元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アセモグルら)



2025年4月7日(月)緊急レポート:「トランプ相互関税の衝撃は日本復活への絶好のチャンス!」

ご承知のように、トランプ米大統領は4月2日、世界の貿易相手国に対し相互関税を課すと既に発表しました。例えば、同大統領は米国への全輸出国に最低10%の関税を賦課し、対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象に一段と高い関税率を適用すると明言しました。

相互関税率は対中国が34%、欧州連合(EU)は20%、日本は24%、ベトナムは46%等です。このほか韓国は25%、インドは26%、カンボジアは49%、台湾は32%となっています。このうち中国の場合、合成麻薬フェンタニルの米国への流入に関して先に賦課された20%の関税と合わせると、税率は計54%に達します。

トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンでのイベントで、「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが今後はわれわれが繁栄する番だ」と述べました。

最低10%の関税率は米東部時間5日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、より高い関税率は9日午前0時1分(同日午後1時1分)に適用される予定です。

すでに中国は、アメリカからの一部の輸入品に追加の関税を課していて、世界1位と2位の経済大国による関税を巡る応酬が一段と激しくなっています。

 世界各地の株式市場では、交渉によって関税が引き下げられたり撤回されたりする可能性は低いという見方から株価が急落するなど、貿易摩擦の激化が世界経済に及ぼす深刻な影響に懸念が強まっています。

特に、先週末4日の米国市場は大幅続落しました。ダウ平均は前日比2231.07ドル安の38314.86ドル、ナスダックは同962.82ポイント安の15587.79で取引を終了しました。

4日早朝に発表された米3月雇用統計は良好でしたが、中国が既にトランプ政権の相互関税に対抗する報復措置を発表していたため、貿易摩擦の深刻化懸念が優勢となった形です。

なお、トランプ米大統領は4日、「パウエルFRB議長が金利を引き下げるには今が絶好のタイミングだ。議長はいつも『遅れて』いるが、今ならそのイメージを覆し、素早く行動できる」と投稿しましたが、パウエルFRB議長はその後の講演会において関税によるインフレの可能性を警告する一方で、利下げを急がない姿勢を示したことも影響し、大幅続落となりました。いずれにしても、大証ナイト・セッションの日経225先物は、日中終値対比1540円安の32220円で取引を終えました。

こうして、週明け4月7日の日経平均株価は既に前場で、一時2900円超安となり、一年半ぶりの3万千円割れとなった等と日経ウェブ記事が伝えています。


「米相互関税 自由貿易体制を壊す暴挙だ」は正当か?

ところで、「米相互関税 自由貿易体制を壊す暴挙だ」と題する4月4日朝刊で、トランプ米大統領を糾弾して憚らなかったのは読売社説でしたが、問題なしとしません。

また、昨夜の「NHKスペシャル「トランプ流“ディール” 日本企業・激震の舞台裏」も、まことに遺憾ながら、我が国の「自由貿易体制」を一方的に擁護するばかりで、米相互関税を単純に糾弾するような恣意的で国粋主義的な報道姿勢が支配的であったように見受けられました。

いずれにしても、関税が自由貿易体制の全てではありません。非関税障壁も問題の一つです。

異端の米大統領ではありますが、トランプは欧州の付加価値税や日本の消費税も大きな非関税障壁となっていることを問題視していること等は、必ずしも全く非合理的であるとは言えません。

加えて、そもそも、通貨と貿易とはコインの裏表です。貿易取引は各国通貨間の為替レートを通じて最終決済されるからです。

長短の実質金利を大幅なマイナス圏に沈み込ませている我が国が、それらを実質プラス圏で維持してきている米国に対して、先の大戦を招いた主要因の一つとされる近隣窮乏化政策の代表であるような、日本円の通貨切り下げ競争、すなわちこれまでの通貨戦争を棚に上げておいて、トランプがいま仕掛けてきている貿易戦争だけをいたずらに糾弾する姿勢に矛盾はないのでしょうか。

