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介入の特徴が全て表れているほか、絶好のタイミングとの指摘も
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今週はFOMCのほか、アマゾンやアップルの決算や雇用統計控える
29日の外国為替市場で円が急反発。対ドルで160円台を付けて34年ぶりの安値圏を更新した後、一時154円台まで上昇。日中の振れ幅としては2022年以来の大幅を記録した。市場では日本の通貨当局が円買い介入を実施したとの臆測が広がっている。
一方、ドルは下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を控えた米国債利回りの低下や、企業の決算発表を追い風にした株価上昇が背景にある。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1258.31 | -5.12 | -0.41% |
ドル/円 | ¥156.33 | -¥2.00 | -1.26% |
ユーロ/ドル | $1.0720 | $0.0027 | 0.25% |
米東部時間 | 16時48分 |
神田真人財務官は29日午後6時過ぎ、為替の急変動に関してのコメントは控えるとした上で、投機による激しい変動については「看過できない」として「24時間対応できる準備をしている」と記者団に語った。午後2時過ぎにも同氏は、「今はノーコメント」と発言していた。
為替の異常な変動「看過できない」、介入にコメントせず-神田財務官
円はアジア時間に対ドルで一時約1%以上下落し160円17銭をつけた後、2%以上上昇して一時154円台まで反発した。日本が休場で流動性が低く値動きの幅が大きくなりやすい環境で、政府・日本銀行の円買い介入への警戒が市場で根強く、覆面介入との見方も一部で出た。ダウ・ジョーンズ(DJ)通信は事情に詳しい関係者の情報として、日本の通貨当局が為替市場で円買い介入を行ったと報道した。
日本は何をしているのか、円急落も動かない当局にトレーダー疑問 (1)
IGオーストラリアの市場アナリスト、トニー・シカモア氏は「こうした動きには実際の日銀介入の特徴が全て表れているほか、絶好のタイミングでもある」と指摘。日本の祝日は「ドル・円の流動性が低下し、日銀介入の効果が大きくなることを意味する」と述べた。
ドル・円相場
出所:ブルームバーグ
介入の有無にかかわらず、円が下げるたびに市場は明らかに介入の可能性を巡り神経質になっている。米利下げ観測が後退し、ドルが上昇する中、円が圧迫される格好となっており、今週のFOMC会合後にパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長からタカ派的な発言が出れば、こうした動きが強まる可能性もある。
野村の為替ストラテジスト、後藤祐二朗、宮入祐輔、 茂木仁の3氏は29日のリポートで、この日の値動きは実際の為替介入に関連している可能性が非常に高いことを示唆していると指摘。先週26日の日銀のハト派的な発言、および5月FOMCで「タカ派的な据え置き」が広く予想されていることを踏まえれば、そうした日銀による行動の効果は弱まる可能性があると付け加えた。
マラヤン・バンキング・ベルハッド(メイバンク)のシニア為替ストラテジスト、フィオナ・リム氏は「落ちるナイフをつかむのは介入がない場合に危険な行為になる。特に、FOMCが利下げをより長期間待つと示唆する可能性が高い中ではなおさらだ」と指摘。「ドルが対円で160円を決定的に超えて上昇するモメンタムは確実に存在する。市場は急激な円安に対する日本の許容度を試している」と述べた。
CIBCの通貨ストラテジスト、ビパン・ライ氏は日本当局による為替介入の可能性を探る上で、投資家はFRBのバランスシートデータを注視するべきだと指摘した。
米株式相場は続伸。FOMCは金利を「より高くより長く」維持するとの観測が広がっているものの、堅調な企業決算が相場を支えた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5116.17 | 16.21 | 0.32% |
ダウ工業株30種平均 | 38386.09 | 146.43 | 0.38% |
ナスダック総合指数 | 15983.08 | 55.18 | 0.35% |
株価は4月の大半で下げたが、月末にかけて持ち直した。これまでに決算を発表した企業の80%余りが、市場予想を上回っている。ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたデータによれば、1-3月(第1四半期)の利益は前年同期比4.7%増となる見通し。決算シーズン前の予想は3.8%増だった。
今週はアマゾン・ドット・コムが売上高の増加を発表し、他の「マグニフィセント・セブン」企業に追随する可能性がある。アップルの状況は比較的厳しく、スマートフォン「iPhone」販売の落ち込みに伴い利益の減少が予想されている。一方、半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やクアルコムは売上高の伸びを確保したもようだ。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「先週は大手ハイテク銘柄への熱狂が、根強いインフレを巡る懸念よりも強かった」と指摘。「今週はアマゾンとアップルがこの勢いを維持できるかどうかが注目されるが、最新のデータで雇用市場の熱を測り、FOMCがインフレや利下げについてどういった見解を示すのかも見極めることになる」と話した。
