政権と検察 暴走繰り返させぬため | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アセモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

極めて説得的。

ご参考まで。

 

 

    政権が法の支配や権力均衡への理解を欠き、検察人事に不当に介入しようとした「事件」である。国は判決を受け入れ、保有する文書を公開したうえで、事の経緯を国民に説明する必要がある。

 

 4年前に東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年が延長された問題をめぐり、大阪地裁は関連文書を不開示とした国の決定を取り消す判決を言い渡した。

 

 一連の経緯を振り返ると、当時の安倍政権の行動の異様さが浮かび上がる。

 

 検察官は定年延長できないというのが確立した法解釈だった。ところが内閣はこれを突如変更し、退官間近だった黒川氏を続投させた。検事総長に昇格させるための措置との受け止めが広がった。

 

 さらに検察庁法改正案を国会に提出し、政府が「公務の運営に著しい支障が生じる」と判断すれば、定年に達した検察幹部を特別にそのポストに留め置けるようにする規定を盛り込んだ。

 

 政治権力をチェックする使命を持ち、独立性・中立性が求められる検察を、人事を通じてコントロール下に置こうとするものだとの批判がわき起こったのは当然だ。

 

 国民の反発を受けて改正案は廃案になり、黒川氏も賭けマージャンが発覚して辞職したものの、政治と検察の関係に大きな禍根を残した。

 

 今回、大阪地裁が不開示決定を取り消したのは法務省内の一定の文書にとどまり、首相官邸と同省との間でどんなやり取りがあったのかなどを記録した文書は、その存否すら判然としない。

 

 それでも、真相を解き明かす糸口として判決を生かし、同様の事態が二度と起こらないようにする必要がある。

 

 安倍一強時代だったとはいえ、政権の理不尽な意向に従い、定年延長手続きをとり、自らの存立基盤を揺るがす法案の策定までした法務・検察の責任も忘れてはならない。

 

 折しも畝本(うねもと)直美氏が女性として初めて、検事総長に就任することが決まった。

 

 検察をめぐっては、自分たちの見立てに沿った供述を引き出すための強引な取り調べや、人権をかえりみない長期の勾留、さらには元検事正の逮捕など、信頼を裏切る行いや不祥事が相次ぐ。

 

 4年前は世論が政治の暴走を止め、かろうじて検察の独立が守られた。だが、もし守るに値しない存在と国民に思われたらどうなるか。

 

 新総長は危機感をもって組織を点検し、足元を固め直してもらいたい。国民の支えなしには、課せられた責務を果たすことはできない。