怪談サークル とうもろこしの会 -280ページ目

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早朝に家に帰って飲んで寝る。
ので、この日はほぼムダに過ごしてしまった。やったことといえば、ご即位20年記念として天皇関係の本を読んだくらいだろうか。

11/7


オカルトラジオ略してオカラジの「すべらない怖い話」という大会に参加する。
すべらない話形式で、ランダムに怖い話を語っていくというイベントである。
同時にオカラジで生放送もしているらしい。
オカラジの放送の仕組みというのがよく分からずに来てしまい、
現場に来てもよく理解できなかったのだが、とにかく初の生放送である。
かなり緊張させられる。
誰に頼まれた訳でもないのに素人ラジオを配信している僕だが
あれは録音したものを誰に頼まれた訳でもないのに丹念に編集しているため
あまりにもアレな発言やドン滑りやらを一応はカットできるのである。
つまり毎回配信しているのは収録中の厳選された箇所であって
マグロでいえば極上の大トロ部分なのである。
あれで。

そんな僕なので、このイベントにおいては万全の態勢で臨まなければならない。
深夜のイベントなので、体力を温存しておくのが第一だろう。
そう思い、家にて軽い仮眠をとったところ
起きたのが22時53分だった。
ちなみに伝えられた集合時間は、渋谷に23時である。
久しぶりにゾクっとした。
財布だけつかんで猛ダッシュし、地下鉄に乗りこんで最前部に移動。
全力をもって運転席の壁を押して、少しでも車両を加速させようと努力する。
その甲斐あってか、23時10分には渋谷駅に到着。
最初、慌てて別の店に入ってしまい、
そこがセックス&ドラッグなライブハウスだったので
悪そうな店員さんから軽くキレられたりもしたが
汗だくになりながら15分遅れで到着できた。
約束の時間の7分前に起きたにも関わらず、わずか15分のビハインド。
「むしろこの程度の遅れで済んだことを誉めるべきではないのか!」
もし怒られたら、逆ギレしてごまかそうと思いながら会場入りすると、
まだ客入れすら始まっていなかった。
どうやら、僕に対しては一時間早めのスケジュールで伝えたようだ。
「楽しくやりましょう!」
とCHICKさんが笑顔で出迎えてくれたのだが
ものすごく的確な処置なので、怒るに怒れなかった。

さらにこのイベント、
オカラジの有名人がたくさん参加しているためか、
イベント会場の人数のみならず、放送リスナーの人数も多かった。
しかも投票で順位をつけるという過酷なルールを適用しているため
これでリラックスして語れというのが無理な相談である。
しかし逆に言えば
語り手であるDJ、お客さんがリアルに一堂に会するイベントというのは
オカラジの方々にとっても初めてのことらしい。
ここはまがりなりにもお客さんを前にしたイベントをこなしている僕が有利!
とも思ったのだが、やはり緊張することに変わりはなく、噛み噛みになる。
どんな人も「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングの席に座ると異常に緊張するというが、あれと同じ効果だろうか。
また、噛むだけならまだしも、
A子さんB子さんC子さんという仮名をつけた
3人の女の子が出てくる怪談を語っている途中で
緊張のためかアルファベットがゲシュタルト崩壊してしまい
(A子さんのA……あれ?Aってなんだ?いったいAって、なんでAっていうんだ?)
と頭がこんがらがったあまりに
走るA子さんの手をA子さんが引っ張ってしまったりというような
自分でも知らないまま、怖いというかシュールなシーンをアドリブで作ってしまったりもした。

そんな僕だったのが、これが運というかなんというか
組合せの妙で他の対戦者が互いに潰しあってくれたおかげで
見事、CHICKさんとの一対一の決勝に勝ち残る。
結果は一票差で敗れたのだが
「会場の人を一人か二人買収すれば勝てるかもしれない」
という、今後の建設的なプランに繋がる有意義な結果であった。
ここでこっそり言うが、実は事前に
どんなに噛み噛みの酷い話をしても
僕に投票してくれるサクラを一人用意しておいたのだが
彼が終電にすら間に合わないほどの大寝坊をしたため、
会場に来ることもできなかったのである。
我々の今後の課題はもう一つ
「目覚ましをちゃんとかけること」
であるだろう。

そんなこんなでイベントは終了。
始発を待つ間、ようやく緩い空気が会場に流れる。
撮影をしてくれた女性がカメラを片手に、イベントの感想を聞いてくる。
今大会のメイキングDVDに乗せるのだという。
敗れたとはいえ、僕も決勝の2人に残った身。
ここはひとつ、
去年の「キングオブコント」の決勝で敗れたバナナマン設楽が
勝者であるバッファロー吾郎に向けた爽やかな挨拶
「チョーくやしい!でも、おめでとう!」
をやれば盛り上がるだろう。
DVDにもよき思い出として残すことが出来るかもしれない。
そう思い、最後の力を振り絞って無理やりにテンションをあげる。
「いや普通に、悔しいですね。ムカつくっていうか……。あ、でも、おめでとう、とは伝えておいてください!」
最後の部分だけ一息にカメラに向かって叫ぶ。
設楽のような爽やかさがかなり減らされている上に、
同じ会場にいるのになんでカメラマンが伝言しなくちゃいけないのかという疑問も残るが、
まあ、最後の挨拶にふさわしいセリフは言えただろう。
そう悦に入ってアイスコーヒーを飲んでいると
なぜかまた、カメラマンの女性が僕に近づいてきた。
僕のコメントだけは余計に撮っておきたいのだろうか。
「すいません、録画ボタン押してませんでした」


帰り道、早朝の道玄坂は、動物みたいな人が沢山いて、怖かった。


11/6


久しぶりにイカの塩辛を作る。
イカというのはなんと人間に食べやすく作られたかと、いつも思う。さあ剥いてくださいと言わんばかりのバナナ、そして貝殻という自分で自分を乗せる皿を提供するホタテ貝、この両者に匹敵するのが、イカだ。強いていえばアニサキスに注意すべきだが、最近は冷凍されて運ばれてくるようで、身を引き抜いたら白い線の塊がにょろにょろという事態(幼児時代のトラウマ)には、とんと出くわさずにすんでいる。
特に塩辛という調理に適しているのが凄い。ハラワタが詰まってる袋が、ちょうどケーキ作りで生クリームを搾り出す器具、あれと同じ形をしているのだ。自分のバラバラ死体を自分の内臓と混ぜこぜにして下さい私はそのために生まれたのという、パンキッシュでファンキーな生物。そんな印象を僕に与える。
また、ちゅるるり、と最後までハラワタ絞りきった後、まだ袋に残っているハラワタをちゅぱちゅぱ口で吸い出すのも良い。アイスの蓋についたのを舐めるのと同じ要領だ。あまりにも食べ続けたせいか、最近はイカの内臓アレルギーになったらしく、耳の奥がジンジンしたりもするのだが、それでも構わずに吸い出す。ちゅぱちゅぱ。
ついでにイカ墨も吸う。本当のイカスミはスミイカの墨らしいのだが、スルメイカの墨も充分にうまい。ただ、墨の入った袋はかなり硬いので、ごりごりと歯で噛み切らなくてはいけない。奥歯をずっと動かしていると、そのうちプツン、と切れて、ジュワっと墨が溢れる。うまい。口の中が真っ黒になったところで、残りのハラワタをすすりあげてブレンドする。ちゅぱちゅぱ、ずぞぞ。鬼婆の気持ちがちょっと分かる気がする。

まったく食欲のわかない東海林さだお文。