更新日時
-
月間買い入れ、5兆-5.5兆円への減額なら円安に-クートニー氏
-
170円へのドル高・円安進行を見込む投資家は増加傾向
米バンガードは、日本銀行が7月の金融政策決定会合で発表すると見込まれる政策修正で国債利回りを押し上げられなければ、円は1ドル=170円に向け下落するリスクがあるとみている。
ドルは161円を突破し、1986年以来の水準まで円安が進んでいるが、170円が次の大きな節目になり得る。今年に入り円は12%程度下げており、日本の当局による円の下支えに向けた介入や、日銀には大規模な国債購入の減額を求める圧力がかかっている。
日銀による国債購入の縮小は利回りの上昇につながり、日本国債への投資妙味が増すことで円に投資資金を引き付けることになるとみられる。
日銀は月6兆円程度の国債買い入れについて減額方針の具体策を今月30、31両日開く次回会合で発表する見通しにある。
バンガードの国際金利責任者アレス・クートニー氏は、小幅な減額であれば、市場を失望させるだけだろうとしている。
クートニー氏はバンガードのロンドンオフィスで行ったインタビューで、「7月会合で月間の国債買い入れ規模が5兆5000億円、あるいは5兆円への
減額にとどまった場合、市場は170円に向けて再びドル・円相場の押し上げに動く可能性がある」と指摘した。
同氏を含め170円までの円安進行を予想する投資家は増加傾向にある。
日本国債利回りは見劣り
日銀の国債買い入れ減額や利上げを巡る期待を背景に、10年物国債利回りは年初から40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、足元では1%を上回って推移。ただ、追加の政策修正は緩やかなペースで進められるとの見方が浸透する中、依然として他の主要国よりもかなり低い利回り水準にとどまっており、円が不利な状況に変化はない。
クートニー氏は、こうした相場環境で日銀の次回会合の重要性が増しているとし、国債買い入れ減額と追加利上げを積極的に進める必要があるとみる。「これら二つのどちらかで市場を失望させれば、ドル・円相場が進む方向は一つしかない」と付け加えた。
ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に行った調査では、7月会合で利上げと同時に国債買い入れ減額計画が発表されるとの予想は全体の3分の1にとどまっている。
日銀減額後の国債購入、月2兆-3兆円が下限の可能性-宮野谷元理事
日銀による長期国債の保有額は約584兆円と、発行残高の半分以上に膨張。買い入れの減額は利回り上昇につながる可能性が高く、価格に敏感な買い手の参入が見込まれる。クートニー氏は、国債買い入れテーパリング(段階的縮小)への政策転換は、欧州や米国に比べてかなり大きな波及効果が期待できると説明。10年債利回りは少なくとも1.50%まで上昇する可能性があるという。2日の日本国債市場では1.08%付近で推移している。
クートニー氏は、「そのインパクトの大きさに驚くかもしれないが、さらに重要なことは、それが次第に円の下支え要因になり得るということだ」と指摘。「われわれは最終的に日本国債には押し目買いの好機が来ると考えている」としている。
日銀の本格的な政策転換を待つ間、円が下落を続ける中で為替介入の可能性がより差し迫った懸念として市場にくすぶっている。
クートニー氏は、4月末から5月初めに実施された大規模な円買い介入が繰り返されたとしても、円安の進行ペースを遅らせる効果は限定的だとみる。日銀の引き締め策を伴わなければ、介入が効果を発揮できるハードルは高くなっていると指摘。こうした状況が続く場合、介入の実施後はドル買い・円売りの好機として捉えているという。
原題:Vanguard Sees Yen Sliding to 170 If BOJ Bond Policy Disappoints(抜粋)
(8段落目以降を追加しました)