今年は電子書籍が一つの流行語ともなっていて、電子書籍に言及した本も色々出ていますが、その中でもまともな方と思った。
私は、「日本のメーカーはだめだ!出版社はだめだ!アマゾン素晴らしい!アップル素晴らしい!」と頭ごなしに言っちゃう人はあんまり信用しません。同じように、「ガラケーはガラパゴスだから駄目だ!」って言っちゃう人も信用しない。
佐々木俊尚氏の「電子書籍の衝撃」もちょっとその傾向が強くて、読んでいて少し気持ち悪かった。書かれていたことは御尤も!だったんだけど。
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
posted with amazlet at 10.12.01
佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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うちも、電子書籍ビジネスに多少なりとも噛んでいます。ビューアを開発し、配信システムも開発しました。どちらも完全に自社製。そして、多くの出版社や作家さんとこの半年間でお会いしました。
その中で感じているのは、日本は確かにしがらみや利権問題があるんだけど、電子書籍にはかなり慎重なのだということ。だからだめなんだ!と言うのは容易いけれど。
そもそも、この本にも書かれているけれど、日本の電子書籍ビジネスというのはここ数年とかここ一年の話ではなくて、かなり昔から立ち上がっている。そして、壮大にコケている。
例えばこれ。
NECのデジタルブック。発売されたのは17年も前の1993年。
これが17年前とは思えない完成度と思いませんか?
他にも、ソニーのリブリエとか、松下のシグマブックとかも2003年には登場している。この頃も、散々雑誌等で「電子書籍の時代がついに!」みたいに散々煽っていたのを覚えています。
そして、コケた。
だから、今の電子書籍ブームも「またか」という感じで、慎重になるのは理解できることです。
幸いにして、メディアが今まで以上に電子書籍を煽っているため、方々が方々で旗を振っている状況です。正に群雄割拠。メーカーも出版社も印刷会社も通信会社もそれぞれが電子書籍ビジネスに注力している。このような状況は今までなかったと思います。だから、そういう意味で電子書籍の時代は来ている。
そして、ここからが重要なのですが、本来利害が一致しない会社が手を組んで大きな組織を作っているので、その歩みは非常に遅い。ここにベンチャー会社が付け入る隙があるわけです。それこそ隙だらけ。
書籍を売りたい人(コンテンツホルダー)にとってはどの陣営が勝つとか、どの端末が流行るかとか、どうでもいいんです。
この電子書籍の時代に大事なのは、「何で出すか」ではなくて、「どう売るか」。
この「どう売るか」という話を最近プレゼンに盛り込むようにしているのですが、かなりウケがいいです。単にウケているだけでなく、実際にここに来て話がかなり進んでいます。
というわけで、余談が長くなりましたが、この本の構成は中々おもしろい。
第1章 電子書籍の問題はどこにあるのか?(最初の「電子書籍の時代が来る」
「紙の本がなくなる」―二度目の「騒ぎ」
「リブリエ」の失敗 ―何度目かの「電子書籍元年」 ほか)
第2章 グーグルは電子書籍を変えるか?(あらゆる書籍のデジタル化に乗り出したグーグル
グーグルの「誤算」―ブック検索裁判
グーグルによって生まれる新たな電子データ市場 ほか)
第3章 「ネットは無料」の潮目が変わろうとしている?(「ニュース記事は無料」の時代は終わるのか?
サイトに高額課金すると新聞読者は戻ってくる?
メディア王マードックの野望―読者が減っても収入は増える? ほか)
「紙の本がなくなる」―二度目の「騒ぎ」
「リブリエ」の失敗 ―何度目かの「電子書籍元年」 ほか)
第2章 グーグルは電子書籍を変えるか?(あらゆる書籍のデジタル化に乗り出したグーグル
グーグルの「誤算」―ブック検索裁判
グーグルによって生まれる新たな電子データ市場 ほか)
第3章 「ネットは無料」の潮目が変わろうとしている?(「ニュース記事は無料」の時代は終わるのか?
サイトに高額課金すると新聞読者は戻ってくる?
メディア王マードックの野望―読者が減っても収入は増える? ほか)
第1章は、電子書籍の歴史のおさらい。Kindleの話なんかも当然出てくるんだけど、世の中の電子書籍本がアマゾンだアップルだと取り上げる中、この本が特徴的なのはグーグルの話だけで3章のうち1章使っていること。そして、最後が「どのように売るか」という章。そして、よくまとまっていると思いました。少なくとも、いわゆる電子書籍界の黒船に無条件降伏で大絶賛する感じではなく、比較的冷静に書かれていたのが好印象でした。