そもそもトランプ1.0が2017年に既に誕生した背景には、日欧による量的金融緩和(QE)等の増幅が生んだ、大幅な円安・ユーロ安の裏側としてのドル高がありました(拙著「トランプノミクスで大炎上 世界金融・貿易戦争の結末」(徳間書店、2017年)等をご参照)。

当時のラスト・ベルト(朽ちた中西部)における米国製造業の企業家や労働者を中心として、倒産や失業等の不安や不満が生まれ、米国の保護主義はトランプ1.0で既に生まれていたのは明らかでした。

2025年1月に再登場したトランプ2.0の背景には、主として、米国一般国民にとっての「生活費高騰の危機」意識があり、トランプ1.0とは多少背景が異なるような趣はあります。

また、関税で一段と物価高をもたらし同時に景気後退をもたらしかねないスタグフレーション的なトランプ相互関税政策には、他国のみならず米国経済にとっても様々な矛盾があることも否めません。加えて、それは日本経済の輸出を直撃することは間違いなく、我が国の総需要を押し下げることも必至でしょう。

しかしながら、だからと言って、「不当なトランプ関税を直ちに撤回せよ」等と、まるで戦中の大本営報道のように、我が国の主要メデイアがほぼ一斉に声高に叫んでみたところで、いったい誰が喜ぶというのでしょうか?

案の定、今日のJNN報道によれば、国民の過半数が、トランプ相互関税に対して、我が国は直ちに同じような相互関税で対抗すべきだという世論が沸き起こっているようです。

しかし、よく考えてみれば、トランプ自動車関税の25%や、4.2の相互関税での24%であっても、ドル・円レートは購買力平価と見られる1ドル108円から直近の145円前後の為替水準を前提としても、依然として約34%もの円安・ドル高水準にあります。

したがって、「貿易戦争」というよりも、「通貨戦争」という近隣窮乏化政策を2013年4月のアベノミクス以来仕掛け始めて、今でも近隣窮乏化政策を止めないのは、米国というよりも他ならない日本ではないのかと、異端のトランプ米大統領からの反論に、読売社説やNHKはどのように抗弁するつもりなのでしょうか?


トランプ相互関税は日本大復活への絶好の好機

いずれにしても、トランプ相互関税とは独立して、日本経済は少子化、長期消費停滞、通貨下落、インフレ高進の4重苦の中で身動きが取れない状況にあることに変りありません。

自らが制御困難なトランプ関税よりも、むしろ我が国が自ら制御が十分に可能なはずの、自国のマクロ経済政策を駆使することで、日本自らの物価安定と持続的な経済成長を図ることに集中することこそが肝心ではないでしょうか。

つまり、消費税撤廃に向けた5%への消費税率恒久的引き下げと同時に、日銀政策金利を実質プラス圏に向けて2年間程度で粛々と利上げする財政拡張と金融引締めのポリシーミックスを速やかに確立して、断行していくことがなによりも重要でしょう。

むしろ、トランプ相互関税をスケープゴートや煙幕等に仕立て上げることで、政府・日銀は物価と経済成長の制御不能に陥っている自らの政策失敗を糊塗しようとしているのかもしれません。

読売社説やNHKなどの国内主要メデイアはそのような大本営報道にまんまと乗せられるか、あるいは意図的に助長することに加担することで、一般国民を欺いているのだとしたら罪は重大です。

いずれにしても、日本メデイアによるこれらの動きは、通貨戦争⇒貿易戦争⇒覇権戦争という戦中に酷似する悪循環を一段と増幅することで、我が国はいよいよ第3次世界大戦への坂道を率先して転げ落ちていくのではとの懸念さえ払拭できない今の日本があると危惧せざるをえません。

つまり、日本自らが政策転換を図ることで、トランプ2.0でも日米間のWINWINゲームを展開することが十分に可能なことに賢明な市民は気づくべきでしょう。


トランプ相互関税ショックで改めて思う民主主義と市場経済

翻って、2025年正月元旦の社説において、朝日新聞社説は「不確実性さ増す時代 政治を凝視し 強い社会築く」と題して、大晦日の東京社説同様に、昨年ノーベル経済学賞を受賞した米経済学者ダロン・アセモグル氏の「繁栄への「狭い回廊」」の一節を取り上げました。

