ここ数か月間、X(旧Twitter)において、おそらく20人以上もの人たちが「労働力人口が減少している昨今」とか「減り続ける労働力人口において・・・」などとポスト(投稿)しているのを見てきました。

 

Xにポスト(投稿)している人のなかには、なんと社労士やシンクタンクの研究員などもいることに、かなり驚いています。

 

というのも、社労士であれば受験生時代に「統計問題」を学習しているはずですし、研究員に至っては正式に「統計学」を学んでいるはずだからです。

 

今回は、本当に労働力人口が減少しているのかどうか、総務省統計局の公表による「労働力調査」を調べてみることにします。

 

労働力調査」を選ぶのは、政府が公表する法的に重要な「基幹統計調査」(現在54ある)の1つであり、これほど大規模な調査は他にないからです。

 

その前に、統計調査における用語の定義をしっかり確認しておきましょう。

 

≪用語の定義≫

労働力人口」とは、「15歳以上人口」のうち、「就業者」と「完全失業者」を合わせた人口のことをいい、「就業者」とは、調査週間中に、賃金、給料、諸手当、営業収益、手数料、内職収入など収入(現物収入を含む)になる仕事を少しでも(1時間以上)した者をいいます。

なお、収入になる仕事を持っているが、調査週間中、少しも仕事をしなかった人のうち、次のいずれかに該当する場合は「就業者」として扱います。

⑴ 勤め先のある人で、休み始めてから30日未満の場合、又は30日以上休んでいても賃金や給料をもらったか、もらうことになっている場合(年次有給休暇中の労働者や育児休業・介護休業等を取得中の労働者など)

⑵ 個人経営の事業を営んでいる人で休業してから30日未満の場合

また、家族の人が自家営業(個人経営の農業や工場・店の仕事など)の手伝いをしたような場合には、たとえ無給であっても、収入になる仕事をしたこととして「就業者」に含める扱いとしています。

 

実はこの段階で、すでに「労働力人口」の意味を誤解している人が非常に多いのではないかと思います。「労働力人口」とは、実際に働いている就業者のみならず、仕事があればすぐに働くことができる「完全失業者」をも含む概念なのです(そのため「労働参加人口」と呼ぶことがあります)。

 

【1】労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の概要

この「2024年(令和6年)労働力調査(基本集計)の概要」は、2024年(令和6年)における1年間を平均した状況を調査したものであり、2025年(令和7年)1月31日に公表した「要約版」を詳細に記したものとして、2025年(令和7年)4月1日に総務省統計局ホームページに掲載されたものです。

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/gaiyou.pdf

 

⑴ 労働力人口は32万人の増加

労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は、2024年平均で6957万人と、前年に比べ32万人の増加(2年連続の増加)となった。男女別にみると、男性は3800万人と1万人の減少、女性は3157万人と33万人の増加となった。

また、生産年齢人口(15~64歳)における労働力人口は、2024年平均で6011万人と、前年に比べ16万人の増加となった。男女別にみると、男性は3250万人と4万人の減少、女性は2762万人と21万人の増加となった。

確かに、男性については2019年頃をピークに減少し、ここ3年間はほぼ横ばい傾向となっていますが、女性の労働力人口は大幅に増加しており、結果、男女計の労働力人口は、令和5年、令和6年と、2年連続で増加しています。

 

⑵ 就業者は34万人の増加

就業者数は、2024年平均で6781万人と、前年に比べ34万人の増加(4年連続の増加)となった。男女別にみると、男性は3699万人と3万人の増加、女性は3082万人と31万人の増加となった。

また、生産年齢人口(15~64歳)における就業者数は、2024年平均で5851万人と、前年に比べ18万人の増加となった。男女別にみると、男性は3161万人と1万人の減少、女性は2690万人と19万人の増加となった。

 
人手不足」が叫ばれるなか、実際に働いている人(就業者)の数が減っていると誤解している人が多いのかもしれませんが、いえいえ、実は令和3年から「4年連続の増加」となっています。

 

でも、以上は2024年(令和6年)の平均結果ですから、2025年(令和7年)における労働力人口や就業者数は、もしかしたら減少しているかもしれませんね。

 

そこで、このブログを執筆している時点(令和7年12月6日)における最新の「労働力調査」(令和7年11月28日公表)を見てみることにしましょう。

 

【2】労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)10月分結果

 

 

 
労働力人口は「7047万人」と、2024年(令和6年)平均と比べて90万人の増加、また、就業者数についても「6865万人」と、2024年(令和6年)平均と比べて84万人の増加となっています。
 
これを「月単位」で見た場合・・・
就業者数は6865万人。前年同月に比べ52万人の増加。39か月連続の増加
雇用者数は6214万人。前年同月に比べ48万人の増加。44か月連続の増加
正規の職員・従業員数については3753万人。前年同月に比べ65万人の増加。24か月連続の増加 
非正規の職員・従業員数については2121万人。前年同月に比べ23万人の減少。3か月連続の減少
非労働力人口(労働力人口に含まれない、おおむね働いていない者の人口)は3923万人。前年同月に比べ87万人の減少。44か月連続の減少
 
このように、労働力人口も就業者数も雇用者数も、すべて増加しています。
 
まあ、一方では確かに、総人口も、15歳以上人口も、生産年齢人口(15~64歳)も、減少していることは事実です。
しかしながら、この3年間ほどでみると、労働力人口も、就業者数も、雇用者数も、増加傾向にあることもまた事実なのですから、「昨今の労働力人口は減少しているが…」とか「減少している労働力人口において…」などという表現は決して当てはまりません。
 
しかしながら!
今後(将来)の労働状況について楽観視できるかどうかとは別問題です。
 
現在の労働力人口の増加は、女性の増加幅が大きいことが要因ですが、一方で、男性の労働力人口はほぼ横ばいであることが気になります。
 
ただし、楽観視できないという意見だからといって、目の前にある統計調査の結果を無視してよいことにはなりません。
 
労働力人口も、就業者数も、雇用者数も増加傾向にあるのに、なぜ「人手不足」と言われているのか、なぜ「人手不足が増えている」と言われるのか、増加している就業者や雇用者はどのような働き方をして、どのような企業等で働いているのか、これらの原因等を考えることが大切です。また、もしかしたら「人手不足」という言葉に踊らされているのではないか、と疑ってみることも大事です。
 

人手不足」というのは経営者の視点で言う言葉ですから、これを労働者の視点で言うとしたら、どのような表現になるのでしょうか?

 

もちろん、令和8年度から労働力人口(就業者数)は減少し始めるだろうというような個人的予想を述べることは全く自由です。しかし、それには令和7年度までの労働力人口やら就業者数やらの推移をしっかり把握しておく必要がありますね。

 
私自身は統計学者でも経済学者でもありませんので、ここで少なくとも言えることは、
自分の意見を述べる前に、統計調査の結果をよく確認しておきましょう!
統計上の用語を使って表現しようとするときは、その定義をしっかり確認しましょう!
ということくらいでしょうか。
 
 さて、最後に予告になりますが、「2025年(令和7年)平均の労働力調査(基本集計)の要約(簡略版)」につきましては、2026年(令和8年)1月30日(金)の午前8時30分に公表される予定となっています。
第58回(令和8年度)社会保険労務士試験を受けられる受験生の方にとっては、非常に重要な統計調査の公表となりますね。
 
まもなく新年(末広がりとなる令和八年)を迎えますが、受験勉強をぜひとも成就させてください !