企業再生の円滑化促す仕組みづくりを | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

経済産業省は企業再生を円滑にするための倒産法制の見直し論議を始めた。焦点は私的整理への多数決原理の導入だ。英独仏などの主要国で同様の制度は導入済みで、産業の新陳代謝や企業再生の加速に効果があると期待される。迅速な制度改正を望みたい。

 

経営の行き詰まった企業を債務の減免などを通じて再生させる道筋には、大別して法的整理と私的整理の2つがある。

 

前者は裁判所の主導で経営陣の入れ替えや債務カットを進める会社更生手続きが代表例で、日本航空などの再生に適用された。

 

手続きの厳密さや公正さに優れるが、他方で「経営破綻の印象が強烈」「時間がかかるので、その過程で社員や顧客がいなくなる」などのデメリットも多く、再生の足かせになる恐れもある。

 

これに対して、銀行をはじめ主として金融債権者と当該企業の協議で進める私的整理は、当事者間の合意が成立すれば、迅速かつ柔軟に進められるのが特徴だ。その企業の評判や信用の毀損も軽微で済む可能性がある。

 

ただ私的整理には原則、協議に加わる全債権者の合意が必要で、ハードルが高い。そこで一部の反対が残ったとしても、多数の債権者の同意で債務カットなどをできるようにする、というのが多数決原理の導入だ。

 

例えばドイツでは制度を導入済みで、年間25件程度の利用実績があるという。実際の発動要件として裁判所の認可を求めるほか、債権額ベースで4分の3以上の特別多数の賛成を必要とするなど「多数派の横暴」を防ぐための一定の制約が設けられている。

 

日本でも同様の配慮をしたうえで、多数決原理の導入を進めるときだ。一部には慎重論もあるが、まずは制度を立ち上げ、運用などを不断に見直すことで改良を加えていけばいいのではないか。

 

日本経済はバブル崩壊後に債務整理が進まず、多くの企業が「ゾンビ化」した苦い経験がある。各企業が借金返済に追われ、前向きの投資が止まった。

 

足元の倒産件数は増加傾向にあり、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済開始や金利の先高観から債務の過剰を訴える企業も増えている。復活の可能性のある企業については、過重債務の重荷から早めに解き放ち、本来の力を発揮できる仕組みをつくることは、経済全体にとってもプラスである。