その中で、「自由で繁栄した国の実現には、権力機構である「国家」と、市民が成す「社会」が拮抗(きっこう)して成長することが必要だとアセモグル氏は説く。」と鋭く指摘しています。

また、同社説は「放置すれば「国家」は市民を圧しにかかる。「社会」の側が国家を監視し、足かせをはめる必要がある。しかも両者が均衡する「回廊」は、とても狭いという。」と続けています。

なかんずく、「アセモグル氏は5年前、日本の課題として「人々が社会の足元から変化を促そうとする動きが弱い」「約25年間も停滞を経験したのに、反発する運動が起こらなかったのは驚くべきことだ」と朝日新聞社の取材に語っていたことが特に注目されます。

アセモグル氏が5年前に既にいみじくも直感していたように、誠に遺憾ながら、「ゆでガエル日本」の中の我々一般市民は、世襲的、特権的、利権的な政治経済体制によって、収奪・搾取され続けて来ていることは間違いないでしょう。

例えば、10%消費税率と約4%インフレ税のダブルパンチ課税がその典型例に他なりません。権威主義的な日本の政権そのものが我が国の経済低成長の足枷となってきていると見ざるを得ないのです。

いずれにしても、物価安定と持続的経済成長の実現を達成しない政府・中央銀行は、社会の経済成長、効率、安定を損ない、民主主義と資本主義をいずれ失敗させかねません。

要するに、賢明な市民は物価安定と持続的経済成長の達成こそが、民主主義と資本主義を矛盾なく発展・繁栄させ得る、極めて重要な必要条件であることを肝に銘じなければならないでしょう。

このままでは、市場の人質にとられた日銀とアベノミクス4番煎じ石破政権が「ゆでガエル日本」の息の根を止めかねません。

はたして、我々は消費税率5%への恒久的引き下げという拡張的な財政政策に加えて、同時に日銀(名目)政策金利をインフレ率超えの実質プラス圏に向けて、2年間程度で段階的に引き上げる緊縮的な金融政策のポリシーミックスから構成される「日本復活のシナリオ」を首尾よく描き、そして実行に移すことが出来るのでしょうか。


最後に、少子化、長期消費停滞、通貨安、物価高の4重苦に呻吟する日本経済にとっては、この機会に発想を転換して、消費税撤廃に向けた消費税率の5%への恒久的引き下げという財政拡張政策に加えて、日銀の政策金利を実質プラスに向けて2年間程度で、段階的に粛々と引き上げる金融引締め政策を同時に実施するポリシーミックスへの転換を図る絶好のチャンスとみるべきなのです。

つまり、日本自らが政策転換を図ることで、トランプ2.0でも日米間のWINWINゲームを展開することが十分に可能なことに賢明な市民は気づくべきでしょう。

戦後80年で昭和100年目に当たる2025年は、我が国の生死を決める大分水嶺にいま私たちは立っているのです。

この日本大復活へのチャンスを生かすか否かは、ひとえに我々の賢明な選択にかかっています。

中丸友一郎
元世界銀行エコノミスト




補論:通貨戦争⇒貿易戦争⇒覇権戦争は羅生門の如し

羅生門とは、ご承知のように、ある殺人事件の目撃者や関係者が、それぞれ食い違った証言をする姿を、それぞれの視点から描き、人間のエゴイズムを鋭く追及した黒沢映画の名作のひとつです。米国でも同映画やそのフレーズはかなり有名です。


