令和7年6月13日に国会で可決・成立し、同年6月20日に公布された改正年金法の正式な題名は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年6月20日法律第74号)」といいます(長ったらしいですね~)。

 

社会保険立法ではよくある法改正技法なのですが、A法、B法、C法など、3件以上の法律の一部を改正したい場合には、「A法等の一部を改正する法律(改正法)」という別の法律を制定させてから、その改正法に基づいて、A法、B法及びC法の一部を改正します。

 

ちなみに、A法とB法の2件の法律の一部を改正したい場合には、「A法及びB法の一部を改正する法律(改正法)」を制定して、その改正法に基づいて、A法とB法の一部を改正します。


すなわち、法律をもって法律を改正するわけですね。

 

さて、今回は、第58回(令和8年)社労士試験受験生のために、令和7年度年金制度改正法のうち、すでに施行されている令和7年6月20日施行分の解説をします(学習済みの方は確認になります)。

 

 

⑴ 国民年金法における特例任意加入被保険者制度の対象拡充(延長措置) について

国民年金法においては、65歳に達しても老齢又は退職を支給事由とする年金給付の受給権を有しないときは、70歳に達するまでの間において受給資格期間10年を満たすまで、一定の者について「特例による任意加入被保険者(高齢任意加入被保険者)」となることができます。

 

従来、「特例による任意加入被保険者(高齢任意加入被保険者)」となることができるのは、「昭和40年4月1日以前生まれの者」に限られていました(注)。

 

[注] この生年月日要件については、まず平成6年改正法(平成6年法律第95号)附則第11条の規定により「昭和30年4月1日以前生まれの者」とされ、次いで平成16年改正法(平成16年法律第104号)附則第23条の規定により「昭和40年4月1日以前生まれの者」と規定されていました。


そして、平成29年8月1日からは老齢基礎年金(老齢厚生年金)の「受給資格期間」が「25年」から「10年」へと大きく短縮されたため、もはや「特例による任意加入被保険者(高齢任意加入被保険者)」の制度は不要になるのではないかと思われていました。

 

ところが、令和7年現在においても、特例による任意加入被保険者(高齢任意加入被保険者)が1,500人ほどいることから、今後も特例による任意加入被保険者(高齢任意加入被保険者)の制度を継続させておく必要があります。

 

そこで、今般の令和7年改正法附則第40条の規定により、「特例による任意加入被保険者(高齢任意加入被保険者)」となることができる者の生年月日要件については「昭和50年4月1日以前生まれの者」と10年間拡大延長して改正することとしたのです(令和7年6月20日施行)。

 

 

⑵ 直近1年要件の延長について

障害年金給付や遺族年金給付においては、初診日(死亡日)が「令和8年4月1日前」にあるときは、直近1年間に保険料滞納期間がなければ、「原則の3分の2要件」を満たさない場合であっても「保険料納付要件」を満たすという経過措置があります(注)。

 

[注] ただし、「初診日(死亡日)において65歳以上の者」については、この経過措置が適用されないため、原則の3分の2要件を満たす必要があることに要注意です。

 

この直近1年要件との経過措置については、昭和60年の年金制度抜本改正の際に「初診日(死亡日)において昭和71年(平成8年)4月1日前にあるとき」と定められていたのですが(新法施行日である昭和61年4月1日から10年間の暫定措置)、保険料滞納者等が絶えなかったことから…

初診日(死亡日)において平成18年4月1日前にあるとき」、

初診日(死亡日)において平成28年4月1日前にあるとき」、

初診日(死亡日)において平成38年(令和8年)4月1日前にあるとき」と、

10年ずつ3回も延長されてきたのです。

 

そして、今般の令和7年改正において、「初診日(死亡日)において令和18年4月1日前にあるときと改正し、4回目の延長措置が実施されました(令和7年6月20日施行)。

 

もはや、この経過措置を廃止するわけにもいかないことから、恒久措置にしてしまおうという意見もあります。

 

 

⑶ 国民年金の保険料納付猶予制度の期間延長について

国民年金法による保険料納付猶予制度については、当初は「30歳未満の第1号被保険者」について「平成17年4月」から実施されたものですが、特に就職氷河期の非正規労働者等に与える影響を考慮し、保険料納付猶予制度の対象となる年齢要件を「平成28年7月」から「50歳未満の第1号被保険者」に拡大しました。

 

そして、この保険料納付猶予制度そのものが暫定措置(経過措置)であるために、その終期については、「令和12年6月まで」とされていました。

 

今般の令和7年改正においては、引き続き就職氷河期世代等の支援を継続する必要性に鑑み、保険料納付猶予制度の終期を5年間延長して「令和17年6月まで」と改正されました(令和7年6月20日施行)。

 

※ なお、保険料免除措置については、特定の免除措置を第1号被保険者が指定することができますが、指定がなされない場合には、①全額免除、②納付猶予、③4分の3免除、④半額免除、⑤4分の1免除の順に審査され、該当した免除措置が適用されることになっています。

 

ここで、申請全額免除と納付猶予の前年(1月から6月までの月分の保険料については、前々年)における所得要件は次のように同額となっています。

・「35万円×(扶養親族等の数+1)+32万円」以下

所得基準が同額なのですから、申請全額免除にも納付猶予にも両方に該当する場合がありますが、次の点で異なっています。

① 「世帯主」に保険料負担能力がある場合には、申請全額免除措置は認められないが、納付猶予措置は認められる。ただし、「配偶者」に保険料負担能力がある場合には、申請全額免除措置も納付猶予措置もともに認められない。

② 申請全額免除の措置においては、老齢基礎年金の額について1/2(原則)として評価し反映されるが、納付猶予の措置においては、保険料の「追納」を行わない限り、老齢基礎年金の額には反映されない。

 

 

次回予告

次回は、令和8年4月1日施行分の主に次の改正事項について解説します。

① 離婚時年金分割における標準報酬改定請求の期限延長(2年以内から5年以内へ)

② 在職老齢年金制度における支給停止調整額の引上げ(法定額48万円から62万円への引上げ)

③ 確定拠出年金法における「簡易企業型年金(簡易型DC)」の廃止