マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898〜1972)の作品150点あまりがイスラエル博物館からやってきました。常設展示していないので、イスラエル博物館に行っても見られないという、秘蔵のコレクションです。鉛筆やチョークなどの直筆ドローイングや版木、生涯8点しか製作していないメゾティント(銅板に細かい傷をつけ、白くしたい部分を滑らかにする事で細かな陰翳をつけることのできる技法)による作品、有名な「相似性」など錯視を描いた傑作など、質の高い作品が揃い、見応えがありました。
このコレクションは旧蔵元がニューヨークの法律家、クレイマー夫妻です。版画に手彩色を施した独特な作品などもあり、保存状態もよく見事なコレクションに感謝して、一点一点じっくりと楽しみました。
また、自画像、家族の肖像やエッシャー夫婦をモティーフにした作品からは、だまし絵のように変わることのないエッシャー本人の人となりがうかがえます。
エッシャーといえば「だまし絵(トロンプ・ルイユ)が有名です。この分野の第一人者となったきっかけは1920年代にしばしば訪れたイタリアのアマルフィ海岸の切り立った崖と急勾配に建てられた建物の景観だったそうです。
もう一つエッシャーに大きな影響を与えたのは、スペインのアルハンブラ宮殿のモザイクタイルです。平面充填という着眼点はここからスタートしました。
その他イタリア各地の城塞都市を写生して、版画を制作しました。訪れたイタリアの町の中に2年前に訪れたオルヴィエートが入ってましたが展示はありませんでした。
この分野でも版画ならではの線描に白黒のバランスを使い分けることにて成功したようです。
また、エッシャーは版画一筋で油絵や水彩画作品は一切ありません。技術によるものが多く、表現に制約が多い版画をあえて選んだことで彼の挑戦意欲が掻き立てられ創造の原動力となりました。
また、日本の浮世絵は絵師と摺師は別々の人が行いますがエッシャーはほぼ1人でやっておりました。そのためか、エッチングやメゾティントなど手間がかかるものはあまりありません。
私が感動したのは版画ならではの線と白黒のバランスによる、無限に広がる奥行きです。すべての線の向き、色のバランスが計算されつくした上に配置され、そのため二次元にあるものが三次元、四次元と別の世界を見せてくれるのです。
オランダで生まれたエッシャーは父親の勧めで建築を学ぶためハーグの建築装飾美術学校に入りましたがそこでド・メスキータと出会い版画に目覚めます。
そして友人たちと旅したイタリアで起伏の多い土地と強い陽光がもたらすコントラストの強い風景に魅せられ、そこで出会った奥様の実家がローマにあるということもありしばらくイタリアで暮らします。
アマルフィ海岸や、昼と夜のコントラストが美しい街灯風景など多数の作品を作りました。
しかしファシズムの台頭で生活は一変し一家はスイスに移住。
第二次世界大戦は彼の心に暗い影を落としてその後ユニークな人物や風景を描いた作品は姿を消し、抽象から具象へ、形が変化して戻る永久運動、永遠といったテーマを内包する作品に移行します。
会場は、8つのキーワードで構成されており、反射のセクションでは鏡で「もっと奥まで展示があるのかな?」と錯覚したり、階段を上手く利用して「相似性」の作品の中のように思える作りになっておりました。
木版画の白黒バランス、メゾティントの繊細さを活かした目玉の写り込みなど、版画を極めた技が冴えています。
ぐるぐる回る階段や鳥に魚に変化する図形を追っていると時間がどんどんと過ぎていきます。本当は多面体とか数学的ないろんな考察があるのですが、頭が悪くて上手くかけないので、そこは「すごい」で表すこととします。
音声ガイドも中々良く、エッシャー自身の言葉が沢山引用されており、興味深いです。
図録は2700円でペタンと平たくページが開けるようになっており、エッシャーらしく折り目正しいです。メタモルフォーゼⅡという4メートルの長さの作品は1メートルくらいの図版がついており、嬉しいです。
バックバンドもこの作品のイメージで、四色から選べます。
会場出口横にはエッシャーの絵の中に自分の動きを組み込んだ動画が撮れるサービスがあります。とても楽しかった!
おまけ
今週は宅配食材でちょっとお洒落なメニューを選んだのでバラエティにとんでます。
水曜日はチーズダッカルビと、三色ナムルでした。ちょっと盛り付けが多すぎだけど💧火曜日はポークソテー(バルサミコソース)とマッシュポテト、キヌアのサラダでした。
月曜日は、タコライスとジュリアンスープでした。
月曜日は、タコライスとジュリアンスープでした。
面白いメニューばかりで、作るのも張り切りますよ。
今日は、夏野菜のフリットとカッペリーニです。
最後にエッシャー展最初に「エッシャーの父はエッシャーが生まれる20年前に5年間日本で技師として働いたことがあり、その時とった詳細なメモなどは息子のエッシャーに受け継がれ今回の展示にもその美意識が生かされているとありましたが、正直よくわかりませんでした!
波の描き方、鯉の泳ぎなどのことかなぁ。
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