【米国市況】S&P500種は反落、買われ過ぎの兆候-ドル147円近辺 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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掲題の今朝のブルーンバーグ記事。
ご参考まで。
 
Rita Nazareth

  • 影響力の大きいテクノロジー銘柄に売り、相場全体を押し下げ

  • 2月の米雇用統計は強弱まちまち-年内利下げの見方は変わらず

8日の米株式市場はS&P500種株価指数が反落。今年に入り複数回にわたって最高値を更新してきたが、上昇は行き過ぎとの観測が広がった。

株式 終値 前営業日比 変化率
S&P500種株価指数 5123.69 -33.67 -0.65%
ダウ工業株30種平均 38722.69 -68.66 -0.18%
ナスダック総合指数 16085.11 -188.27 -1.16%

 

  強弱まちまちな内容となった2月の米雇用統計を市場が消化する中、S&P500種で最大の影響力を持つテクノロジーセクターに売りが出され、全体を押し下げた。ナスダック100指数は1.5%安。エヌビディアは7営業日ぶりに下落した。テスラも下げ、週初からの下げは13%となった。ブロードコムは大幅安。半導体部門の2023年11月-24年1月(第1四半期)売上高が市場予想を下回った。

ブロードコム、AI需要が成長促進と予想-他分野の低調さ補う (2)

 

  S&P500種は昨年初めから約35%上昇しており、買われ過ぎの兆候が表れた。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のマイケル・ハートネット氏によれば、こうした「異常な時」に株式は「異常な上昇」を示している。想定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ前に株式のポジションは「引き伸ばされている」という。昨年は株式に対して弱気な見方を維持していたハートネット氏は、今年はより中立的なトーンになっている。

テクノロジー株ファンド、週間ベースで過去最大の資金流出-BofA

 

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「短期間にそれなりの量の『フロス(細かな泡)』が市場に混入したことに疑問の余地はない、というのがわれわれの認識だ」とし、「投資家はこの先約1週間ほどはある程度キャッシュの配分を増やし、ディフェンシブな姿勢をやや強めるべきだ」と語った。

 

  雇用統計では、雇用の増加が続く一方で賃金の急上昇は招いていないことが示された。統計を受けて市場ではFOMCがソフトランディングを達成し、年内の早過ぎない時期に政策緩和を開始できるとの期待が再び広がった。

米失業率2年ぶり高水準、労働市場に減速感-雇用者数は伸び堅調 (4)

 

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は、雇用統計について「FOMCにとって『問題なし』のシグナルとは必ずしもならなかったが、利下げの計画を狂わせるような内容もなかったようだ」と述べた。

Stocks Retreat After Hitting All-Time Highs

S&P500種株価指数

出所:ブルームバーグ

 

  2月の非農業部門雇用者数は前月比27万5000人増。一方で1月までの2カ月間で計16万7000人分、下方修正された。失業率は3.9%に上昇し、賃金の伸びは鈍化した。

 

  プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は雇用統計の内容は「ばらばらでまとまりがない」と話す。それでも全体的には市場にポジティブな内容だと分析した。

 

  「賃金上昇を再び引き起こすことなく雇用を増やし続けられれば、FOMCはソフトランディングを達成するだろう」と同氏は述べた。  カーソン・グループのソヌ・バーギーズ氏は雇用統計について、労働市場は強いが過熱はしていないことを裏付けると指摘。つまり、FOMCは年内の利下げに向けた道をなお順調に進んでいるということだと語る。

 

  FOMCの政策決定を予測するスワップ契約では、より低い金利水準へと織り込み直す動きが見られた。つまり、年末までの100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近い引き下げをトレーダーが見込んでいることを示唆する。

 

米スワップ市場、6月25bp利下げ完全に織り込み-12月まで100bp

 

  ボルビン・ウェルス・マネジメント・グループのジーナ・ボルビン氏は雇用統計に関して、失業率の上昇が最も重要な点だとみる。失業率が4%に達すればFOMCは懸念を強め、6月利下げの可能性が出てくると同氏は考えている。

 

  シカゴ連銀のグールズビー総裁はこの日、インフレがさらに鈍化するのに伴い、米金融当局は年内に政策金利を引き下げるとの見方を示した。

米シカゴ連銀総裁、FRBは年内に利下げへ-インフレ2%に戻す必要

 

