緩和ケアでは、その時の不調を訴えてそれに見合った治療や方法を考えてくれます。
当時、とにかく「声を戻したい」と何度も訴えていました。
肺や心臓のほうが命に関わるので、声に関してはいつも後回しにされていました。
声が出ないことは、単にコミュニケーションがとりづらく不便なだけでなく、QOLがかなり下がります。
気持ちも凹みます。
誰かとおしゃべりすればストレス解消できますが、それもできないのです。
喉から出てくる声が本来のものではないもどかしさも、本人でないと分からないのです。
ある日のこと、パン屋でレジに行った時にスタッフが後ろを向いて別の作業をしていました。
「すみません」と声をかけても、店内のざわめきで私のかすれ声がスタッフに届きませんでした。
何度も言いましたが、全然気が付いてくれなかった時に、私はパンも買えないのかとガッカリしたことがありました。
スーパーで電子決算払いをしたいときに「ペイペイで」と言っても聞き取ってもらえないことが何度もあります。
黙ってスマホを差し出せばいいかもしれませんが、なんだか不愛想な客になってしまいます。
外出するのも面倒になっていきました。
3月末、緩和ケア経由で耳鼻咽喉科に行きました。
声が出ない原因を検査するためです。
声が出ない原因は反回神経でした。
反回神経は、迷走神経 から分かれた神経で、気管と食道の間を通って喉頭へ行く神経です。
左の反回神経に悪い子たち(がん細胞)が邪魔をしてうまく働いていないそうです。
反回神経は、声帯の開閉に関わりますが、私の左の声帯は、悪い子のせいで開閉がマヒしているために声のコントロールができない状態だそうです。
声帯の開閉ができないから誤嚥も起こしやすくなっています。
水にむせるのもそのためです。
いずれ右の反回神経も悪い子たちが勢力を伸ばしてくると、呼吸もできなくなるそうです。
良くなることはないと( 確かにそう言った・・ )
すごく怖い話を聴いてしまった。。。さすが最強最悪のワル、がん細胞。
怖い話を聴いたあと、緩和ケアに戻り
自分から「放射線はどうですか?」と言ってみました。
こんな状態で生き長らえるのがイヤだったのです。
緩和ケアでは、私から「放射線科はどうか?」と言ってみました。
とにかく何でも試してみたかった。
今から思うと、自分から言わなかったら放射線科を勧められなかったのかな?と疑問が浮かびますが、
緩和ケアの手配のおかげで、一気に耳鼻咽喉科と放射線科に診てもらえることができた日です。
放射線科には「説明を聴いてみよう」くらいのつもりで行ったのですが、
なんとその日に一回目の照射が始まりました。
迷ったり悩んだりする間もなく治療が始まったのは、じたばたと迷う間もなくて良いですね。