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来週の入札に関心移り米国債利回りは低下、月末調整前で波乱含みか
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原油は反落し200日移動平均割り込む、金は反発
23日の米国株式相場は方向感が定まらず、前日比ほぼ変わらず。人工知能(AI)への熱狂に支えられたハイテク株の上昇は勢いを失った。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5088.80 | 1.77 | 0.03% |
ダウ工業株30種平均 | 39131.53 | 62.42 | 0.16% |
ナスダック総合指数 | 15996.82 | -44.80 | -0.28% |
各株価指数がそろって過去最高値を更新した前日の熱気を引き継ぎ、この日のS&P500種株価指数は歴史的な水準となる5100台に乗せる場面もあった。大型ハイテク株7強で構成するいわゆる「マグニフィセント・セブン」は軟調だったが、エヌビディアは小幅に上昇し、時価総額は2兆ドル(約301兆円)付近で推移した。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「ハイテク株の上昇スピードを見て、投資家は利食いの是非に思いを巡らせるようになった」と指摘。「ポートフォリオのバランスを整えるメリットは分かるが、米国の大型ハイテク株への戦略的エクスポージャーを維持することは重要であり、こうしたハイテク株の上昇はまだ続く可能性があると当社では考えている」と述べた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は、AI関連株の上昇と金融緩和局面における経済成長への楽観論が「魔法の調味料」のレシピとなり、株式相場をさらに上昇させるとリポートで述べた。同氏は2023年末まで株式に対して弱気だったが、より中立的な見方に変わり、AIの「ベビーバブル 」が 「育ちつつある」と指摘した。
S&P500種株価指数は週間ベースでも上昇。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、景気は正しい方向に向かっていると指摘し、年内に利下げを実施するのが適切になる可能性が高いと述べた。
エヌビディア株価が22日に急騰したことで、空売り筋には約30億ドル(約4500億円)の含み損が生じた。S3パートナーズが分析したもので、空売り筋にとって「AI生成の悪夢」になったと指摘している。S3によると、エヌビディアの空売り残高は183億ドル相当で、米国市場で3番目に多い銘柄となっている。
UBSプライベート・ウェルス・マネジメントのマネジングディレクター、グレッグ・マーカス氏は「向こう数カ月に株価の後退や乱高下が起きる可能性は高く、大型ハイテクに関して押し目で買うメンタリティーは理解できる」と話す。
エヌビディアの驚異的な決算を受けた22日、S&P500種の大幅上昇には重要な要素が欠けていた。構成銘柄の強力な追随買いだ。その日の上昇銘柄はS&P500種採用銘柄のわずか73%だった。
連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げに踏み切れば、市場の取引集中が解消されるきっかけになるだろうとUBSのマーカス氏はみている。
「ハイテク株の底堅さは継続すると思われ、『マグニフィセント・セブン』への集中も続くが、一時の極端さはなくなるとも予想している」とマーカス氏。「利下げは取引銘柄の広がりを促す効果ももたらすだろう」と続けた。
企業ニュースとしては、アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏や半導体メーカーのエヌビディアなど大手テクノロジー企業が相次いで、ヒト型ロボットを開発するスタートアップの米フィギュアAIに出資する。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は持ち株1億5000万ドル(約226億円)相当を売却した。米宇宙関連スタートアップ、インテュイティブ・マシンズの無人着陸船が月面に着陸した。損傷なく月に着いた初の民間宇宙船となった。同社の株価は一時43%急伸した。
米国債
米国債利回りは低下。市場の関心が来週の需給に移るにつれ、年初来高水準から切り下がった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.37% | -8.8 | -1.97% |
米10年債利回り | 4.25% | -7.3 | -1.68% |
米2年債利回り | 4.69% | -2.2 | -0.47% |
米東部時間 | 16時54分 |
利回り低下は長期債で顕著だった。30年債利回りは一時4.37%近辺に下げ、今月13日以来の低水準となった。前日には投資資金が米国株と高利回りの社債に流れる中、4.50%近くまで上昇し、昨年12月1日以来の高水準に達していた。
