掲題の今朝の日経社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ最南部のラファに本格侵攻する構えを崩さない。100万人以上の市民が身を寄せるラファでの地上戦は、危機の段階を上げかねない。7カ月に及ぶ戦闘でガザでは既に3万5千人が命を落とした。深刻な惨禍を食い止めるため、イスラエルの自制とそれを促す国際社会の圧力を強く求める。
イスラム組織ハマスとイスラエルによる戦闘休止と人質解放交渉は物別れに終わった。ハマスが受け入れた案をイスラエルが蹴った形だが、昨年10月に先に越境襲撃を仕掛けながら、逃げ切りを狙うハマスにも重大な責任がある。合意が遠のけばガザ住民、人質とその家族の苦しみはさらに長引く。
その交渉のさなかにイスラエル軍はラファ東部で限定的な地上作戦を始め、退避勧告の対象も広げた。戦闘を逃れてきた人々を追い立てるものだ。人道危機を一段と深める、なし崩し的な侵攻拡大を容認してはならない。
後ろ盾の米国は自制を求めている。バイデン大統領はイスラエルがラファに本格侵攻すれば武器供給を止めると警告した。全米の大学ではガザ攻撃への抗議デモが広がり、放置すれば11月に大統領選を控えるバイデン氏への逆風になる。イスラエルを全面支援していた米国の変化を歓迎したい。
ラファ侵攻の阻止にとどまらず、国際社会はガザの停戦への道を探るべきだ。イスラエル軍が制圧したはずのガザ北部ではハマス戦闘員が再び集結し、イスラエルは地上作戦を再開した。これではいたちごっこだ。終わりのない不毛な戦いは、国際世論とイスラエルの間の溝を広げるだけだ。
同国の国連大使は10日の国連総会の演説中、国連憲章をシュレッダーで細断し、パレスチナの国連加盟に向けた決議案に賛成する国を「恥を知れ」と批判した。それで味方は増やせまい。決議案は圧倒的な賛成多数で採択され、反対したイスラエルや米国の孤立を際立たせた。国際社会の認識の重みを真摯に受け止めるべきだ。