車の認証不正 法令逸脱 謙虚に反省を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

 自動車の「型式指定」の認証試験をめぐる不正が、トヨタ自動車や他の大手にも広がった。基幹産業での法令逸脱の横行は、日本の製造業全体への信頼をも揺るがす深刻な事態だ。謙虚に反省し、原因究明と再発防止を急がなければならない。

 

 今回、不正が発覚したのはトヨタ、ホンダマツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社。ダイハツ工業での大規模不正を受けて国土交通省が各社に求めた社内調査で見つかった。計38車種で、うち現行6車種は出荷を止めた。

 

 5社とも安全性に問題はないとするが、認証試験はメーカーへの信頼を前提に、一台ごとの検査を省いて大量生産を可能にする制度であり、その根幹に関わる不正といえる。第三者を交えた詳しい調査が必要で、経営責任の明確化も避けて通れない。

 

 トヨタでは、エンジンを制御するコンピューターを不正に調整した試験のデータを提出したり、歩行者保護試験で左右片側の試験結果を両側に流用したりしていた。トヨタはグループの日野自動車やダイハツで認証不正が相次いでいたが、豊田章男会長は1月末の記者会見で、本体を含むさらなる不正は「知っている限りない」と述べていた。

 

 日野の不正発覚から2年が経つなか、国交省の指示による今回の調査まで見つけられなかったのはなぜか。一昨日の会見で十分な説明はなかった。子会社の問題と高をくくっていたなら経営陣の責任は重い。実際、トヨタでの不正は、ダイハツなどで起きていたものと類似している。

 

 豊田氏は会見で自社の不正を謝罪しつつ、「ブルータスお前もかという感じ」とひとごとのように語った。巨額の収益を上げつつ、その足元で消費者の信頼を裏切っていた企業のトップの言としては、違和感を禁じ得ない。

 

 会見では担当幹部が、不正の一部では認証試験の規定より厳しい条件を課していたと説明。開発姿勢への「自負」をにじませながら「その中で認証という意識がちょっと薄かった」と釈明した。だが、エンジン試験では、コンピューターの不正操作で出力不足のつじつまを合わせており、申し開きできないはずだ。

 

 豊田氏は、認証制度と現場の実情に「ギャップはあると思う」と語り、制度のプロセスに疑問を呈した。必要な見直しの議論は進めるべきだが、現行ルールを守らない理由にはならない。

 

 国交省は不正の実態を調べ、厳格に対処すべきだ。多くの不正を許した監督のあり方も再検証する必要がある。