書店のこれから 「守る」の先望む未来は | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

 

もっとも、ロンドンの書店のように書籍に係る消費税がゼロであれば、

これほどまでに我が国での書籍・出版業界の長期的な衰退は続くまい。

 

ミクロや業界における涙ぐましい努力には敬意を表するものの、

日本の書店の未来は、消費税率次第であると言っても過言ではない。

 

 

 

   書店の閉店が相次ぐ。今春の新刊書店の店舗数は10年前の約7割。昨年度は600店以上が閉じた(日本出版インフラセンター調べ)。人口も紙の本を読む人も減るが、予期せぬ本との偶然の出会いに魅力を感じ、書店の存続を願う人は今も多いだろう。

 

 書店の従来の商売は、薄利多売型が主流だった。出版取次会社が、店の規模などに応じて自動的に選んだ本を送ってくる。全国の書店で一定の幅広さのある品ぞろえを可能にするが、返品が多く非効率で、書店の取り分は少ない。

 

 書店、取次や出版社は改革に取り組む。精度の高い需要予測で返品を減らす、小回りの利く書店と出版社の直取引を増やす――。カフェなど本以外の柱を持つ動きもある。

 

 ただ、小規模な店や出版社も多く、新しいことを始める体力が乏しい場合もある。変化の裾野をどれだけ広げられるかが鍵になるだろう。

 

 書店の減少があらためて注目された大きな契機は、自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の活動だ。提言を受けて経済産業省もプロジェクトチームを設置し、既存の補助金を書店が活用しやすくする方策などを進める。

 

 国からの補助が、経営再建の一助になる場合はあろう。ただ、一発逆転の策があるわけではない。また、政治頼みになると、思想や表現の自由に関わる書店にとって、思わぬ副作用を生む恐れもある。

 

 書店を「守る」議論では、アマゾンや図書館など「ライバル」の規制案が持ち上がることもある。しかし読者の納得は容易には得にくい。一方で書店と図書館の間では、利用者を循環させ、需要を底上げする対策が始まっている。例えば業界団体などが今年始めた近隣書店の在庫検索サービスは、図書館の検索

システムとも連携を進める。

 

 書店を残すことが地域にとって有益ならば、より税金や労力をかける選択肢もある。たとえば鳥取県は県立図書館の本を、大手業者からの割引一括購入ではなく、地元書店から定価購入している。北海道留萌市では、住民が熱心に働きかけて出店を実現させ、その後も出張販売や朗読会を担い、店を支える。

 

 一口に書店と言っても、その潮流は時代によって変わってきた。家族経営の店。大型店。店主のセンスが光る独立系書店。私たちそれぞれが思い浮かべる店がなくなることを想像する時、何を惜しむのか。書店を守ることで、地域や自分のどんな未来を期待するのか。考えた先に、これからの書店の姿を見つけたい。