個別銘柄ではテスラが15%急伸。同社は高度運転支援機能の投入で、世界最大の自動車市場、中国の政府当局者から原則承認を得た。アップルもアナリストによる投資判断引き上げを背景に高い。
UBSの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏は「当社では米国株への建設的な見方を維持しており、人工知能(AI)関連企業がこの先数年も力強い業績の伸びをけん引すると見込んでいる」と指摘。「ハイテク株への健全な戦略的配分を維持するのが投資家にとって重要だが、地域やセクター全般にエクスポージャーを分散することも勧める」と話した。
一方、モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は米国債利回り上昇に圧迫され、米企業の好調な決算シーズンが輝きを失っていると指摘した。
市場の利益予想を上回った企業の割合は「高い」ものの、株価の反応は限定的だと同氏は分析。年初から記録破りの上昇が続き、バリュエーションが膨らんでいることを理由に挙げた。
S&P500種、FF金利誘導目標の上限
出所:ブルームバーグ
米国債は上昇(利回りは低下)。月末やショートカバーのフローなどに支えられた可能性がある。
米財務省は4-6月(第2四半期)の連邦政府の借り入れ必要額見通しを2430億ドル(約37兆9000億円)に上方修正。大半のディーラーの予想を上回った。
米財務省、4-6月の借り入れ必要額見通しを上方修正-2430億ドル
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.73% | -4.6 | -0.96% |
米10年債利回り | 4.61% | -5.1 | -1.10% |
米2年債利回り | 4.98% | -1.7 | -0.33% |
米東部時間 | 16時48分 |
LPLファイナンシャルのジェフリー・ローチ氏は「投資家が先週に学んだ最も重要なことの一つは、今サイクルにおいて景気は金利の影響を受けにくいということだ」と指摘。「経済の一部セクターが金利の影響を受けていないように見え、FRBは『やりにくい状況に追い込まれている』」と述べた。
この調子で行けば、FOMCは通常のサイクルよりも長く金利を据え置くとローチ氏は予想。「それはスタグフレーション、または荒々しい着陸の確率を高める」と続けた。
ニューヨーク原油先物相場は反落。イスラム組織ハマスとイスラエルの間で停戦の機運が高まってきたとの見方から、原油価格の地政学的リスクプレミアムが縮小した。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、バレル当たり83ドルを割り込んで終了した。
ハマスとの交渉で、イスラエルが最初に解放を要求する人質の数を減らしたと米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じた。中東を訪問中のブリンケン米国務長官はハマス幹部に対し、イスラエルが提示した戦闘休止条件に対する決定を早急に下すよう求めた。
しかし、北海ブレントのプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は1ドル余りのバックワーデーションと、強気のシグナル。短期的な供給タイト感を示唆している。
WTI原油先物
出所:NYMEX
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前週末比1.22ドル(1.5%)安の1バレル=82.63ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は1.10ドル(1.2%)安の88.40ドルで終えた。
金スポット相場はほぼ変わらず。週内にFOMC会合と米雇用統計の発表を控え、総じて方向感の乏しい展開となった。
26日に発表された3月の米個人消費支出(PCE)コア価格指数は、堅調なペースで上昇した。金利スワップ市場が織り込む年内の米利下げ回数は、わずか1回。年初時点では0.25ポイントずつ約6回の利下げが織り込まれていた。高金利は通常、利息の付かない金投資にはマイナス材料となる。
TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「上海のトレーダーが再び買いを入れている」ため、金にはさらなる値上がり余地があると指摘した。
金スポット価格
出所:ブルームバーグ
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時20分現在、前営業日比0.1%安の1オンス=2336.72ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は10.50ドル(0.5%)高の2357.70ドルで引けた。
原題:Yen Sparks Intervention Suspicion After U-Turn From 1990 Lows(抜粋)
Yen Holds Gains After Volatility Jump; Dollar Eases: Inside G-10(抜粋)
Stock Bulls Look to Earnings With Fed in a Corner: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Gain Led by Bunds; Short-Covering, Month-End In Play(抜粋)
Oil Drops as Progress on Cease-Fire in Gaza Shrinks Risk Premium(抜粋)
Gold Fluctuates as Investors Turn Focus to Fed Meeting, US Data(抜粋)