【日本市況】円1%超急伸、日米中銀トップ発言控え-株6日ぶり反落 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アセモグルら)

掲題の今夕のブルーンバーグ記事。
ご参考まで。
 
日高正裕、横山桃花、酒井大輔

更新日時 

 

  19日の日本市場では円相場が対ドルで1%超上昇し、一時145円台前半に水準を切り上げた。日本銀行の植田和男総裁の衆参両院の閉会中審査とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を今週末に控え、ドル売り・円買いが優勢だった。

 

  株式は円高を嫌気した売りで6営業日ぶりに反落。日経平均株価は600円超下げて終えた。債券はあすの20年債入札が懸念される中、高値警戒感から下落した。

 

  植田総裁は23日に衆参両院の閉会中審査に参加し、利上げや株式市場の反応に関する意見聴取に応じる。米国では同日、パウエルFRB議長がカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演する。9月の利下げや先行きの金融政策に関して何らかの示唆があるかが注目されている。

 

  日銀が7月の金融政策決定会合で追加利上げを決めた後、米国景気の先行き不安も加わって急変動した金融市場は、内田真一日銀副総裁のハト派発言をきっかけに落ち着きを取り戻してきた。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは植田総裁の発言について、日米とも株価が戻り基調にあるため、内田副総裁と変わらないトーンになっても利上げ継続が重視され、タカ派と受け止められる可能性を指摘する。

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今週の目玉はFRB議長ジャクソンホール講演-FOMC議事要旨も

国内為替・株式・債券相場の動き
  • 円は対ドルで前週末比1.5%高の145円45銭-午後3時18分時点
    • 一時145円19銭に上昇、7日以来の高値
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前週末比1.4%安の2641.14
  • 日経平均株価は1.8%安の3万7388円62銭
  • 長期国債先物9月物の終値は前週末比11銭安の144円72銭
  • 新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)高い0.885%

為替

  円相場は一時1ドル=145円台前半に上昇。今週末のパウエルFRB議長の講演と植田日銀総裁の衆参両院の閉会中審査を控え、日米の金利差縮小をにらんだ円買い・ドル売りが広がった。

 

  東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、投機筋のポジションが円の売り越しから3年ぶりに買い越しに転換しており、「日銀の利上げを諦めていない投資家がいるのかもしれない」と語る。

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  柴田氏は、パウエルFRB議長も9月の利下げに向けた地ならしに入るだろうとし、「週末の日米中央銀行トップの発言を前に円を買いドルを売っておこうという動きかもしれない」と述べた。

 

  三菱UFJ銀行金融市場部為替トレーディンググループの大原豪上席調査役は、これまで意識されてきた146-148円のレンジを抜けたため、海外時間にかけて一段の円高リスクもあるとみている。

 

  大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、植田総裁が閉会中審査でハト派だった内田副総裁の講演をなぞる発言をすれば市場は安定する一方、「従来のタカ派発言を踏襲すれば円高方向に波乱の展開になる」と指摘。今週は円高方向の想定として145円くらいをみておいた方がいいかもしれないと述べた。

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前週末からのドル・円の推移

 

 

株式

  株式相場は6営業日ぶりに反落した。為替の円高進行を受けて売りが強まり、日経平均は一時700円を超える下げとなった。午前はプラス圏に転じる場面もあったが、前週に大幅上昇した反動も出やすく、買いは続かなかった。

 

  業種別では電機や自動車、機械など為替感応度の高い輸出関連株のほか、海外原油市況の反落を受け鉱業株が下げた。半面、上海輸出コンテナ運賃指数の上昇を背景に海運株は堅調だった。トヨタ自動車が3.1%値下がりしてTOPIX下落に最も寄与。指数を構成する2132銘柄のうち1696銘柄が下落した。

 

  アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、前週に上昇した反動で売りが優勢になったと指摘。電機や機械は円高進行に加えて機械受注がやや弱かったことも材料視され、利益確定売りが出ている可能性があると話した。ボラティリティーが高い状況が続く中、前週の上昇を受けたポジション縮小の動きがしばらくは出やすいと述べた。

  個別ではディスカウントストアを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが下落。今期の営業利益計画が市場予想を下回った。一方、カナダのコンビニエンスストア大手から買収の提案を受けたセブン&アイ・ホールディングスは制限値幅いっぱいのストップ高となった。

日経平均の日中チャート

 

 

債券

  債券相場は下落。23日に植田日銀総裁が閉会中審査で発言する内容を見極めたいと買いを控える雰囲気が強かった。20日の20年債入札への警戒感も重しとなった。

 

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、20年債入札や週末の植田日銀総裁の発言を控える中で相場全体に高値警戒感があると指摘。「2年債の0.3%台半ばや5年債の0.4%台は少し買い進まれた意識があり、水準的に買いづらい」と述べた。

 

  また、20年債入札については金利水準がまだ低く警戒感があるとした上で、「ボラティリティーが収まりきれておらず、リスクとリターンのバランスから魅力が改善していない」と話した。

 

  SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストはリポートで、短期的なショートカバーは国内外の投資家ともほぼ一巡したとみられるとし、ここからは金利上昇方向を想定した方がよいと指摘した。

 

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
  0.365% 0.505% 0.885% 1.720% 2.070% 不成立
前週末比 +1.5bp +1.5bp +1.5bp +3.5bp +3.0bp

先物中心限月の推移