掲題の今朝の毎日社説。
極めて説得的。
ご参考まで。
不透明なカネの「抜け道」が残り、対策の具体化は先送りされた。政治改革の名に値しない弥縫(びほう)策で、国民を愚弄(ぐろう)している。
自民、公明両党などの賛成多数で成立した改正政治資金規正法である。岸田文雄首相は「火の玉となって」信頼回復に取り組むと意気込んでいた。しかし、民主政治の健全な発展のため、カネの流れを国民監視の下に置くという法の趣旨は置き去りのままだ。
![改正政治資金規正法が賛成多数で可決・成立した参院本会議=国会内で2024年6月19日午前11時53分、平田明浩撮影](https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/06/20/20240620k0000m070008000p/9.jpg?1)
ガラス張りには程遠い
求められるのは、政治資金の透明性を高め、活動の実態を目に見える形にすることである。だが、改正法はガラス張りには程遠い内容にとどまった。
公開基準が緩い政治団体を使い、政治資金の使途を分からないようにする余地も残された。透明性を高めるには政治資金収支報告書のデジタル化の徹底が不可欠だが、形ばかりの対応となっている。
日本維新の会の提案を取り込み、10年後に領収書を公開する仕組みが導入された。だが、これでは不適切な支出があったとしても、10年間は監視の目が届かない。
![党首討論で立憲民主党の泉健太代表に向かって発言する岸田文雄首相(中央右)=国会内で2024年6月19日、平田明浩撮影](https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/06/20/20240620k0000m070009000p/9.jpg?1)
野党が求めた企業・団体献金の見直しは、むしろ後退した。1994年の改正時には、廃止に向けて5年後に見直すとの規定が付則に入ったものの、今回は全く触れなかった。
政治家の責任強化も不十分だ。議員に収支報告書の「確認書」提出を義務づけただけで、会計責任者と同じ責任が問われる連座制は盛り込まれなかった。
歳費とは別に月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)について、自民は維新との間で、一旦は使途を公開することで合意した。ところが結局、合意文書に時期が明記されていないことを理由に、今国会中の実現を見送った。
カネのかからぬ政治を
そもそも問われているのは、カネの力で政治が動く現状をいかに変えるかである。
にもかかわらず、自民議員からは「政治にはカネがかかる」との開き直ったような言い訳が聞こえてくる。麻生太郎副総裁は、政治家を志す若者が資金を集めにくくなり「将来に禍根を残す」として、改正法に不満を示した。
本末転倒の主張である。多様な人材の立候補を促すには、本来、「カネのかからない政治」の実現を目指すべきだ。
選挙では、資金にものをいわせて私設秘書や地元事務所を増やすほど有利になるのが実態だ。特定の企業・団体からの多額献金により、政策がゆがめられる弊害も指摘されている。これでは民主主義のあるべき姿とはいえない。
政治のあり方を根本から問い直す骨太で中長期的な視点に立った議論が求められる。
ことは政治の信頼に関わる重大な問題だ。不祥事を起こした自民がいつまでも改革に背を向けているようでは、国民の不信は深まるばかりである。
岸田首相の下で初めて開催された党首討論では、野党から衆院解散・総選挙や退陣を求める厳しい声が相次いだ。
これで幕引きすることは許されない。改正法の付則には「施行後3年をめど」の見直し規定が入ったが、本来ならすぐに着手すべき課題ばかりだ。与野党には抜本改革への道筋を示す責任がある。