掲題の今朝の毎日社説。
極めて説得的。
ご参考まで。
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が岸田文雄政権を揺さぶる中、2024年が始まった。政治に対する国民の不信払拭(ふっしょく)が急務だが、首相の年頭記者会見からは、「政治とカネ」の問題に正面から取り組む覚悟が見えなかった。
最大派閥・安倍派が裏金を作っていた疑惑で、「5人衆」と呼ばれる幹部らが東京地検特捜部から任意で事情を聴かれた。二階派も収入を過少報告した疑いがある。
首相は「心からおわび申し上げる」と陳謝し、「党の体質刷新の取り組みを進める」と強調した。自らがトップとなる政治刷新本部を来週発足させ、外部有識者にも参加してもらう考えを示した。
だが、疑惑の実態把握が先決ではないか。総裁として求められるのは、各派閥や関係する議員に調査と説明を指示することだ。
首相が想定する改革案は踏み込み不足だ。党としてパーティー収支を監査し、現金でなく、記録が残る銀行振り込みとする考えを示した。だが、内規だけでは実効性に疑問が残る。
野党各党が求める政治資金規正法の改正には「議論の中で、あり得る」と述べるにとどめ、人ごとのような言いぶりだった。
既に共産党は企業・団体献金を全面禁止する法案を提出している。与党の公明党も、政党から政治家個人に支出される「政策活動費」の使途公開を義務付けるべきだと訴える。現在は使途を明らかにする必要がない。具体的な改正議論が出てこないのは自民だけだ。
派閥の現状は政府や党の役職を配分する組織となっており、裏金作りの実態も浮き彫りになった。首相は派閥のあり方を巡り議論する考えを示したが、解消を含めた抜本的な見直しが不可欠だ。
課題は山積している。まず能登半島地震への対応である。経済政策では賃上げと所得税などの定額減税で「国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況を作る」と意気込んだ。緊張が高まる国際情勢下、首脳間外交にも意欲を示した。
政策の遂行には国民の信頼が欠かせない。首相は「政治への信頼回復こそ最優先課題」と語った。そうであるならば、裏金疑惑で露呈した派閥政治のうみを出し切らなければならない。