パリに生きた銅板画家 長谷川潔展 | けろみんのブログ

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パリに生きた銅板画家 長谷川潔展-はるかなる精神の高みへ-
 4月7日まで町田の町田市立国際版画美術館にて開催されています。

展覧会の小冊子がもらえ、そこには作品リストと解説、会場内のキャプション等が全て書かれていてメモの必要のない素敵な展覧会でした。
見ることだけ集中できてよかったです。

長谷川潔は横浜市西区生まれ。ルドンなどに影響を受け渡仏、1度も帰国せずフランスで生涯を過ごしました。

技法によって印象が大きく変わるのが版画の面白さです。

アクアチント→薄いグレーが滑らかで綺麗。ほわっとしている。


花(切子ガラスに挿したアネモネと草花)
アクアチント1944~45




メゾチント(マニエール・ノワール)

版全体に細かな傷をつけてニュアンス豊かな黒を表現する技法です。
長谷川潔はこの技法に工夫を加え、左右斜め線をした時とした独自のマニエール・ノワールを考案しました。
黒の階調が細かいことが重要な技法で、長谷川潔の作品では硬質な艶のある効果を生み出しています。

「アレクサンドル三世橋とフランスの飛行船」
1930年
真ん中の飛行船のあたりのシミは私の影です💧
斜と縦横の無数の平行線に見える下地が特徴です。通常は微細な点だそうです。

ドライポイント

花は繊細、風景は空気が軽やかに感じて画面全体にメリハリがあります。

白のコントラストが良いので南仏、スペインなどの明るい土地にピッタリです。



細部までよく書き込まれていても明るい風景画は、爽やかです。

同時代の版画や影響の中ではルドンの黒、ムンクの「病める子」のお母さんのが何度見ても心に響きます。

長谷川潔に影響を受けた版画家の中で印象的なのは北岡文雄「冬の農村」
ブリューゲルの構図の大きな作品でした。

小林ドンゲは怪しい感じが魅力です。「虚しい時」心に穴が大きく空いて埋まらないメンヘラの姿をよくとらえています。

丹阿弥丹波子メゾチントの美しい花!柔らかな花びらが長谷川潔とは違った魅力です。

第二次世界大戦中苦境にたった長谷川潔はある日、木に「ボンジュール」と言われ「ボンジュール」と返す。そこから精神世界、人間、自然と幻想を混じえた世界全体が素晴らしいものに見えてくる 
という体験をなさったそうでそこから精神世界と寓意をまとった物体を描くようになります。
小鳥は精神、長谷川自身。水は生、魚は物質、球体は世界、円環は個々の人間の業績の大
、チェス駒は階級、木蔦は誠実、貝殻は命の再生、文鎮は詩歌論文を失わないように押さえておくもの。全ては人生の意味を持つ寓意画です。
1950~1969年末に制作されたこれらの作品は、微細な点刻で黒の中から白く浮かび上がらせる手法で精緻で気迫を感じます。
(写真は照明と私が映り込んであまり黒くなく、すみません)








実物の黒の深さ、艶、迫力があり、とてもここでは表現できません💧


最晩年(1970年)の「横顔」はマニエール・ノワールを使い西洋女性がチャイナドレスを着た横顔で謎の作品。


長谷川潔はケネヴィルという摺師と2人、お互い研鑽し技術を高め合い作品を作り出しておりました。1970年にケネヴィルが亡くなると長谷川潔は製作を止めました。この「横顔」は最後の作品になります。

平成31年度もひと月足らずで終わります。
令和元年という言葉を早く使いたい新しもの好きの私です。