアップ・ソングとして作られました。歌詞もドラマに合わせた大人への応援歌のようなものになっています。

いつまでそうしてうつむいている
光のディーヴァが 君を呼んでいる

失敗したり、躓いたりした時に、ディーヴァ(女神)が話し掛けています。「いつまでそうしてうつむいている」のと。

おいでよ 燃え立つ 風の中へ
ブルーなハートが 朱に染まる

もう一度立ち上がろうと、また困難な世界に足を踏み入れようとしています。それまで後ろ向きだった気持ちが、気合いを入れて真っ赤に燃えるように滾っています。

あきらめることはない アスファルトみんな熔けるほど
太陽を抱き寄せて 空へ舞い上がれ

諦めないこと。大事なことです。真っ赤に燃えるように滾る心は、地面を熔けるほどの勢いで燃えています。そして太陽と同じくらいになるまでになり、そしてもう一度踏み出していきます。

CHEER UP! THE SUMMER 僕たちの夏はまだ終わらない
BRING BACK! THE SUMMER 虹の中へ
WE CAN FLY!

まだまだ夏はこれから。この先もまだまだ活躍していくのです。そして羽ばたいていきます。

2010年代の山下達郎さんの曲で私が一番好きな曲です。今のコロナ禍で打ちひしがれそうな時に、こういう曲もいいじゃないでしょうか。