政治資金規正法 抜本改革が置き去りだ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の東京新聞社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

 自民党派閥の裏金事件を受けた改正政治資金規正法が成立した。金権腐敗の温床と批判される企業・団体献金、使途が不透明な政策活動費を温存する内容は、改革の名には値しない。国民の政治不信は解消されるどころか、かえって深まったと言わざるを得ない。

 

 岸田文雄首相が形ばかりの法改正を急いだのは、裏金事件の幕引きのためにほかならない。実効性のある改革を本気で目指すなら、23日までの通常国会の会期を延長し、与野党が抜本改革の論議を尽くすべきだったが、自民党にはその意思も能力もなかった。

 

 改正規正法が施行されても「政治とカネ」を巡る現状はほぼ変わらない。裏金事件の舞台となった政治資金パーティーはこれまで通り開催できる。パーティー券購入者名の公表基準額を現行の20万円超から5万円超に下げただけだ。

 

 政党の本支部への企業・団体献金も禁止されず、税金から支出される年300億円余の政党交付金との「二重取り」は改まらない。政策活動費の領収書や明細を10年後に公開すると定めたが、その方法はまだ決まっていない。

 

 改革の具体策の多くは今後「検討」するにとどまり、事実上先送りされた。実効性に乏しい「ザル法」との非難は避けられまい。

 

 首相と自民党が抜本改革に踏み込まなかったのは、裏金事件を反省していないからと断ぜざるを得ない。実態解明に消極的で、関係議員の処分も中途半端だった。規正法改正案を示したのも主要政党の中で最も遅く内容も緩かった。

 

 改正案修正を巡る協議の進め方も常道から外れていた。すべての政党や政治団体に適用される規定は幅広い賛同を得るのが望ましいにもかかわらず、野党第1党の立憲民主党とは誠実に向き合わず、公明党と日本維新の会の主張を部分的に取り入れるにとどめた。

 

 それですら、首相と維新の馬場伸幸代表との合意内容を巡る意見対立から、参院では維新の賛成が得られず、迷走を印象づけた。

 

 首相は改正法成立後の党首討論で、野党側の衆院解散・総選挙や退陣の要求を拒んだが、すでに政権の行き詰まりは明白だ。自民党内では9月の総裁選に向けた動きが活発になるだろう。

 

 総裁を代えても党の金権体質が変わらなければ国民の信頼回復は難しい。政権を選択するのは国民であることを肝に銘じるべきだ。