インドはロシアの侵略を座視するのか | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

インドのモディ首相がロシアのウクライナ侵略以降、初めてロシアを訪問した。9日のプーチン大統領との会談では経済や防衛の連携強化に合意し、ウクライナでの戦争の終結へ向けて「あらゆる協力の用意がある」と強調した。

 

モディ氏は昨年5月の主要7カ国(G7)広島サミットに招待参加した際も、ウクライナのゼレンスキー大統領に「できることは何でもやる」と約束した。いまの戦禍の原因はロシアの不法な侵略だ。暴挙への明確な批判を避けたままの姿勢に失望を禁じ得ない。

 

会談後に公表した共同声明は、貿易拡大や兵器の共同生産の促進をうたう一方、ウクライナ情勢は対話による解決が必要だとした。ウクライナに事実上の降伏を迫っているロシアへ肩入れしているとみられても仕方がない。

 

プーチン氏は5月に北京を訪れ、習近平国家主席と会談した。インドは中国と領土問題で対立する。モディ氏が慎重だった訪ロに踏み切ったのは、中ロ接近をけん制する狙いがあったとみられる。

 

インドは伝統的なロシアの友好国で、現在も兵器調達の4割近くを頼る。このため国連での非難決議に棄権を重ね、欧米主導の対ロ制裁にも加わらず、ロシア産原油の購入で戦時財政を支えてきた。

 

兵器や資源の依存は、見方を変えれば、大口顧客としての発言力に転じられる。モディ氏は「罪なき子供の死に心が痛む」と語った。ならばロシアを制止すべく影響力を行使する方法があるはずだ。

 

インドは国境紛争の相手の中国を「領土保全と主権」を理由に非難してきた。他方でロシアの侵略に口を閉ざしていては二重基準のそしりも免れまい。「戦略的自律」と称する独自の全方位外交による不作為は、人道危機へ加担しているに等しいと自覚すべきだ。

 

インドの外交姿勢は「グローバルサウス」と呼ぶ新興国・途上国に与える影響が大きい。欧米や日本はサウスの国々に対し、国際社会での「法の支配」の重要性を粘り強く説き続ける必要がある。