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29日の日本市場では長期金利が2011年以来の高水準となった。日本銀行による金融政策修正への警戒感が強く、5年債利回りも09年以来の高水準に上昇した。
28日に連休明けの米国市場で長期金利が上昇したことも国内債券への売り圧力を強めた。5月の米消費者信頼感指数が市場の予想外に上昇したほか、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が追加利上げの可能性を完全に排除したわけではないとの考えを示し、米金融当局による早期の利下げ観測が後退した。
株式市場では金利上昇を嫌気して電力など有利子負債が多い業種が下げ、主要株価指数はこの日の安値圏で終えた。
一方、米金利上昇を手掛かりに軟調に推移していた円相場は、午後に日銀の安達誠司審議委員の発言が伝わったタイミングで買い優勢に転じ、一時156円台に上昇した。
国債減額、政策意図持って行ったわけではない-安達日銀審議委員
29日の国内債券・為替・株式相場 |
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債券
債券相場は大幅安。長期金利は12年半ぶりの高水準を付けた。米国の長期金利が強い経済統計を受けて大幅に上昇したことや、円安進行による日銀の政策修正への警戒感から売りが優勢だった。
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、月末にかけて年金基金の年限長期化の買いなどでしっかりする場面があるとみていたが、「需給のバランスが崩れてなかなか買いが入りづらくなっている」と述べた。
新発国債利回り(午後3時時点)
先物 | 2年債 | 5年債 | 10年債 | 20年債 | 30年債 | 40年債 | |
143円12銭 | 0.370% | 0.635% | 1.075% | 1.880% | 2.215% | 2.365% | |
前日比 | 38銭安 | +2.5bp | +4.5bp | +4.0bp | +2.5bp | +3.0bp | +3.5bp |
為替
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=156円台後半に急伸。日銀の安達審議委員が午後の記者会見で、中長期の予想インフレが上振れれば円安の政策対応を考えるなどと述べたことを受けて円買いが広がった。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、安達委員の発言を受けて円安と利上げが直接的に結びつけられてしまい、機械的に円買いで反応したようだと指摘。損失限定のドル売り・円買いもあり動きが大きくなったとした上で、午前にも同様の発言はあったため、円の上昇は一時的にとどまるとの見方を示した。
金融機関による公示仲値の時間帯は円売りが進み、一時はほぼ1か月ぶりの円安水準に下落した。
株式
東京株式相場は下落。長期金利の上昇を受けて利払い費の負担が重しとなりやすい電力や陸運、建設などが売られた。個別銘柄では中期経営計画が想定の範囲内と受け止められた三菱重工業や、中計で25年度の営業利益率目標を下方修正した三菱電機が大幅に下げ、指数を押し下げた。
朝方は買いが優勢となり、日経平均株価は節目の3万9000円を約1週間ぶりに上回る場面があった。政策保有株式の売却資金を企業の合併・買収(M&A)にも活用するなどとしたSOMPOホールディングスが買われ、東証33業種のうち保険業指数が上昇率首位だった。
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフストラテジストは、日経平均は3万9000円台に定着できておらず利益確定の売りが出やすいと指摘。国内でも日銀の国債買い入れ減額が進むとの観測が多く、金利上昇への警戒感は強まっていると述べた。