少額の個人株主に裾野広げ市場の発展を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝のもうひとつの日経社説。

 

一理あるが、

遺憾ながら、問題なしとしない。

 

100株を1単元として最低売買単位にする

非民主的な制度の改革に必要性は

筆者が知る限り過去40年間以上も続いているが、

何も改革されていない。

 

一株から買える民主的な米証券取引との格差は歴然。

 

長年美辞麗句を並べて来てみても、

魂がこもっていない空疎な

社説との批判を免れないのではないか。

 

誠に遺憾ながら、

東京株式市場はお世辞にも民主的な市場資本主義とは

言い難いのが現実である。

 

これを批判し改善を求めてこなかった我が国のメデイアの責任は

同社説を含めて重いと言わざるを得ない。

 

 

 

少額で株式を買えれば個人にとっても投資は身近なものになる。上場企業が株式を分割する動きはそうした声に応える取り組みといえる。個人株主の裾野を広げ、市場の健全な発展につなげたい。

 

既存の1株を2分の1や5分の1などに分割し最低投資単位を小さくするのが株式分割だ。購入に100万円かかる銘柄が2分の1になれば50万円で株主になれる。

 

2023年度に株式分割を発表した企業は191社で前の年度比6割増えた。NTTは23年夏に25分の1に分割。三井物産ソニーグループも今夏以降に予定する。

日本はこれまで最低投資単位が高く、個人のハードルとされてきた。株主数が膨らむことに後ろ向きな企業も少なくなかった。

 

これに対し、東京証券取引所は50万円未満に下げるよう促しているうえ、1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)が株式分割の契機になった。個別株に投資できる成長投資枠は年240万円が非課税の上限で、それ以下なら投資しやすくなるからだ。

 

少額であれば複数の銘柄に分散でき、積み立て投資もしやすい。一方で株式投資が初めてという個人は多い。リスクを踏まえつつ長期の資産形成にのぞむよう金融リテラシーの向上が重要になる。

 

経営側はアクティビストらから厳しい要求を突きつけられる中、安定株主を増やしたい思惑もあろう。株式の持ち合いも崩れてきた。しかし、個人株主も持続的な企業価値の向上を望んでいる点で変わらないはずだ。

 

野村資本市場研究所の調査では23年の株主総会で全議案に賛成した個人の比率は62%と2年前から13ポイント下がった。配当のほか役員選任にも反対が目立つ。個人株主が増えることがガバナンスの緩みになってはなるまい。投資家向け広報(IR)の充実が欠かせない。

 

株主総会では総会資料のデジタル配布が認められた。物理的に離れた個人株主もオンラインで参加できるような総会のあり方を多くの企業が探るべきだ。

 

日本には単元株制度があり、東証の要請で100株を1単元として最低売買単位にしている。このくくりを変えることで投資金額を小さくする方法もあろう。

 

不特定多数が株主になる株式会社の仕組みは本来、中間層を豊かにするものだ。企業が持続的に成長し、生み出す富が広く家計におよぶ循環に結びつけたい。