「政治とカネ」と首相 抜本改革の覚悟が見えぬ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の毎日社説。

極めて説得的。

ご参考まで。

 

 

  自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が岸田文雄政権を揺さぶる中、2024年が始まった。政治に対する国民の不信払拭(ふっしょく)が急務だが、首相の年頭記者会見からは、「政治とカネ」の問題に正面から取り組む覚悟が見えなかった。

 

 最大派閥・安倍派が裏金を作っていた疑惑で、「5人衆」と呼ばれる幹部らが東京地検特捜部から任意で事情を聴かれた。二階派も収入を過少報告した疑いがある。

年頭の記者会見をする岸田文雄首相=首相官邸で2024年1月4日午後5時4分、竹内幹撮影拡大
年頭の記者会見をする岸田文雄首相=首相官邸で2024年1月4日午後5時4分、竹内幹撮影

 

 首相は「心からおわび申し上げる」と陳謝し、「党の体質刷新の取り組みを進める」と強調した。自らがトップとなる政治刷新本部を来週発足させ、外部有識者にも参加してもらう考えを示した。

 

 だが、疑惑の実態把握が先決ではないか。総裁として求められるのは、各派閥や関係する議員に調査と説明を指示することだ。

 

 首相が想定する改革案は踏み込み不足だ。党としてパーティー収支を監査し、現金でなく、記録が残る銀行振り込みとする考えを示した。だが、内規だけでは実効性に疑問が残る。

 

 野党各党が求める政治資金規正法の改正には「議論の中で、あり得る」と述べるにとどめ、人ごとのような言いぶりだった。

 

 既に共産党は企業・団体献金を全面禁止する法案を提出している。与党の公明党も、政党から政治家個人に支出される「政策活動費」の使途公開を義務付けるべきだと訴える。現在は使途を明らかにする必要がない。具体的な改正議論が出てこないのは自民だけだ。

 

 派閥の現状は政府や党の役職を配分する組織となっており、裏金作りの実態も浮き彫りになった。首相は派閥のあり方を巡り議論する考えを示したが、解消を含めた抜本的な見直しが不可欠だ。

 

 課題は山積している。まず能登半島地震への対応である。経済政策では賃上げと所得税などの定額減税で「国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況を作る」と意気込んだ。緊張が高まる国際情勢下、首脳間外交にも意欲を示した。

 

 政策の遂行には国民の信頼が欠かせない。首相は「政治への信頼回復こそ最優先課題」と語った。そうであるならば、裏金疑惑で露呈した派閥政治のうみを出し切らなければならない。