エネルギー計画 再エネが脱炭素の王道 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の昨日の東京新聞社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 経済産業省は、国のエネルギー政策の方向性を示す、次期エネルギー基本計画の策定に着手した。原発には依存せず、再生可能エネルギーと省エネの普及・拡大を急ぐことこそ、世界が求める脱炭素社会への王道だ。

 

 概(おおむ)ね3年に1度の改定で、今回は2040年度の電源構成目標が示される。その中で焦点となるのが、原子力の位置付けだ。

 

 21年に策定された現行計画では、30年度の電源構成に占める原子力の割合は20%から22%で、「可能なかぎり依存度を低減する」と明記されている。しかし、政府は昨年、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ国際情勢悪化などによる原油急騰を受け、「原発の最大限活用」に方針を大転換。新増設も辞さない姿勢を打ち出した。

 

 とはいえ、原子力に対する国民の不信と不安はなお根強い。能登半島地震で避難計画の不備が浮き彫りとなったことで、不安は一層高まっている。

 

 今年1月、東京電力福島第1原発事故の「市民検証委員会」が、新潟県民を対象に実施したアンケートの結果では、同県に立地する東電柏崎刈羽原発の再稼働に「反対」と答えた人は60.5%と「賛成」の18.2%を大きく上回る。新増設はおろか、再稼働もままならず、強引な老朽原発の延命に頼らざるを得ないのが実情だ。

 

 3・11を境に原発は「安定供給」を支える電源とは言えなくなっている。

 

 一方、世界を見渡せば、脱炭素の主役は再エネだ。国際エネルギー機関(IEA)は、30年には新規発電設備の8割を再エネが占めるとの見通しを示す。

 

 日本の海岸線の長さは約3万5千キロメートルと世界第6位。洋上風力発電の適地は多い。地熱の推定埋蔵量は、米国、インドネシアに続く第3位。それだけで原発23基分の潜在力があるという。

 

 風力、太陽光の資源豊かな北海道、東北や九州の再エネ電力を本州の他地域へ送り込むための送電網の増強計画も進んでいる。電力融通が容易になれば、「再エネは不安定」とは言えなくなる。

 

 現行計画における再エネ比率は36~38%。次期計画ではより野心的に目標を引き上げて、政策資源を集中すべきだ。安全安心はもちろんのこと、化石燃料の輸入依存から脱却すれば、いたずらな「国富」流出の防止策にもなる。