掲題の今朝の日経社説。
かなり説得的。
米デトロイトが財政破綻から10年を迎えた。経済の中心を担った自動車産業が低迷し治安の悪化が高い失業率を招く悪循環に陥ったが、破綻後は急ピッチで再生を進めてきた。その手法や教訓は参考にすべき点が多い。
デトロイトは2013年7月に180億ドル(現在の為替レートで約2兆6000億円)もの負債を抱えて米連邦破産法第9条の適用を申請した。米自治体としては過去最大の破綻だった。
その惨状は市街地を車で走れば明らかだった。8万軒近い空き家が並び、中心地には落書きだらけのシャッターと割れたガラスのビルが軒を連ねた。夜になっても街灯の4割は消えたままだった。
市内に本社を置く自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)が破綻したのが09年のことだ。当時は失業率が30%近くに達した。
近年は様変わりした感がある。市の支援で空き家は次々と建て替えられ、4月の失業率は1990年に調査を始めて以来最低となる4.2%にまで下がった。
「モーター・シティー」と呼ばれるデトロイトの再生を支えたのが自動車産業の復活であることは間違いない。一方でGMなど大企業だけでなくスタートアップが次々と生まれている点に注目すべきだ。自動運転など自動車関連も多いが、医療やフィンテック、教育などに裾野が広がっている。
治安の改善と同時並行で真新しいオフィスを整備するなど新興企業の誘致に力を入れたことが奏功した。JPモルガン・チェースや地元の住宅ローン会社など、民間金融機関の投資マネーもスタートアップの育成に一役買っている。
デトロイトの没落は1960年代に起きた人種間対立に端を発する。日本の自治体には当てはまりにくいが、政府からの支援だけに頼らず「民」の活力を呼び起こす戦略は評価すべきだ。
デトロイト市の人口は60万人強と決して大都市ではない。日本の自治体も国の資金をあてにする前に学ぶことがあるのではないか。