長期債は来週の取引で、月末の指数リバランスの恩恵を受ける可能性がある。指数リバランスはパッシブ投資家の買いを促すと考えられる。
来週は記録的規模の2、5年債入札がいずれも26日に予定されているほか、7年債入札が27日に行われる。通常は火曜から木曜の3日間に分けて実施されるが、今回は木曜29日に決済する必要があるため、いつもより詰め込まれたスケジュールになっている。
長期債利回りは低下ペースが急速になったため、短期債利回りに接近している。利下げ期待の後退から、短期債利回りには今週、上昇圧力がかかった。
外為
ニューヨーク外国為替市場のドル指数はほぼ変わらず。近いうちに政策金利が引き下げられるとの観測は後退しているものの、週間では今年初のマイナスとなった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1242.36 | 0.31 | 0.02% |
ドル/円 | ¥150.54 | ¥0.01 | 0.01% |
ユーロ/ドル | $1.0821 | -$0.0002 | -0.02% |
米東部時間 | 16時54分 |
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が前日に、1月の消費者物価指数(CPI)の大幅上昇は利下げ開始時期の判断に慎重な姿勢で臨む理由となると指摘し、ドルを支える材料となった。 ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はこの日、景気は正しい方向に向かっていると指摘し、年内に利下げを実施するのが適切になる可能性が高いと述べた。
ジャン・ハッチウス氏らゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは「当社はこれまで、5月のFOMCが利下げ開始のタイミングだと予想していたが、今週発せられたFRB当局者のコメントや1月FOMCの議事要旨からは、そんなに早くなさそうだと思われる」と22日のリポートで指摘。
「従って5月利下げ開始の予想を撤回し、6月と7月、9月、12月の今年4回(従来予想5回)の利下げ、および来年4回(従来予想3回)の追加利下げを現在では予想している」と説明した。
日本が天皇誕生日の祝日のため、アジア時間の現物米国債取引はなかった。
原油
原油相場は反落。新たな材料が乏しい中、週末を控えて持ち高を手じまう動きが出たほか、主要なテクニカル水準を割り込んだことで売りが加速した。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物はバレル当たり77ドルを割り込み、200日移動平均を下回った。限月間スプレッドは市場がより堅調なことを示唆しているほか、米国の原油在庫も予想ほど積み上がらなかったが、世界の原油市場は今年、依然として供給過剰だとの見方がアナリス
トの間では支配的となっている。
米国がこの日発表した大規模なロシア制裁措置にはエネルギー関連の目立った規制は含まれていないもようだ。またイスラエルがパリで行われる戦闘休止協議に交渉団を送ると伝わった。
CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は「エネルギー関連の制裁強化はなく、週末の停戦協議に関する報道で、持ち高を手じまう動きが出た」と指摘した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比2.12ドル(2.7%)安の1バレル=76.49ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント4月限は2.5%下げて81.62ドル。
金
金相場は反発。スポット価格は週間で1%余り上昇した。今週は米金融当局者の発言が相次いだが、利下げ時期に関する明確な手掛かりは得られなかった。
ドルが今年初めて週間ベースで下落し、多くの買い手にとって割安となったことも追い風となった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時41分現在、前日比13.82ドル(0.7%)高の1オンス=2038.21ドル。一方、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は18.70ドル(0.9%)上昇の2049.40ドルで終えた。
原題:Stock Rally Wanes After S&P 500 Touches 5,100 Mark: Markets Wrap(抜粋)
Treasury Yields Retreat From 2024 Highs With Month-End in View(抜粋)
Dollar Pauses as Markets Absorb Fed Speakers’ Talk: Inside G-10(抜粋)
Oil Dips as Lack of New Catalysts Halts Rally at Technical Level(抜粋)
Gold Heads for Weekly Gain as Timing of Fed Pivot Remains Cloudy(抜粋)