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は今週の議会証言で、労働市場は「需要と供給のバランスが改善してきた」と指摘。またFOMCが利下げ開始に必要な確信に近づいていることも示唆した。

 

  BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は、「軟調な賃金の数字が目に止まった」とし、「今回の賃金インフレを巡る最新状況は、パウエルFRB議長が発した利下げ開始が近づいているというメッセージを反映している」と述べた。

国債

  米国債相場は強弱混在の雇用統計を受け、やや方向感に欠ける展開。

 

  米国債が大きく動いたのは主に午前中だった。雇用統計を巡っては、前月まで2カ月間の非農業部門雇用者数が下方修正された点が特に意識された。統計発表直後には、米国債は急伸する場面があった。

国債 直近値 前営業日比(BP) 変化率
米30年債利回り 4.25% 0.9 0.22%
米10年債利回り 4.07% -0.8 -0.19%
米2年債利回り 4.48% -2.6 -0.57%
    米東部時間 16時53分

外為

  ニューヨーク外国為替市場ではドルが下落。週間では昨年12月以来の大幅な下落率となった。米雇用統計に反応したほか、米金融当局者の発言を受けて年内利下げの見方が強まった。主要通貨では円が上昇率でトップ。

為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1229.36 -1.72 -0.14%
ドル/円 ¥147.10 -¥0.95 -0.64%
ユーロ/ドル $1.0939 -$0.0009 -0.08%
    米東部時間 16時53分

 

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は雇用統計発表後に一時0.5%下げ、1月15日以来の安値を付けた。週間ベースでは1%下落。

 

  ドルは対円で一時146円49銭に下落。週間では約2%安と、今年最大の下げとなった。

Dollar Suffers Worst Weekly Drop This Year

 

出所:ブルームバーグ

原油

  ニューヨーク原油先物相場は続落。北米のキーストーン・パイプラインが操業を停止したものの、短時間だったため買いは続かず、売りが優勢になった。

 

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=78ドル近辺で終え、心理的な重要な80ドルからさらに遠ざかった。同パイプラインを運営するカナダのTCエナジーは「予防的措置として」稼働を一時停止し、原油の放出はなかったと説明。パイプラインの完全性を確認した。

原油先物上昇、カナダと米国を結ぶ原油パイプラインが短時間停止

 

  今年に入り、原油は狭いレンジで取引されてきたが、今週はさらに値幅が縮小し、北海ブレントは2021年9月以来の狭いレンジにとどまった。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」による減産のほか、中東と紅海における緊張の高まりがある一方、米国を含むOPEC加盟国以外からの供給は拡大している。中国の成長に対する懸念も根強く、原油相場に逆風を吹かせている。

Oil Posts Tightest Weekly Range Since 2021 | Crude prices have swung in a band of less than $3 this week

北海ブレント原油先物、週間取引レンジ

出所:ICE、ブルームバーグ

 

  ニューヨーク商品取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は、前日比92セント(1.2%)安の1バレル=78.01ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は88セント安の82.08ドル。  

  金スポット相場は8日続伸し、この日も最高値を更新した。米雇用統計を受けて利下げ観測が強まり、金買いが続いた。

Spot Gold Rises To New Record | Bullion has risen for eight consecutive sessions

金スポット価格

出所:ブルームバーグ

 

  INGグループの商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏はリポートで「戦争が続いている地政学的な不確実性に加え、米国では選挙が控えている。安全資産としての需要が引き続き支援材料となり、金価格は今年も上昇するとみている」と指摘。「経済情勢や地政学的緊張、インフレに対するヘッジとして安全資産に逃避する不安定な時期に金は魅力を増す傾向がある」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時23分現在、前日比0.7%高の2175.45ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は20.30ドル(0.9%)上げて2185.50ドルで引けた。

 

原題:Stocks Suffer ‘Heat Check’ as Rally Hits a Wall: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Whipsaw Post-Payrolls; Curve Steepens Before Auctions

Dollar Posts Biggest Weekly Decline Since December: Inside G-10

Gold Extends Record Run With $2,200 in Sight After US Jobs Data

Oil Posts Least Volatile Week Since 2021 With Prices Rangebound