裏金の解明 政倫審で幕引きならぬ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

  衆参で4日間にわたった政治倫理審査会を経ても、裏金づくりにまつわる疑問は一向に解消されなかった。岸田首相は「政治的なけじめ」となる関係者への処分を急ぐ構えだが、実態解明を放置したまま幕引きを急げば、かえって政治不信を深めるだけだ。

 

 衆院の政倫審に、安倍派で事務総長や会長代理を務めた下村博文元文部科学相が出席した。今も同派に強い影響力を持つ森喜朗元首相との確執が伝えられ、森氏を後ろ盾とする「5人衆」と呼ばれる他の幹部とも距離があることから、その発言が注目された。

 

 だが、「うそ偽りでなく」「率直に」話したいと、自ら強く望んだにしては、他の幹部の説明の域を出ず、新事実が示されることはなかった。

 

 派閥の会計には全く関与していない。一昨年4月に、当時会長だった安倍晋三元首相から現金での還付をやめようと言われるまで、パーティー券収入の還流自体知らなかった。政治資金収支報告書への不記載を知ったのも、裏金問題が表面化した昨年の暮れ以降――。

 

 結局、派閥の指導層がそろいもそろって、「知らぬ存ぜぬ」ということになる。到底納得のいくはずがない。

 

 いったん廃止を決めた還流が復活した経緯も、わからずじまいだ。下村氏も出席した幹部協議では結論は出ておらず、「私が知らないところで、誰がどう決めたのか、全く承知していない」という。

 

 下村氏は1月の記者会見で、この協議では、現金還付の代替案として「合法的に出す案が示された」と述べていた。「違法性」の認識をうかがわせる発言だが、ひとつの団体や個人が購入できるパーティー券の上限が150万円と政治資金規正法で定められていることを念頭に置いたもので、不記載を知っていたわけではないと説明した。

 

 裏金づくりを誰がいつ始めたのかも不明のままだ。森氏が会長の時ではないかという野党議員の指摘にも、下村氏は「確定的にいつからということはわからない」。真相に迫る糸口もつかめなかった政倫審の限界は明らかである。

 

 野党4党は一昨日、安倍派幹部ら6人の証人喚問を求める方針で一致した。関係者を処分するうえでも、事実関係の究明は欠かせまい。自民党に拒む理由はないはずだ。

 

 偽証罪に問われない政倫審でも、衆院では不記載のあった51人中6人、参院では審査を申し立てられた32人中3人だけしか応じていない。最低限の説明責任すら、いまだ果たされていないことを自民党は忘れてはならない。