石炭火力発電 孤立深める日本の独善 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

   主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合が、石炭火力発電の廃止年限を盛り込んだ共同声明を出した。だが、日本はアンモニアを混ぜて燃やす石炭火力などは対象外と主張し、世界の流れから孤立を深めている。政策転換を急がなければ、将来の傷口を広げかねない。

 

 G7は、温室効果ガスの削減対策がない石炭火力を、2030年代前半あるいは産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えられる時間軸で廃止すると合意した。温暖化の影響は深刻化しており、評価できる内容だ。

 

 二酸化炭素を大量に出す石炭火力の削減は、21年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で初めて合意された。その際、石炭火力に依存する国の意向で「削減対策がない」の表現が入り、その後、廃止に向けた表現を強めつつも、踏襲されてきた。

 

 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)は、発電所からの二酸化炭素の大半を回収することが「削減対策」だとしている。

 

 ところが、日本の経済産業省は、削減対策の定義に国際合意はないと主張し、今回のG7声明でも、アンモニア混焼や「高効率」をうたう石炭火力まで「削減対策済み」で廃止不要との解釈を示した。

 

 だが、これらの削減効果は排出量の「大半」と比べ著しく小さく、合意の趣旨から逸脱する。到底納得できない。独善的な政策を続ければ、国際的な発言力や産業の競争力にも影響するだろう。

 

 昨年には、石炭の廃止を目指す有志国連合に米国も加盟し、G7での不参加は日本だけになった。IEAは、1・5度目標達成には先進国が30年代までに石炭火力を廃止する必要があるとしている。エネルギー転換には年月がかかることを踏まえれば、時間の浪費は許されない。

 

 日本の発電は現在、3割が石炭で、依存姿勢がG7でも特異な存在になっている。延命させれば、当面の電力の確保やコスト抑制にはつながるだろうが、世界的に温暖化対策が求められる中で、持続可能な選択肢とはいえない。

 

 各国は、再生可能エネルギーの拡大の歩みを速めている。昨年のG7広島サミットでは、30年までに太陽光3倍、洋上風力7倍にすることで合意した。

 

 近く策定が始まる次期エネルギー基本計画で、石炭火力廃止の道筋を定め、再エネの拡大を進めなければ、先行国との差は拡大するばかりだ。取り返しがつかなくなる前に姿勢を改める必要がある。