初発の頃の話④
入院の前日。
いつもと同じように過ごしました。
(いつもと同じではダメなんです。手術するんだよと子供たちに言わなければ!)
最後まで面と向かって話すことができませんでした。
手紙を書くことにしましたが、どう書いたらいいのか筆が進みません。
ガンと分かってから1か月間、この件は黙ってきたのでますます言えなくなっていました。
日ごろのコミュニケーションの少なさがこんな時にあらわになります。
手紙にも本当のことが書けませんでした。
2日後の手術当日は、夫は長女だけを連れてきました。
なぜ?
長女は病院に向かう車の中で今回のことを聴かされたようです。
聴きながら泣き出したと聞きました。
母は死ぬんだ、くらいに想像したのでは…。
鼻をグズグズさせながら病室に入ってきました。
ところが、自分の足でスタスタと
「じゃあね、ここからは眼鏡も外さないといけないから預かっていてね」と
手術室に入っていく私を見て、気が抜けたことでしょう。
長女は、切り取った部分を説明の際に見せられています。
センチネル生検で青い色素にまみれ、今や不気味な物体に変貌した胸を。
(私が見たかったのに)
耐えられず途中退席したそうです。
私が長女だったらどうしただろう・・・。
朝から気持ちが追い付かない事ばかり、一気に経験させられて、
夫のデリカシーの無さに突っ込みようがありません。
次女とは手術後の夜に携帯で話をしました。
術側の腕はまだ動かすことができず、もう片腕は自動の血圧計が取り付けられており、
両腕とも自由がありませんでした。
不本意ですが、夫に携帯を耳元に持ってきてもらって、次女と話すことができました。
「ママ帰って来れるんでしょ?」
電話の向こうで次女が泣き出しました。
(帰れるよ、ごめんね。ちゃんと言わずに入院しちゃって)
腕に自由がないと涙も拭けないのです。
涙を拭くために、
再び不本意ながら夫に涙を拭くように頼みました。
夫の「なに、泣いてんだよ」
という一言に、心がピキッと冷やされ涙も止まりました。
前回の話がアメトピ掲載されました。
今までに見たこともない順位をいただき、感激です。
ありがとうございました。