前回のお話↓




オーナーは

私が産みたいとは言わないこと

きっと初めからわかっていた


なんとなくそんな気がする


いつも私の気持ちは

見透かされてる気がしていたから




⭐︎オーナー

「病院、ついていくか?」


⭐︎私

「大丈夫。マナミについてきてもらう。」


⭐︎オーナー

「そっか…」




検査薬で陽性が出て

親友のマナミに着いてきてもらい

病院に行った


産まないという選択を病院に伝えるのが

本当に辛かった


テルくんとの間にできて

産まれることができなかった赤ちゃん


申し訳なさと

情けない自分への苛立ち


一人娘のリンの顔がチラついては

最低な母親で申し訳なくなる



オーナーは独身だけど

なぜか

既婚者のテルくんとの間に赤ちゃんができた時より

産めないという気持ちが大きかった


テルくんとの時は

現実的に考えられなかったのかな


もしかしたら

産んで育てられるかもしれないという期待が

どこかにあった



でも今は違う


もちろん産みたい


でも

期待は持てなかった



つわりがひどく

昼の仕事中も何度もトイレに駆け込んだ


夜はバーで働いていることは

職場のみんなも知っていたので

二日酔いだと嘘をついた


夜の仕事中も何度もトイレにこもった


お客さんには体調不良だと言った


産めないのに

期待もしていないのに

夜の仕事はソフトドリンク


体調が悪くても

ソフトドリンクはあり得なかった私が

アルコールを飲まないので

お客さんは相当どこか悪いのかと心配し

付き合いが悪いとつまらない顔をした


それでも

飲むことができなかった



火照る体


だんだんと赤ちゃんを産む準備を始める体


ひどいつわりには

さすがに早く楽になりたいと思ってしまう


でも

やっぱりお腹の赤ちゃんは愛おしい


赤ちゃんが産まれる喜びを経験した分

心が引き裂かれそうになる




手術当日も

オーナーには病院には来なくていいと伝えた


またマナミに着いていてもらった


その方が気持ちも落ち着く




手術が終わり

目が覚め

何とも言えない気持ちになった


赤ちゃん

もういないんだ…



⭐︎マナミ

「トモ、大丈夫?」



心配そうにマナミが見守っていてくれた


マナミの顔を見たら

涙が溢れてきた




マナミも過去に堕胎手術を受けたことがあった


きっと

オーナーよりも

私の気持ちをわかってくれている


何も言わずに

ただただずっとそばにいてくれた




実家の両親の顔を見るのが辛いのと

一人娘のリンにも顔向けできない

そんな気持ちだったので

その日はまっすぐオーナーの家に行き

体が回復するまで休んだ



⭐︎オーナー

「体大丈夫か?何もできなくてごめん。」


⭐︎私

「大丈夫。」



オーナーには泣き顔は見せたくない


泣かないように必死にこらえた


心配させたくないとか

そういうオーナーへの思いやりとかではなく

ただ自分のプライドが許さなかった



自分が悪いのに

泣くのはおかしい


泣いたって赤ちゃんは戻ってこない


オーナーの前でなんて泣くものか


可哀想なのは赤ちゃんで

私じゃないんだから



それから数日後

昼も夜も

仕事に復帰し

何事もなかったかのように

いつものように生活した



ただ

何をしていても

心から楽しめない自分がいた




つづき↓



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