11/6 | 怪談サークル とうもろこしの会

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久しぶりにイカの塩辛を作る。
イカというのはなんと人間に食べやすく作られたかと、いつも思う。さあ剥いてくださいと言わんばかりのバナナ、そして貝殻という自分で自分を乗せる皿を提供するホタテ貝、この両者に匹敵するのが、イカだ。強いていえばアニサキスに注意すべきだが、最近は冷凍されて運ばれてくるようで、身を引き抜いたら白い線の塊がにょろにょろという事態(幼児時代のトラウマ)には、とんと出くわさずにすんでいる。
特に塩辛という調理に適しているのが凄い。ハラワタが詰まってる袋が、ちょうどケーキ作りで生クリームを搾り出す器具、あれと同じ形をしているのだ。自分のバラバラ死体を自分の内臓と混ぜこぜにして下さい私はそのために生まれたのという、パンキッシュでファンキーな生物。そんな印象を僕に与える。
また、ちゅるるり、と最後までハラワタ絞りきった後、まだ袋に残っているハラワタをちゅぱちゅぱ口で吸い出すのも良い。アイスの蓋についたのを舐めるのと同じ要領だ。あまりにも食べ続けたせいか、最近はイカの内臓アレルギーになったらしく、耳の奥がジンジンしたりもするのだが、それでも構わずに吸い出す。ちゅぱちゅぱ。
ついでにイカ墨も吸う。本当のイカスミはスミイカの墨らしいのだが、スルメイカの墨も充分にうまい。ただ、墨の入った袋はかなり硬いので、ごりごりと歯で噛み切らなくてはいけない。奥歯をずっと動かしていると、そのうちプツン、と切れて、ジュワっと墨が溢れる。うまい。口の中が真っ黒になったところで、残りのハラワタをすすりあげてブレンドする。ちゅぱちゅぱ、ずぞぞ。鬼婆の気持ちがちょっと分かる気がする。

まったく食欲のわかない東海林さだお文。