円安で中小は苦境、1ドル120~130円へ政策対応を-小林日商会頭 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今日お昼前のブルーンバーグ記事。
 
いやはや、たまげた。
 
まさか、今朝ブログで紹介していた、
堂々と「覆面」為替介入をせよ等と述べていたと見られる小林日商会頭を、
お昼過ぎに気になって、ネットサーチしてみたら、
なんと元三菱商事社長で麻布高校から東大法卒という
我が国の「エリート」らしい。
 
誠に失礼ながら、日本は本当に大丈夫なのだろうか?
 
もっとも、金融と財政政策を駆使して、
中小企業のためにも円安を是正せよという意味なら
得心できるのだが…。
 
いずれにしも日本の財務大臣の「堂々と介入する」等との発言は、
米財務長官の大人の対応や外交ぶりとあまりにもかけ離れており、
子供のけんかのようなもので、お話にならないことは自明。
 
いずれにしても、ご参考まで。
 
 
占部絵美、横山恵利香

  • 円安は国家の一大事、金融・通貨政策のコンビネーションで対応を

  • 中小はゾンビではない、生産性上げても大企業に吸い取られている

日本商工会議所の小林健会頭(三菱商事相談役)は、足元の円安で中小企業は厳しい状況にさらされていると述べ、1ドル=120-130円を目指す政策対応を当局に求めた。

 

  小林会頭は9日のインタビューで、150円程度になっても円安の恩恵が薄い中小企業は非常に苦しいと指摘。日本の経済力からみて「適正な為替水準は120-130円」とした上で、政府と日本銀行が協調して「その辺に収れんするような政策を打てれば理想」と語った。

 

  円安は大手企業の外貨建て利益の円換算額を押し上げる反面、輸出比率が低い中小企業に輸入物価上昇を通じて打撃を与える。円相場が34年ぶりの安値水準となる160円台を付けた先週、政府・日銀は2度にわたり円買い介入を実施したとみられるが、日米の金利差を主因に円の先安観は根強く、円売り圧力はくすぶっている。小林会頭は、さらに踏み込んだ「円安是正」策を訴えた格好だ。

Japan Chamber of Commerce and Industry Chairman Ken Kobayashi Interview

日本商工会議所の小林健会頭(9日)

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

 

  小林会頭は、政府・日銀は「160円になって慌てて介入したと思われる」とし、より早い段階で手を打つことができたとの見方も示した。

 

  インタビューの前に行われた記者会見では、「堂々と通貨操作をやればいい。あらゆる手を使って、協調、覆面でも何でも結構だが、結果として産業が見通ししやすい経済環境を作ってもらうことが国の役割」と語っていた。

 

小林日商会頭:日本は堂々と通貨操作をやればいい-円安進行受け

円安は国家の一大事

  小林会頭はインタビューで、円安は「国家の一大事だ」と強調。「主権としての通貨の価値をどの辺において政策運営すべきかというのを常に考えねばならない」と述べ、金融政策と通貨政策のコンビネーションによる対応を求めた。

  日銀の植田和男総裁は8日の講演で、円安進行を背景に「物価見通しが上振れたり、あるいは上振れリスクが大きくなった場合には、金利をより早めに調整していくことが適当になる」との考えを示した。為替変動の影響を踏まえた政策対応について、これまでよりも踏み込んだ形だが、緩和度合いを調整しても緩和的な金融環境は当面継続する見通しだ。

  小林会頭は、企業の資金繰り問題や経済全体への影響を踏まえると、「日本が急に金利を上げるということもできない」ため、日米金利差の急速な縮小は望めないと語った。6月の定額減税や夏のボーナス、夏休みの国内旅行需要やインバウンド(外国人訪日客)によって消費が活性化し、実質賃金や実質所得がプラスに転じれば「良い方向に回転していく」とみている。

中小は「ゾンビでない」

  日商のアンケート調査によると、中小企業の3社に2社が人手不足と回答。人材獲得を考える企業が賃上げに取り組む中、連合によると、300人未満の中小企業における今春闘の平均賃上げ率は4.66%と1992年(5.10%)以来の高い水準となっている。賃上げに加え、円安や資源高による原材料価格の上昇で負担が増しており、中小企業の業況は悪化している。

 

  政府はデフレからの完全脱却へ「物価上昇を上回る賃上げ」を最大の課題と位置付け、賃金底上げや価格転嫁の取り組みを後押ししている。鍵を握る中小企業が賃上げ原資を確保するため、昨年11月には労務費の価格転嫁に関する12の行動指針を策定。同指針に沿わない行為によって公正な競争を阻害する恐れがある場合には、公正取引委員会が独占禁止法や下請法に基づき「厳正に対処」する。

公正競争を阻害する恐れあれば「厳正に対処」-労務費転嫁の連絡会議

 

  小林会頭は、19-21年の製造業の実質労働生産性の伸びが大企業の2.4%に対し中小は2.3%だったことを挙げ、「ステレオタイプに中小企業は生産性が低く、ゾンビだと言われるが、そうではない。生産性を上げているが大企業に吸い取られている」と説明。こうした状況の是正には、規模を問わず企業が

 

「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みが重要だと述べた。

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