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ウォラーFRB理事は1月の講演で年次改定を注視すると発言
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米労働省労働統計局は9日に季節調整要因の年次改定を発表
米政府が発表する月間インフレ統計に関し、あなたが季節調整要因の年次改定について話をしたとすれば、相手が経済の話題に強い関心を持つ人物であっても、通常は退屈な表情をされるかもしれない。だが今年の場合、状況は異なるだろう。
ウォール街やワシントンのエコノミストは1年前の経験を踏まえ、9日朝に発表される改定に注目している。消費者物価指数(CPI)への改定は小幅であるのが典型的で、そのためあまり関心を集めてこなかったが、昨年の場合は大幅な改定が加えられ、インフレ抑制の進展度に疑問を投げかけるほどだったためだ。
米金融当局者は現在、利下げにコミットする前に、物価上昇圧力を抑制してきたことを示すさらなる証拠を求めており、今年の場合も劇的な改定があるのではないかと米金融当局者や投資家は緊張感を持って見守っている。
実際、連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が1月16日の講演で、今年の改定を注視すると述べたことで、複数の投資銀行はこの題材について調査リポートをまとめることにもなった。
ウォラー理事は講演で「1年前のことを思い出せば、インフレ率が急速に鈍化しつつあるように見えていたのに、季節要因の年次改定の結果、進展が消し去られた経緯がある」と指摘。「今年の改定でわれわれの前進が確認されるのを望むが、良き政策は希望ではなくデータに基づくものだ」と語った。
米労働省労働統計局(BLS)は月間CPI統計に定期的な調整を加え、数字に影響を及ぼす季節要因を取り除いている。しかし、BLSがウェブサイトで説明しているように、季節的パターンを数値化するプロセス自体も、気候や生産サイクルの変化、モデルチェンジなどを反映するため時々調整が必要とされ、季節調整要因への年次改定が行われているというわけだ。
昨年の調整の影響は大きかった。2022年10-12月(第4四半期)のCPIのうち、変動の激しい食料とエネルギーを除くコア指数は当初、年率換算ベースで3.1%の上昇にとどまり、21年10-12月期の8%上昇から大幅鈍化したとされていた。
こうした前向きなシグナルはその後、ぬか喜びに終わった。年次改定の結果、3.1%ではなく4.3%の上昇と有意な上方修正となったからだ。インフレを巡るトーンは突如変化し、金利見通しもシフトした。
前回は例外的か?
エコノミストの間には、9日の発表を大げさに扱わないようにする動きがあるものの、異例の関心の的となっているのは確かだ。
マイケル・ゲーペン氏をはじめとするバンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミストは1月25日の顧客向けリポートで、「当社の10年サンプルでは、月間改定の絶対平均は2.6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に過ぎなかった」のに対し、22年10-12月期の場合は平均9bpの改定があったと指摘した。
その上で、「昨年の事態が繰り返されるとは見込んでいない」とし、今回は改定によって金融政策見通しに影響があるとは考えていないとコメントした。
このほか、エレン・ゼントナー氏率いるモルガン・スタンレーのエコノミストも1月30日のリポートで、「昨年のCPI改定はアウトライアー(外れ値)」とし、「純粋に統計的な観点から見ると、今回の改定で再びそれを目にする確率は低い」と説明した。
ただ、同社エコノミストチームは、新型コロナウイルス禍が季節要因に大きなゆがみを引き起こし、それが今後何年もCPIに影響する可能性もあると分析。「前回の改定は一連の大幅なぶれの出発点であるかもしれないが、たった一つの極端な例で判断するのは難しい」と論じた。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のアナ・ウォン氏らエコノミストは金融政策への影響に関し、「パウエルFRB議長は不確実性の高い状況にあっては政策策定をゆっくり進めたい意向を示している。9日発表のCPI年次改定などインフレ統計が3月利下げを支持するような内容になったとしても、利下げを遅らせる重要な理由の一つだ」としている。
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原題:Risk of Big US CPI Revision Puts Policymakers, Investors on Edge(抜粋)
(エコノミストのリポートなどを追加して更新します)