トヨタ最高益 成長投資続け経済牽引を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の産経社説。

一理あるものの、

問題なしとしない。

 

同社最高益は誠に慶賀に値するのだろうが、

その光の影として、

それが本当の実力なのか、

大幅円安という他力もあるのではないか、

さらに重要なことは、

同社の最近の連続不正検証問題などに

典型的に見られるように

むしろ大幅円安と好業績の裏で、かえって

慢心等の企業ガバナンス上の

ゆるみなどの懸念も否定できまい。

 

特に、日米の購買力平価の近傍とみられる

1ドル108円から40~50%も乖離してきている

最近の大幅円安のひずみは、

4月マンスリーでも指摘済みのように、

自動車などの輸出可能財や

輸入ワインなどの輸入競合財などの

輸出・輸入両面での貿易財の相対価格を有利に、

一方、レストラン、理髪、出版などの

非貿易財の相対価格を不利にし、

既に2022年春以降購買力平価から大きく乖離する

現在のドル円レートが長期化・恒常化すれば、

日本経済の資源配分に大きな歪みを惹起しかねない。

 

つまり、トヨタ最高益だけに焦点を当てるかのように、

今の我が国の最高の勝ち組であることに間違いない同社のみを、

日本経済の成長や投資、

そして経済のけん引役として期待するのは、むしろ、

我が国経済全体の厚生上、

問題なしとしないと言わざるを得まい。

 

 

 

トヨタ自動車が令和6年3月期連結決算で空前の利益を上げた。本業のもうけを示す営業利益は5兆円を超えこれまで日本企業で最高だったトヨタの4年3月期の利益を2兆円以上も上回った。

 

多くの日本企業が世界市場で存在感を失う中で、トヨタの業績は際立っている。成長投資を継続し、稼ぐ力をさらに磨き日本経済を牽引(けんいん)してほしい。

 

大幅な最高益更新は、採算性の高いハイブリッド車(HV)の販売好調が大きい。HVを核に、レクサスブランドを含むトヨタ車の世界販売台数は初めて1千万台を超えた。

 

性能向上などに伴う値上げも奏功した。値上げしても販売が落ちなかったことは、消費者に商品力が評価されていることを示している。円安によって輸出採算が改善したことも利益の押し上げ要因になった。

 

7年3月期は一転して減益を見込む。電気自動車(EV)や人工知能(AI)、職場環境改善などへの投資に約2兆円を投じるためだという。

 

経営課題の解決のために、投資を拡大することは今後の成長に欠かせない。目先の利益よりも成長投資を優先した経営判断を評価したい。

 

中でもEV事業の強化は着実に進める必要がある。トヨタは世界のEV販売を8年までに150万台とする計画だが、現状では充電もできるプラグインハイブリッド車(PHV)を含めても約25万台だ。自動車の脱炭素技術は中長期的にEVが中核になるとの見方は変わっておらず、巻き返しを急ぎたい。

 

一方、3千億円を取引価格の引き上げなどで部材の仕入れ先や販売店に振り向ける。労務費などの上昇に充ててもらう考えという。裾野が広い自動車産業の成長は日本経済の発展に欠かせない。稼いだ利益を取引先に適正に還元し、サプライチェーン(供給網)を維持、強化しようとする姿勢は妥当だ。

 

好業績の陰で、グループではダイハツ工業をはじめ傘下企業で認証試験などの不正が相次いで明らかになっている。

 

世界中でトヨタ車が受け入れられているのは商品に対する信頼性である。今後も成長を続けるにはグループガバナンス(企業統治)の改革が急務だ。再発防止策を徹底し、グループの信頼回復に努めてほしい。