「中国と距離」選択した台湾の民意尊重を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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当選を確実にし、歓声に応える民進党の頼清徳・副総統(13日、台北市)=遠藤啓生撮影

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

台湾総統選は与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が当選した。民主化が進む台湾は、共産党独裁体制の中国と距離を置くことを引き続き選択した。その意味は中台の「現状維持」でもある。中国は台湾有権者の民意を尊重し、軍事的な威嚇を控える必要がある。

 

総統選の構図は今回激変した。退任する蔡英文総統の後継である頼氏、最大野党・国民党の侯友宜氏、第3勢力である民衆党の柯文哲氏の3候補ともに台湾で生まれた。1945年以降、中国大陸から移り住んだ人々ではない。

 

故郷・台湾への思い入れは強く、現状を維持する基本姿勢は近い。ただ中台緊張下で実際、中国にどう向き合うのかという理念、姿勢に違いがあった。

台湾の民主主義には四半世紀超の歴史がある。言論の自由に支えられた公正な政治も存在する。中国はこの現実と台湾社会の変化に目を背けるべきではない。

 

中国の習近平国家主席は、政治目標として台湾統一を掲げる。2022年共産党大会では「武力行使の権利放棄は決して約束しない。あらゆる必要な措置を取る選択肢を留保する」と宣言した。

 

次期共産党大会の開催と人民解放軍創設100年が重なる27年までに米国の介入を阻む軍の体制を整えようとしているとの見方は多い。新総統の任期である24年5月から28年5月はカギを握る時期だ。台湾有事のリスクがある以上、新政権はあらゆる事態を想定した危機対応能力が求められる。

 

一方、半導体産業で世界を引っ張る台湾は、米中を含む国際的なサプライチェーンの中核も担う。中国から挑発があっても乗らない冷静さも重要だ。

 

頼氏には過去の言動から「台湾独立派」のイメージも残る。新総統就任演説で示す方針に注目したい。与党・民進党は、国会に当たる立法院の選挙では過半数を獲得できなかった。議会運営での野党側との協力も今後の焦点になる。

 

台湾問題は日本の安全保障にも影響する。22年、米下院議長だったペロシ氏の訪台の際、中国は台湾の周囲を囲むように軍事演習地域を設け、弾道ミサイルを打ち込んだ。中国のミサイルの一部は日本の排他的経済水域(EEZ)にも歴史上、初めて着弾している。

 

日本政府はインド太平洋地域の安定へあらゆる努力をすべきだ。重要なのは、同盟国の米国との緊密な連携と協力である。