怪談サークル とうもろこしの会 -338ページ目

第5回「イーライ・ロスはいー奴だい」

第5回「イーライ・ロスはいー奴だい」



更新しました。


遅刻と墓



あるところに大遅刻をした。友達関係ではなく仕事関係だったのでけっこう問題の遅刻だったのだが、しれっとした顔をしてたら全く怒られずに済んだ。どうやら同じ仕事関係で他の用事をこなしてきた後だと思われているようだ。そんなこと一言も言ってないのに。ただ本当に何の言い訳もせずに「おはようございまーす」といつもどおりに挨拶しながら来たもんだから、まさかここまでの大遅刻をしてそんな平気に挨拶する筈がない、ああこれは遅刻じゃなくて予定通りにこの時間なんだな、という思考が働いたのだろう。もうちょっと人を疑うことを覚えた方がいい。そして、こういうやり口が巧みになってきた自分を大人になりつつあると感じる。




その前日、伊勢原に墓参りに行った。家族の墓ではない。恋人の墓でもない。ヨセフの墓だ。ヨセフというのは、あのヤコブの子のヨセフの墓である。NURの永田さんと二人で車を飛ばして向かったのだが、異常なまでに迷った。なにしろ町おこしや観光目的で作った墓ではなく、そもそも誰が作ったとかがない墓なので、何も目印となるものがないのだ。ちょっとここでは書けないような数々の困難と探索を重ねる僕たち。地元の人々への聞き込みも「そんな冷たくされたの生れて初めてだよ!」くらいに上手くいかず、ちょっと伊勢原市の人たちを嫌いになりそうになった(優しくしてくれた人もいた)。そんなこんなの後、ついにヨセフの墓を発見!それがどんな墓だったのかは、ちょっとここでは書けない。とぼとぼと家に帰った僕は、さんざんに酒をあおり、次の朝はここ数年で一番くらいの二日酔いになり、そして大遅刻をやらかしたという訳だ。








ナベツネ




また四月になってしまった。

四月という一年で最も呪わしい時期がやってきてしまった。

真新しいスーツに身を包んだ新入社員どもが大手を振って歩く地獄の季節が。あのくそルーキーどもが。見て!青き若葉のような僕たち私たちを見て!と街を闊歩しつくし、夜ともなれば新人研修の宴会帰りの初々しい仲間意識を見せびらかすという、古代ユダヤにおけるヘブル歴アブの月9日目が続くかのような忌々しき日々が。

なんか、四月になるたびにこんなことを書いてるな俺。季節の風物詩か。もし何年も前から僕の日記を読んでるような奇特な人がいたら「ああ例のね、春の訪れね」そう感じてもらえれば幸いだ。けど忠告、こんな文章を何年分も読む時間あるなら写経とかしてカルマを抜いていった方が今世にも来世にも建設的だよ。

それにつけてもあの新入社員という名の若い羊の群れの苛つくことといったら。あいつら自分たちが企業の羊になったこと、それも古代ユダヤにおける過越しの祭りで神への供物として首をぶちきられる犠牲獣である羊のように、会社に血を捧げるだけの存在となったことを分かっているのかね。まあ確かに僕も新卒の時には若気の至りから64社ものウンコ企業を回ってしまった過去をもつけど、本当に1社も受からなくて良かったよ。うっかりどっかのオシッコ企業に内定もらっちゃったりしたらアナタ。さんざん惰眠をむさぼりながら布団の中でオナラプーしたのち自分の起きたい時間に起きてオナラプーがてら作ったやけに創意工夫をこらしたインスタントラーメンを食い終わり近所のブックオフを1度に3軒も巡って100円コーナーを漁りつくしてオナラプーしたら夕暮れという、人間にとって最低限文化的な生活を送れなくなってしまうところだったじゃないか。ふう、アブいアブい。なんてことを人生の先輩たる俺が心配してやってるのにアイツらときたらなに?あのキラキラした感じ?なに?あの邁進感。ちょっとおい!なんだその笑顔!笑ってんのか!?嘲け笑ってんのか!?あ!今言った!「64社受けたらどっかは内定もらえるでしょー」すれ違いざまに吐き捨てるように言った! お前らアレだぞ!会社とかって忙しいんだぞ!このご時世、仕事中にブログ書くのなんてバイトじゃないと出来ないんだぞ!っがー!!

なんかね、だんだん年月が経てば傷が癒えると思ってたのに、なんかあれね、どんどん傷口が広がるだけなのね。でも、新入社員の彼らに罪は無い。新人研修で騎馬戦とか無礼講の宴会とかやるのはスゲエ羨ましいけど、罪は無い。プロレタリアート同士で争っても仕方ない。悪いのはいつも資本側の企業側。アイツらマジいつか潰す。別に資本主義を潰すつもりはないけど、俺を落した64社だけはいつか必ず何らかの形で復讐を果たす。ちなみに、いま目指してるベストの復讐方法は“ビルゲイツ並の金持ちになって、自分を落した企業を買収。合併記念パーティーには相手の社員全員を招集させ、俺の挨拶を聞かせる。「いやあ僕は昔、この会社に就職試験で落ちた経験がありましてね。どうも僕とはウマが合わないタイプの企業なのかもしれませんが(笑)。ま、どうぞこれからヨロシクお願いします(笑)」”

これサイコー。超やりてー。つーか実はこれ、ナベツネが中央公論社を読売グループの子会社にした時、そのパーティーの席上でぶちかました挨拶のパクリなんだよね。ひょう!ナベツネさいこー!まじリスペクトですよ。ナベツネって庭で小鳥を飼ってたりして、実はすごいナイーブな一面も持ってるんだよね。俺は分かる。ナベツネの抱えていた苦悩がよーく分かる。例え世界の全てがナベツネを嫌っても、俺だけはアイツの味方。そして、アイツと同じ復讐を64社全てに行わない限り、俺の人生は始まらない。

あとアレだね、4月1日だけに、入社式いったら人事の人たちが皆カラフルな三角帽子かぶってて「あなたの内定はエイプリルフール!」ってクラッカーならしながら入社を取り消せば愉快なのにね。それくらいバンバンやればいいのに、まったく日本人はユーモアを解さない民族だからなあ。



はい、いつも異常に長くなるんですよ、この話題になると。