【日本市況】長期金利12年半ぶり高水準、日銀政策に警戒-円反発 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今日午後東証引け後のブルーンバーグ記事。
ご参考まで。
 
 
山中英典、酒井大輔、田村康剛

更新日時 

 

      29日の日本市場では長期金利が2011年以来の高水準となった。日本銀行による金融政策修正への警戒感が強く、5年債利回りも09年以来の高水準に上昇した。

 

  28日に連休明けの米国市場で長期金利が上昇したことも国内債券への売り圧力を強めた。5月の米消費者信頼感指数が市場の予想外に上昇したほか、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が追加利上げの可能性を完全に排除したわけではないとの考えを示し、米金融当局による早期の利下げ観測が後退した。

 

  株式市場では金利上昇を嫌気して電力など有利子負債が多い業種が下げ、主要株価指数はこの日の安値圏で終えた。

 

  一方、米金利上昇を手掛かりに軟調に推移していた円相場は、午後に日銀の安達誠司審議委員の発言が伝わったタイミングで買い優勢に転じ、一時156円台に上昇した。

国債減額、政策意図持って行ったわけではない-安達日銀審議委員

29日の国内債券・為替・株式相場
  • 新発10年債利回りは4ベーシスポイント(bp)高い1.075%と、11年12月以来の高水準
  • 新発5年債利回りは4.5bp高い0.635%と、09年11月以来の高水準
  • 長期国債先物6月物終値は前日比38銭安の143円12銭
  • 円相場は対ドルで0.1%高の157円08銭-午後3時35分時点
    • 一時157円40銭と1日以来の安値を付けた後、午後に一転156円92銭まで上昇
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は1%安の2741.62
  • 日経平均株価は0.8%安の3万8556円87銭

債券

  債券相場は大幅安。長期金利は12年半ぶりの高水準を付けた。米国の長期金利が強い経済統計を受けて大幅に上昇したことや、円安進行による日銀の政策修正への警戒感から売りが優勢だった。

 

 パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、月末にかけて年金基金の年限長期化の買いなどでしっかりする場面があるとみていたが、「需給のバランスが崩れてなかなか買いが入りづらくなっている」と述べた。

新発国債利回り(午後3時時点)

  先物 2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
  143円12銭 0.370% 0.635% 1.075% 1.880% 2.215% 2.365%
前日比 38銭安 +2.5bp +4.5bp +4.0bp +2.5bp +3.0bp +3.5bp

先物中心限月の推移

 

 

為替

  東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=156円台後半に急伸。日銀の安達審議委員が午後の記者会見で、中長期の予想インフレが上振れれば円安の政策対応を考えるなどと述べたことを受けて円買いが広がった。

 

  オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、安達委員の発言を受けて円安と利上げが直接的に結びつけられてしまい、機械的に円買いで反応したようだと指摘。損失限定のドル売り・円買いもあり動きが大きくなったとした上で、午前にも同様の発言はあったため、円の上昇は一時的にとどまるとの見方を示した。

 

  金融機関による公示仲値の時間帯は円売りが進み、一時はほぼ1か月ぶりの円安水準に下落した。

前日からのドル・円の推移

 

 

株式

  東京株式相場は下落。長期金利の上昇を受けて利払い費の負担が重しとなりやすい電力や陸運、建設などが売られた。個別銘柄では中期経営計画が想定の範囲内と受け止められた三菱重工業や、中計で25年度の営業利益率目標を下方修正した三菱電機が大幅に下げ、指数を押し下げた。

 

  朝方は買いが優勢となり、日経平均株価は節目の3万9000円を約1週間ぶりに上回る場面があった。政策保有株式の売却資金を企業の合併・買収(M&A)にも活用するなどとしたSOMPOホールディングスが買われ、東証33業種のうち保険業指数が上昇率首位だった。

 

  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフストラテジストは、日経平均は3万9000円台に定着できておらず利益確定の売りが出やすいと指摘。国内でも日銀の国債買い入れ減額が進むとの観測が多く、金利上昇への警戒感は強まっていると述べた。

日経平均の日中チャート