定額減税のアピール 首相の露骨なご都合主義 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の毎日社説。

かなり説得的。

 

定額減税は一時的であり、限定的な効果しかうまない。

また、消費長期停滞の中、恒久的な5%消費税率への

引き下げに勝る財政政策はない。

 

しかも、金利の正常化を伴わない定額減税では

インフレマインドをかえって煽るおそれさえある。

 

大変失礼ながら、岸田首相は経済学の基本を

少しも理解していないと言わざるを得ない。

 

 

 国民受けしそうな政策だけを一方的に宣伝するのは、あまりにご都合主義ではないか。

 

 物価高対策として昨年末に決まった定額減税が6月から始まるのを前に、政府がアピールに躍起になっている。主導した岸田文雄首相は今週、国会で「国民は手取りが増える形で効果を実感できる」と強調した。

 

 所得税と住民税合わせて1人4万円となる。家族構成や給与によって月ごとの税金の引かれ方が異なり、政府は近くモデルの試算を示す方針だ。加えて、会社員らが受け取る給与明細に減税額を記載することも義務づけた。

 その一方で、国民負担につながる政策では、金額の公表に後ろ向きだ。

 

 「子ども・子育て支援金」の財源と位置付ける医療保険料の追加徴収額は、モデルの試算をなかなか示さなかった。国会で給与明細に記載するかをただされたが、首相は明言を避けた。

 

 どのような政策でも、国民に分かりやすく説明するのが政府の役割である。負担だけ明示しないのは、筋が通らない。

 自民党派閥の政治資金問題が響いて、内閣支持率は低迷が続く。減税をことさら強調するのは、政権浮揚の道具として利用しているとみられても仕方がない。

 

 給与明細への記載に伴って、中小企業を中心に事務処理などの負担が増すとの懸念が出ている。

 

 毎月の減税額は社員によって差がある。業務は煩雑になり、システムの改修を迫られる事業所も少なくない。生活支援を掲げた政策が中小企業にしわ寄せを及ぼすようでは、理に合わない。

 物価高対策は本来、打撃が大きい低所得者に限定すべきだった。だがネットで拡散した増税イメージを払拭(ふっしょく)しようと、首相が一律の減税にこだわったと言われる。高所得者も対象となるため、「貯蓄に回されるケースも多く、景気刺激効果は乏しい」と指摘される。

 

 財政への影響も心配だ。減税総額は3兆円超に上り、借金漬けを一段と深刻化させる。将来世代へのツケを重くするものだ。