掲題の今朝の毎日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
なお、昨日の日経と読売社説に対する
批判を繰り返せば、
4~6月期のGDPは、
インフレと負の需給ギャップが共存する
スタグフレーション色が最大の特徴であり、
また、個人消費の2期ぶりの前期比増加さえ眉唾ものだ。
いずれにしても、
インフレ抑制のための金融政策の正常化を急ぐと同時に、
その円高や景気後退リスクを抑えるための
5%への消費税率の恒久的引き下げが急務である。
8月5日の日本発ブラックマンデー(極端な円高と株安)は、
このままでは、一段と増幅されて我が国を
再び襲うことさえ必至と見ざるを得まい。
日米の金融政策の矛盾という国際政策協調の失敗は、
1987年の米国発ブラックマンデーがそうであったように、
何一つ解消されていないためだ。
経済規模がいくら大きくなっても、物価高に苦しむ国民の多くは実感が湧かないだろう。
今年4~6月期の名目国内総生産(GDP)が年換算で初めて600兆円を超えた。「戦後最大の経済」を目指した安倍晋三元首相が2015年にアベノミクスの柱に据えた目標である。引き継いだ岸田文雄首相は「成長型経済への移行を示す数字だ」と自賛した。
だが政権の成果とは言い難い。名目成長率はバブル期並みの7%強に達したが、押し上げたのは物価高だ。ウクライナ危機に伴うエネルギー・食料不足が引き金となり、大幅な円安が拍車をかけた。
物価上昇を差し引いた実質は550兆円台にとどまる。ウクライナ危機前とほぼ変わらず、国民がより豊かになったわけではない。
実質の成長率は3%台と1~3月期のマイナスからは回復した。ただ、ダイハツ工業などの不正による自動車の生産停止で落ち込んだ分が持ち直したに過ぎないと指摘される。
物価上昇を除いた実質賃金は6月、2年3カ月ぶりに前年比でプラスとなったが、ボーナスの増加という一時的な要因が大きい。家計の消費支出は低調なままだ。
6月に始まった首相肝煎りの定額減税も消費を押し上げる効果は限定的との見方が強い。将来の暮らしに不安を抱える家庭が貯蓄に回すケースも少なくないからだ。
最近の急速な円高など不安定な金融市場も懸念材料である。円安で押し上げられた企業の業績が悪化すれば、今後の賃上げにマイナスに働きかねない。
物価高の打撃は低所得者に集中する。首相は当初、分配を重視する姿勢を示していたが、成長優先のアベノミクスに回帰した。低所得者には給付金支給というその場しのぎの対応を繰り返した。
格差是正に本格的に取り組まず、非正規雇用の比率は4割近くに高止まりしている。低賃金労働に依存する構造を変えなかったため、消費の停滞からも脱却できなかったのではないか。
首相の退陣表明で、経済の再生は新政権に持ち越された。規模のアピールではなく、暮らしを底上げする政策こそ優先すべきだ。