研修医による胸膜癒着術 | 小さな花のひとりごと

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乳がん再発の心の動きを綴っています。
現在、肺、縦隔、骨に転移していますが、治療のおかげで元気に過ごすことができています。
やれることをやれるうちに。

胸膜癒着術の話の続きです。

入院手続きをして、荷物を整理する間もなく、2人の研修医が病室に入ってきました。

挨拶もそこそこに、すぐに癒着術を始める準備をしています。

 

まって、まって。まだ着替えてもいないんですけど。

研修医のあなたたちがやるって聞いてないんですけど、それって患者の承諾は必要ないんですか?

入院の予約時間より早い時間に病室に入ってきて、なぜそんなに急がせるんですか?

 

最初から印象悪いです。

 

肺にドレーンを差し込むことがこれほど困難だとは、思いもよりませんでした。

むき出しになった私の背中の上で2人の研修医が相談し始めました。

「場所はここでいいよね」「そこが一番いいかな」「じゃあ、どっちがやる?」など、

友達同士の会話のような頼りない会話をしています。

でも仕方ありません。

どうか早く済みますように。

 

…全然早く終わりませんでした。

 

局所麻酔も痛いし、ドレーンを入れるのが更に激痛。

ドレーンがなかなか入らず、無理やりグリグリと押し込んでいるのが伝わり、何とも言えない痛さです。

我慢できない激痛に耐え切れず「痛い」「痛い」と何度も声が出てしまいます。

 

研修医達は「おかしいな」「もう1回やってみよう」

「すみません、もう一度違う場所でやります。また麻酔しますのでチクッとしますよ」

チクッとどころじゃないでしょ、あんたたち、局所麻酔の痛さ知ってるの?

 

3回やり直したと思います。

人の身体を何だと思っているんだ。練習台とでも思っているのかと、ネガティブな思いが頭をもたげてきました。

痛いし情けないし、涙が出てきました。

いい大人が泣いたらダメだと思ったのですが、一度涙がこぼれてしまったらもう止まりません。

涙を拭きたくても、急がされて何も持たずに横たわったので、マスクでふきふき。

 

研修医達は結局、指導医I先生を呼びに行きました。

I先生は

「ごめんね、痛い思いをしちゃったね。もう一回だけやらせてくれる?」

「身体が小さくて肋骨の間が細くて、なかなか入らないんだよ」

「細いドレーンにしてあげたいけど、この後に薬剤を流しこむのに、これ以上細い管にするのは無理なんだよ」

私は、返事もしたくなくて(なにしろ不貞腐れてますから)、首をコクンとするのが精いっぱいでした。

 

もともとしたくない治療だったし、もうやめます、帰ります。

本当はそう言いたかった。

4度目、超激痛と共にグリグリと超力任せにドレーンが挿入されて、やっと解放されました。

看護師、研修医、指導医がいなくなって、しばらく呆然自失です。

頭が真っ白。何も考えられないし、管に繋がれて動けない。

 

でも終わりました!

あとは、胸水が抜けてドレーンからタルクを入れる処置が待っています。

 

この時は、管を挿入するだけでこんなに大騒ぎして、

タルクを入れる時はどれだけ苦しむだろうかと、ひたすらビビりまくっていました。