掲題の今朝の読売社説。
問題なしとしない。
そもそも、賃金は、労使間で労働生産性等の
労働需給によって自ずと決まるものであり、
政府の政策が関与する余地は乏しい。
また、物価高のなか、賃上げに政府が介入するとなれば、
賃金と物価の好循環どころか
むしろ悪循環に陥りやすいのが
洋の東西や我が国での過去の事例が示すところだろう。
米国では既に実質賃金は上昇に転じてきているが、
それはあくまでFRBが積極的に大幅利上げを断行して、
インフレ率を低下させてきているからに他ならない。
我が国は物価高騰のなかで、財政政策も金融政策も共に
総需要刺激政策を継続してきている。
これではいつまで経ってもインフレが
収まらないのは道理ではないか。
したがって、賃上げ促進税制などは、
賃金と物価の好循環どころか、
それらの間の悪循環を増幅させかねない悪政といわざるとえず、
経済政策はミクロ的に企業に個別的に過剰介入するのではなく、
全体としてマクロの財政金融政策で対応すべきものである。
マスコミはいつまでも「神話」もどきの
賃金と物価の好循環等と欧米では通用しない
ストーリーの政府「捏造」に加担すべきではない。
例えば、繰り返すが、英国では、賃金と物価は
労使間のしっぺ返し戦略(tit-for-tat)に陥り、
それらの間の悪循環を指摘する向きはあっても、
好循環を指摘するものは少ない。
政府・与党は、賃上げを行った企業への減税措置を手厚くするという。賃上げの裾野を広げるためには、中小企業の賃上げ支援に効果的な制度とすることが不可欠だ。政府は今月2日に閣議決定した経済対策で、民間企業の賃上げ促進に向けた税制の拡充を盛り込んだ。自民党と公明党の税制調査会が具体策を検討し、年末までに制度の詳細を決める。
今春闘は30年ぶりの高い賃上げとなった。日本経済は今、物価高を克服して賃上げと成長の好循環を実現できるかどうかの分岐点にある。政府が、政策で賃上げを後押しすることが重要となる。
賃上げ促進税制は、前年度より給与などを増やした企業の法人税を減額するものだ。2013年度に創設され、当初は3年間の時限措置だったが、その後、期限の延長と拡充を繰り返してきた。
中小企業向けと大企業向けがあり、中小企業の場合、現在は、従業員の給与総額を前年度より2・5%以上増やすと、給与増加額の30%分にあたる金額を、法人税から差し引くことができる。
企業の賃上げ意欲を引き出そうと、歴代の内閣が力を注いできた制度だが、これまで十分に活用されているとは言い難い。
国内に約350万社の中小企業がある中で、21年度に賃上げ促進税制を利用した中小企業は約13万件にすぎず、減税された法人税の総額は約1450億円だった。
中小企業の6割が赤字で、もともと法人税を納めていないため、減税の恩恵が得られないことが大きな理由だと指摘されている。
解決策として、赤字の企業が賃上げを行い、翌年度以降に黒字に転換した場合、赤字で使えなかった減税相当分を繰り越せるようにすることが検討されている。
人手不足の中、中小企業は賃上げをしないと人材の確保が難しくなっている。赤字でも将来の成長に向けて賃上げに踏み切れるよう、企業のニーズを把握した上で、使いやすい制度とするべきだ。
また、政府は、高い賃上げを行うことを条件に、企業がIT化や省力化のための補助金などを受けやすくする仕組みも設けている。赤字企業でも対象となる補助金制度の周知を進めてもらいたい。
賃上げを広く定着させるには、中小企業の稼ぐ力を高めていく必要がある。新事業の創出や、海外への販路拡大などを手助けする施策が大切だ。多くの中小企業の生産性を上げ、経営基盤を強化していくことが望まれる。