大恐慌、「リーマン・ショック」そしてトランプ・ショックで揺れ動く現代には、一つの共通項があるように思われます。


それは国際政策協調の失敗です。

通貨戦争、貿易戦争そして地政学的リスクの高まりの中で、自分は悪くない、相手が悪いのだとばかりに罵り合い、世界中が分断されています。

特に黒田日銀がハロイーン・バズーカ砲を放った2014年10月末頃から、一段と顕著になってきた誤った近隣窮乏化政策の下で、世界経済、世界貿易そして国際金融市場は、ますます「狂った」方向に向かってきていました。

一方で、日欧等の主要債権国がマイナス政策金利や量的・質的緩和等の非伝統的な金融緩和政策に走り、事実上の通貨安競争に拍車をかけました。

他方、覇権国であるが世界最大の債務国でもある米国は通貨高に見舞われ、雇用増大のために大規模な財政刺激を行なってきました。短期では景気が過熱し、中長期では財政と対外収支の双子の赤字を一段と米国は膨らませてきています。

異端のトランプは通貨戦争と貿易戦争に対するフラストレーションの高まりを、世界全体との対外収支をほぼ均衡させている中国に対して、二か国間対米黒字の大きさだけに問題を矮小化することで、怒りの矛先をぶつけてきています。米中貿易戦争はますます激しくなることは当時から避けられなかったのです。
世界経済の主要なプレーヤーが自国の利益を最優先にして勝手気ままに振る舞う。これでは世界経済が分断され、世界貿易が戦争の危機に瀕しているのも当然ではないでしょうか。

真の改革を阻んでいる権威や既得権益に対する怒りや反乱という側面が、2017年11月のトランプ1.0には間違いなく存在しました。確かにトランプは異端ですが、米中西部の朽ちた地域の民意を反映した民主主義の下での米大統領誕生という事実を否定することは誰も出来ませんでした。2025年からのトランプ2.0も然りです。 

日本国民は、米大統領選をただ傍観し、他人まかせにしてしまったのではないでしょうか。否、それどころか、2013年以降のアベノミクスと日銀こそが異端のトランプを新大統領に押し上げてきた可能性さえ否定できないのではないでしょうか。そして今そのツケを、日本を含む世界中が支払わされているということかもしれません。


忘れ去られた開放経済の2大目標

トルストイの名著「アンナ・カレーニナ」は、「幸せな家族は皆同じように見えるが、不幸な家族はそれぞれの不幸の形がある。」との冒頭の出だしで有名ですが、世界経済にもそれは当てはまります。
かつて1950年代に、オーストラリアの経済学者トレバー・スワンは、一国経済は二つの経済目標をもつべきだと主張しました。一つは国内均衡であり、もう一つは対外均衡です。

米国で最も権威があり最も売れている国際金融論の学部学生向けテキスト「クルーグマンの国際経済学 理論と政策 下 金融編(クルーグマン/オブズフェルド)」(丸善出版)でも、 スワンの図に基づく対内均衡と対外均衡の議論が展開されています。

対内均衡とは、物価の安定と最大雇用です。持続的な経済成長、あるいは安定したインフレの下で完全雇用を目指すことに他なりません。なお、日銀の2%インフレ目標はこの対内均衡という概念の一部でしかないことに注意が必要です。

他方、対外均衡とは、過度な経常収支赤字や黒字を回避することです。過度な対外収支赤字に陥れば対外債務の返済が困難となり、他方過度な対外収支黒字を生めば、そのコインの裏側として他国の対外債務返済を困難にしかねません。

そこで、対内均衡と対外均衡が共に満たされているのなら、そのような経済国家は幸福を享受していることになります。日本経済もこの対内・対外同時均衡を目標とすることが求められます。

しかし、対内均衡と対外均衡のいずれかが満たされないのであれば、そのような経済は幸福国ではなく不幸な国といわざるをえません。

スワンの図でも、幸福国は対内・対外均衡を同時に満たして皆同じように見えます。

だが、不幸な国は国内で好況か不況か、対外的に黒字か赤字かの組み合わせで4つのそれぞれの不幸の形があります。

そこで、真の国際政策協調とは、各国がその時々の対内・対外不均衡状態のなかで、各国がそれぞれ異なった財政・金融・為替の政策手段で対内対外の同時均衡を目指すことです。

