本日は高橋ひろ「くちびるがほどけない」(1995年リリース) です。
高橋ひろさんは友人たちとバンド「POPSICLE」を結成しバンド活動を行っていた時に、財津和夫さんにその才能を認められ、1987年に「チューリップ」に加入、キーボード・ボーカルなどを担当しました。2年後の1989年にチューリップは解散してしまいますが、アルバムではメインライターでボーカルの財津さんに代わってボーカルを担当したり、自作曲を提供するなど、末期チューリップを支えました。
その後は「POPSICLE」を再結成させインディーズで活動したり、CM曲を提供したりしていましたが、1993年にアルバム『君じゃなけりゃ意味ないね』とシングル「いつも上機嫌」でソロのシンガー・ソングライターとしてメジャー・デビューします。その同年に「アンバランスなKissをして」と翌年の「太陽がまた輝くとき」がフジテレビ系テレビアニメ「幽☆遊☆白書」のテーマ曲に起用されたことで大ヒットし、テレビ朝日系「ミュージックステーション」やフジテレビ系「HEY!HEY!HEY!」といった音楽番組にも出演するなど人気歌手となりますが、1996年に所属レーベルが消滅したことで細々と活動することになります。残念なことに2005年、高橋ひろさんは多臓器不全で亡くなってしまいました。
作詞・作曲・編曲を高橋ひろさん自身で行っています。この曲も含めてですが、基本的に詞はポジティブで明るく、日常に出てくるような詞で、男性目線が特徴的です。この曲は男性の熱のこもった想いを歌ったラブソングとなっています。
「喋り出す 君の瞳の空が ゆっくりと曇り出す」
とあるように、女性は少しそっけない、あるいはあまり男性に対して想いを寄せてないという感じです。出逢いは、男性が以前所属していたバンドのテープを同じスタジオで女性が誉めたことがきっかけとなり、親しくなります。それが時が経つにつれ、
「苗字に『さん』づけがいつか 名前呼び捨てになる」
となり、親密な関係を築いていく様子を描いています。
「夢じゃないよ 眠れないよ 叶えたいよ この恋を」
「くちびるがほどけないよ 体が言うこときかない」
徐々に進展していく関係をさらに進展させようと奮闘する男性。そして進展してくちびるを重ねた時、つい本音でもっとくっついていたい気持ちが出てしまいます。男性はそれだけ女性にゾッコンなのでしょう。
チューリップ時代の同士・財津さんや、作曲家・筒美京平さんの影響を受けたアメリカン・ポップな作風で、歌謡曲風ながらザ・ビーチ・ボーイズの影響を受けたコーラスワークなど、聴き所がたくさんある曲で、当時のメジャーレーベル時代に所属していた異名「Mr.Melody Factory」の名の通りの名メロディーを作られる方であることが窺えます。エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターはサザンオールスターズ・桑田佳祐さんのサポートも務めたこともあるギタリストの原田末秋さんによるもの、ピアノとオルガン、そして華麗なストリングス・アレンジは河合代介さんによるものです。コーラスの多重録音は全て高橋ひろさんです。
この曲自体は売れませんでしたが、間違いなく極上のポップスです。再評価されて欲しい方で、もっと売れてもおかしくなかった曲です。