米議会演説が問う日本の覚悟 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

日本は米国とともに国際秩序の維持に努め、その負担を分かち合う。岸田文雄首相が米議会演説でこう誓った。超党派の議員が一堂に会する場での発言は重く、事実上の対米公約になる。

 

中国の抑止には米国のアジア関与の継続が欠かせない。「平和には覚悟が必要だ」。分断のあおりで内向きになっている米国民の心情に訴えかけるためにも、日本が責任をさらに担う覚悟を示した。

 

対米協力には憲法上の制約もある。世界の安定に日本がどこまで役割を果たすのか、国民の理解を得る努力が要る。

 

日本の首相が米議会で最も格上の上下両院合同会議に登壇したのは2015年の安倍晋三氏に続いて2人目だ。戦後70年の節目だった当時は、日米が戦争を経て和解した歴史にも力点を置いた。

 

今回は国際秩序の維持をめざす同盟の将来像を描きつつ、米国の分断を意識した点が印象に残る。「一部の米国民は世界における役割に自己疑念を持っている」といったくだりだ。

 

内向き志向を強める米国に寄り添う姿勢を示し、日本企業の対米投資による雇用拡大を訴えた。これはトランプ前大統領を支持する一部の共和党議員を意識したものでもある。ウクライナ支援を呼びかける首相に立ち上がって拍手を送った他の議員とは一線を画し、彼らは座ったままだった。

 

日米同盟の必要性は首相が言うように超党派の支持がおおむね得られたといってよい。ただ「外の世界に目を向け、強く関わる同盟国」を強調するあまり、安全保障などで米国に際限なく協力するかのような印象を与えた面もある。

 

首相は週明けに国会で訪米の結果を報告する。こうした場も活用し、日本が果たす役割などを可能な限り丁寧に説明すべきだ。

 

演説では日米を軸にした多国間連携の重要性にも触れた。訪米にあわせて初めて開いたフィリピンを交えた3カ国首脳会談はその一環で意義がある。幅広い協力を着実に積み重ねてほしい。