関連死を防ぐ 安心な「住」を複線で | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

   能登半島地震の被災地では、厳しい寒さが続くなか、避難生活の環境悪化が深刻になりつつある。低体温症や感染症の広がりを食い止め、災害関連死を防ぐために、医療・福祉をはじめ現地での支援を尽くしたい。

 

 一方で、被災者には水道や電気、通信など生活インフラが整う施設や地域へ移ってもらい、安心して寝泊まりできるようにすることが喫緊の課題だ。移動に伴う負担に目配りしつつ、多様な取り組みを加速させねばならない。

 

 石川県は、県内のホテルなど宿泊施設を「2次避難所」と位置づけ、学校や公民館といった避難所に身を寄せる人、自宅にとどまっている人らに移動を促している。高齢者ら支援を急ぐ必要がある人には、金沢市内の大型体育館にテントを並べた「1・5次避難所」を設け、一時的に滞在できるようにした。

 

 政府も、被災地を抱える北陸各県などに多数の宿泊施設を確保した。自治体と連携し、被災者の希望に沿った移動を迅速に進めてほしい。

 

 石川県はきのう、甚大な被害に見舞われた輪島市と珠洲(すず)市で、仮設住宅の建設も始めた。住み慣れた土地への愛着から地元を離れがたいという人は少なくない。余震への備えなど防災面に配慮しつつ、要望に応えたい。

 

 ただ、完成までに時間がかかるほか、水道などの復旧も見通せないのが実情だ。金沢市内など都市部にある公営・民間の集合住宅を「みなし仮設」として活用することにも力を入れる必要がある。

 

 被災地では、倒壊を免れた住宅の危険度を緊急に判定する作業が進んでおり、「使用可」とされた住まいもある。とはいえ、隠れた損傷や降雨・降雪の影響、近隣での土砂災害の恐れなど懸念は多い。被災者も自治体も、安全を最優先に判断してほしい。

 

 被災者が生活拠点を移す際に欠かせないのは、孤立を防ぐことだ。家族ごと、親類同士、お隣さんと。日々築いてきたつながりを守ることが被災者の心身を安定させ、コミュニティーの維持にもつながる。過去の災害から学んできた教訓だ。調整にあたる石川県と受け入れる側の自治体は気を配ってもらいたい。

 

 災害救助法など戦後の災害法制は、避難所の設置から仮設住宅の建設、復興公営住宅の整備へという流れを基本としてきた。ただ、この「単線」指向が生活再建の妨げとなった面も否めない。被災地域の実情に応じて「複線」で対策を実行できるか。阪神大震災以降、重ねてきた改善と工夫を生かす時だ。