ほんの少々昔の話2~すべてを忘れても | 手相カウンセラー 井田東吾

手相カウンセラー 井田東吾

あなたの心に希望の灯をともす、運命カウンセリング。
手相をメインとした多角的鑑定です。



母の師匠は、
高名な書道家でもなく、
どの流派を名乗るわけでもなかったそうですが、
それこそ仙人のような、
清らかで品格のある、文字を書かれる方だったとかで、

母は子供の頃から、22歳まで、
ずっと師匠のお宅に通って、書道を習ったのだと言います。

かつては、子供たちはもちろん、大人もたくさん
習いに行っていたそうですが、
師匠が歳をとるにつれ、通う人も少なくなって、
最後の数年は、
ただひとり、母だけが通い続けていたようです。


母は師匠の字と、そのお人柄を心から崇拝していて、
誰よりも確かに、その字を受け継いだと言われることを、
今でもとても誇りにしています。



師匠に認知症の症状が見られるようになって、
通うのをあきらめた後の話です。

ある夏、伯父がたくさん鮎を釣り、
母が師匠のお宅に届けたことがあったそうです。

もうその頃はすっかり、認知症が進んでおられたらしいのですが、
師匠は久しぶりに訪問した母を見て、
以前と変わらない、穏やかな声と笑顔で
「今年のお題は、何やったかな?」
と、おっしゃたとか。


毎年、皇居での歌会始で披露された歌を、
師匠はよく短冊や色紙の教材にされたのだそうで、
その時、師匠の頭の中には、
母と2人で色紙を稽古した日々が甦っていたのでしょう。

傍らでそれを聞いた奥様は、
「何もかも、すっかり忘れてしまっても、
あなたのお顔を見たら、お習字のことだけは思い出すのですね」と、
しみじみとおっしゃったとか。


今、認知症の人口はどんどん増えて、
僕の身内も例外ではありません。

とどめておきたい記憶がどんどんと消えていく、
それはとても寂しくて心細いことです。

でも、
たとえほかの記憶がすべて消えてしまっても、
本当に情熱を傾けてきたことなら、
魂が望んだ、本来の使命を全うしたなら、
そんなふうに最後まで消えずに残るのかもしれない、

それは震えるほどすごいことだと、
僕は思いました。

僕もそんな風になれるだろうか・・・・・・と、
思いました。



ところで、その頃になって、
母にはとても大きな後悔がひとつ、残ったのだそうです。

そのお話を、
次回させて下さい。

今日も最後までお付き合い下さって、
本当にありがとうございました。





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