ギュスターヴ・モロー展 | けろみんのブログ

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日記・観た映画のこと・観た展覧会の感想

2019年6月23日まで新橋のパナソニック汐留美術館で開催されています。
お得な情報がひとつ。
5月18日は全ての人が無料です。



 
パリにあるギュスターヴ・モロー美術館はモローが母、恋人を亡くした後に自宅を美術館に作りあげたものです。
教え子のルオーが初代館長でした。

パリに行った際行けなかった分あちらからやって来てくれてラッキーです。


4月20日は成城大学教授 喜多崎 親 氏の講演会
「ギュスターヴ・モローのサロメ」が開催されたので参加しました。

さすが大学教授、90分の枠で5分質問タイムを残しきちっと締めくくり、素晴らしい講演会でした。公式ページに「応募を締め切りました」と出ていたにも関わらず電話して申し込んで良かったです。

・サロメは1876年に2点サロンに出展している。
1つは「サロメ」ヘロデの前で踊る場面(油彩)。
もう1つは「出現」サロ目の前にヨハネの首が現れる場面(水彩)
この2点は対になる予定だった模様。
「出現」は今回油彩画が展示されている。未完成で、後年(1897年頃)モローが文様を書き加えている。美術館展示に向けての加筆だろう。何故時期が特定できるかというと、モティーフの一部に1897年に出版された写真集から採用したものがあるから。
「踊るサロメ(刺青のサロメ)」など沢山のサロメを描いた作品、習作が残っていることから、3枚続きの祭壇画形式にする予定かもしれない。


・文様はモローがあちこちで取材して組み立てたものでこれを明暗に合わせ黒と白の線描で効果的に配している。
作品としては未完成だが美術館には同じような未完作品が多いため、この状態でよいとモローが判断したともみられる。

・サロメについて
マタイによる福音書にあるエピソード。(1部改変)
ヘロデ王の宴の際、ヘロデ王の妻ヘロデアの連れ子であるサロメが踊りを披露。
ヘロデ王「素晴らしい踊りだ!褒美になんでも好きなものをやるぞ?何がいい?ラスカルのぬいぐるみか?東方神起のチケットか?」
ヘロデア「サロメ、ちょっとこっちきなさい」

そしてヘロデアとサロメ母娘は別室へ。
サロメ「なんでも貰えるって!どうしようかな〜。デパコス?」
ヘロデア「私ヨハネ大っ嫌いなの。私ヘロデの弟と結婚してたじゃん?で、兄のヘロデに乗り換えたからってみんな黙認してくれてたのに、あの若造ったら大祝詞にも書いてあるとおり兄弟で同じ妻を娶るのはいけないとかいいやがって。それでもヘロデ王ったら死刑にしないからいつ私が離縁されるかわかんないじゃん?そしたらここ追い出されるじゃん?いやでしょ?ADDICTIONの新作なら私が買ってきてあげるからヘロデ王に頼んで欲しいものがあるの」
サロメ「CHANELの新作かSUQQUがいいわ!んで何頼むの?」
ヘロデア「ヨハネの首をお盆に乗せて持ってきてと」
サロメ「んー、了解!」

ということでサロメはヨハネの首をねだり、渋々ヘロデ王はヨハネを斬首することを命じお盆に載せた首がサロメの元に運ばれました。

サロメ「おかん、はいこれ。」
ヘロデア「ありがとう!これでスッキリしたわ。ついでに御座候の今川焼きも買ってくるわね」

という話です。

・何故脇役サロメが主人公になったのか?
中世物語を絵に表す場合「異時同図法」という方法が取られました。これは時間の異なる場面をひとつの画面に収めたものです。



ルーアン大聖堂のレリーフ。ヘロデ王の宴、サロメの踊り(中世では、サロメはアクロバティックな踊りをしたことになってます)ヨハネの斬首などがひとつの画面にまとまっており、サロメが何人もいます。

時代が降り、フィリッポ・リッピ程のリアリズムの域に達すると、異時同図法が辛くなってきます。同じ人が何人も画面にいると妙な感じです

この時代にはお転婆な踊りはなく、貴族的な優雅な踊りに変わります。でもサロメが沢山いると混乱しますね。

そこでこれ以降、ひとつの絵にひとつの場面を描くようになり、中でもインパクトの強い場面が人気になったのです

上に書いたストーリーの中で「乙女が聖人の斬首された首をお盆に載せて持つ姿」という異様な場面のコントラストの強さが見るものに強いインパクトを与えます。以後このテーマは繰り返し描かれました。

そして19世紀になるとオスカー・ワイルドの戯曲にあるとおり、サロメがヨハネに恋をして彼を殺させたとか色々な解釈のサロメお話が出来ました。
オスカー・ワイルドが戯曲を書いたのは1890年代、モローが集中的にサロメを描いたのは1870年代なので別の発展をしたわけです。

モローはサロメに巫女のような神秘性と幻想的な雰囲気を纏わせて、彼独自の世界を作りました。
本展覧会では、モロー美術館の名作「出現」が出品されています。もうひとつのヘロデ王の前で踊る「サロメ」はありませんが、習作の油絵が出品されています。

踊るサロメの目の前に突然、ヨハネの首が現れます。周りの人はヨハネの首に目を止めていないことからこれは幻視であり、彼女の運命を決定づけるものであります。

未完とされる白と黒で描かれたレリーフがキラキラ輝くガラスの王宮のようでとても幻想的です。

また衣装は古い聖遺物箱から着想を得て、より神秘的な感じを出しています。

このような詳しいことが分かるのは、モローは歳をとって耳が不自由になった母親に絵の製作前にそのコンセプトを紙に書き、渡していたものが残っているからだそうです。



ここから下は私がオルセー美術館にて撮影したギュスターヴ・モローの作品です。今回の展覧会への出品はありません。
オルフェウスの首を持つトラキアの娘


イアソンとメディア

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