掲題の今朝の読売社説。
比較的説得的。
もっとも、日本経済は物価の趨勢的な低下というデフレでは明らかにない。
2%を超えるインフレが過去2年間以上も続いてきている。
だが、消費を中心に日本経済の長期停滞が続いていることも事実だ。
つまり、通貨安、
インフレ、
長期消費停滞、
少子化
という4重苦にあるのが、日本経済の実情なのだ。
したがって、「下請けへのしわ寄せを止めよ」といくら叫んでみても、
実効性に乏しかろう。
ここでも、消費税撤廃に向けた消費税率5%への恒久的引き下げと
金融政策の正常化を同時に実施する
財政と金融政策のポリシーミックスが鍵となる。
いたずらに「しわ寄せを止めよ」等と叫んでみても、
日本経済の4重苦の中で、
下請けへのしわ寄せという現状は変わるまい。
自動車業界は、量産に必要な認証「型式指定」の不正申請以外でも問題が少なくない。
物価高を受けたコスト削減のしわ寄せが、中小企業にばかり及ぶ根深い業界の体質を改めねばならない。
公正取引委員会は今年3月7日、日産自動車が、自動車部品を製造する下請け企業への納入代金を発注後に引き下げたとして下請法違反にあたると認定し、再発防止などを求める勧告を行った。
勧告後も不適切な取引が続いているとの報道があったため、日産は先月末、調査結果を公表した。法令違反は確認されなかったとしたが、内田誠社長は記者会見で、「取引先から不満の声が上がっていることは事実」と述べた。
社長直轄の組織を設け、取引先の声に丁寧に対応するという。
日本の自動車業界で中小企業に不満が強い背景には、構造的な問題がある。大手が、下請けに長期間の取引関係を保証する代わりにコスト削減を要請し、高い競争力を誇って共に成長してきた。
しかし、コロナ禍後、エネルギー価格の高騰などによる物価高が広がり、中小企業は、大手との取引でコスト増を販売価格に転嫁することに苦しんでいる。
公取委は2021年にマツダを下請法違反と認定したほか、22年にはトヨタ自動車グループの大手部品メーカー・デンソー、今年はダイハツ工業などについて、下請け企業との取引に問題があったとして社名を公表した。
自動車産業は、関連企業を含めて約550万人の雇用を支える基幹産業だ。率先して下請けとの取引の改善を進めるべきである。
業界団体の日本自動車工業会は、下請法の法令違反の有無などについて、点検結果を6月末までに公取委に報告する。課題を徹底的に洗い出してもらいたい。
自工会は、一連の問題を受け、取引の適正化に向けた自主行動計画を改訂した。エネルギーなど原材料価格の上昇分のうち、適正と考えられるコストは取引先が全額転嫁できるようにするという。
日本経済はデフレからの完全脱却に向けた転換点にある。トヨタは24年3月期決算の最終利益が5兆円近くに上り、ホンダも1兆円を超えた。大手が適正な価格転嫁を認め、中小企業の賃上げ余力を高めることが重要だ。
下請けへのしわ寄せは、自動車業界だけの問題ではない。物流業界などは、価格転嫁が特に難しいとされる。政府や公取委は、監視の目を強めてほしい。