政策手段としては二つ存在します。一つは財政と金融政策を主とする総需要管理政策(内需拡大か内需抑制)です。二つ目は、各国為替レートの変更(切り下げや切り上げ)です。

具体的には、現在、対外黒字を享受し好景気の日本やユーロ圏は通貨切り上げが望ましいのです。

対外赤字に悩みながらも好景気を享受する米国は、本来、内需抑制こそが望ましいのです。

そして、対外黒字を享受してはいますが、不況に苦しむ中国は内需拡大こそが望まれます。


日米欧中はそれぞれ幸福国に向けてより良い方向に向かっているのでしょうか?

遺憾ながら、世界の主要国は幸福国に向かっての歩みをむしろ後退させる中で、内外不均衡が再び拡大してきています。2016年11月に異端のトランプ米大統領が誕生したことは不思議ではありませんでした。

また、現在の2025年4月にトランプが相互関税政策に打って出てきたのも必ずしも意外ではないのです。

特に、我が国は、インフレと好況に転じてきているなかで、円安をいたずらに放置し続けているのは問題なしとしません。


債権国が通貨安を狙い、債務国が通貨高に陥る逆立ちした世界経済

日米ユーロ圏や中国などが、上記のようにそれぞれの異なる不幸さの中にあって、それぞれが最適な経済政策をとっていれば、世界は共に対内・対外均衡という一様に「幸福国」にたどり着くことができます。

しかし、現在の世界経済は、「リーマン・ショック」直前同様に、まるで逆立ちしているとさえ見ざるを得ません。

OECD経済見通し(2024年12月)によれば、ドイツは域内共通通貨ユーロを利用して、非伝統的金融政策を採用する欧州中銀の下で、通貨高に動くどころか経常収支黒字はGDP対比6.6%と大幅に拡大させ続けてきています。ユーロ圏全体の経常収支もGDP比+3.7%の黒字を記録しています。

日本も日銀の異次元緩和継続で大幅円安をいまだに狙っているとの誹りを免れません。結果、我が国の対外収支の黒字はGDP比+4.4%にも上ってきています。

米国はこれまで好況が続き世界経済を牽引し続けてきました。しかし、経常収支のGDP比は-3.8%のかなりの対外赤字の状況にあるために、本来は内需引き締めが望ましく、FRBの利上げこそがむしろ必要かもしれません。しかし、トランプ大統領は大減税とむしろFRBの利下げさえ主張してきており、トランプ2.0には内部整合性が欠けていることも否定できません。

このように、世界の主要国が、対内均衡と対外均衡を同時に満たすことができずに、それぞれが不幸な状況に陥るとすれば、世界経済は一様に幸福になるどころか、対立や分裂が避けられません。

特に、ドイツや日本などの主要債権国が通貨安政策で対外黒字をため込み、逆に最大の債務国である米国がドル高で対外赤字を膨らませています。世界経済の不均衡は、相変わらず米景気の短期過熱に隠されてきていただけで、いずれ世界経済の不均衡拡大の深刻さが浮き彫りにされかねない状況であり続けてきていたわけです。


世界経済の不均衡がこれだけ拡大してきていたのですから、国際金融市場だけが安泰というわけにはいきません。

こうして、トランプ2.0登場以降に国際金融市場では大嵐が特に2月末以降に吹き始めてきている事は無理もないとも言えるのです。

問題は、このまま通貨戦争⇒貿易戦争⇒覇権戦争はいつか来た道であり、相互関税の応酬はリアル・ウォーさえ非現実的とは必ずしも言えない危険を孕んでいることです。

我が国はせめて同盟国アメリカとのWIN-WINのゲームプランを、日本の政治経済金融システムを世襲化・特権化・利権化が今でも蔓延る戦中の「1940年体制」から大変革することで、日本の大復活を図る絶好のチャンスを逃すわけにはいきません。

いまこそ日本の市民の英知と勇気が試されているのです。