掲題の今朝の日経社説。
一理はあるが、問題なしとしない。
金利はあっても、インフレ率に届かない実質マイナス金利の現状では、
インフレを一段と加速させかねないだけでなく、
株式、不動産、為替等の資産バブルを一層増幅させかねない。
欧米では実質金利はプラス圏にあり、
インフレ下でもリスクを抑制する
(短期証券を含む)現金保有の魅力が増している。
インフレ調整後の実質金利がマイナス圏に
沈んだままの日本経済や金融市場を所与として、
いたずらに金融投資を進める同社説は、
客観性に欠けており、
恣意的あるいは我田引水ともとられかねない
主観的な主張との批判を免れまい。
最後にインフレ下では、まずインフレ抑制のための
金融引締政策が再優先になることも言うまでもないが、
同社説は沈黙したまま。
重ねて、誠に遺憾な社説と言わざるを得まい。
「金利ある世界」が家計にも訪れる。金利収入が増える一方、住宅ローンなど負債の利払いは重くなる。正常化の過程であり、全体では恩恵が上回るが、実際の影響は世代ごと、資産状況ごとに異なる。プラスマイナス両面を認識し怠りなく備えたい。
日銀によるマイナス金利解除後、金利上昇が鮮明だ。長期金利の指標となる10年物国債利回りは22日、11年ぶりに1%台に乗せた。
生活者に身近な預金金利も上がり始めた。主要行の普通預金金利は0.001%から0.02%になった。家計金融資産2141兆円のうち約650兆円を占める、普通預金など流動性の高い預金の利息収入だけで年1200億円増える計算だ。
デフレ時代、家計は富を失った。1990年代初頭に年39兆円あった利子収入は、2022年には約6兆円とおよそ8割減った。これが反転すれば、国内総生産(GDP)の過半を占める個人消費の押し上げ効果も期待できる。
世代ごとに影響が異なる点には注意が必要だ。預貯金の6割強を保有する60代以上のシニア層には金利が追い風に働く半面、蓄えが少なく負債が多い世帯ではマイナスの影響が大きい。
代表が住宅ローンを多く抱える30代だ。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、金融所得増のプラスと住宅ローンの利払い負担増のマイナスは、全世帯平均では最大年7.7万円の差し引きプラスだ。ところが30代では年55.5万円の負担増となる。
低金利と税優遇の結果、住宅ローン残高は200兆円を超え、金利上昇に弱い変動金利型が7割を占める。頭金ゼロや夫婦がともに主債務者となるペアローンなど債務が膨らみがちな契約も多い。
低金利下でさえ返済負担が重いクレジットカードや消費者ローンの債務残高も増えた。奨学金も例外ではない。上限はあるが金利は卒業後の返済時点の市場金利に連動する。国は返済が不要な給付型の一段の充実を図ってほしい。
金融リテラシーが重要性を増す局面でもある。金利ある世界では物価上昇率を差し引いた実質ベースの物差しが重みを増す。
実質賃金は史上最長のマイナスが続く。預貯金金利も上がったとはいえ物価上昇には及ばず、実質的に目減りしてしまう。ライフプランに投資を組み込み購買力を保つ努力が欠かせない。