【1】国民年金法の復習

国民年金法は、昭和34年4月16日、法律第141号として公布されました。

※ これ、「国民皆年金制度の確立」が頭にあるのか、昭和36年に制定されたと勘違いされている人が少なくありませんので、気をつけてください。

 

そして、無拠出制の国民年金法(福祉年金)については昭和34年11月1日に、また、拠出制の国民年金法については昭和36年4月1日に、それぞれ施行されました。

 

福祉年金の典型である老齢福祉年金は、無拠出制国民皆年金法の施行日である昭和34年11月1日時点70歳以上の者を対象に、第1回目の支給として、昭和35年3月3日(桃の節句)、昭和34年11月分から翌年2月分までの「4か月分」をまとめて、全国の郵便局で支払われたそうです(無拠出制の福祉年金は「郵便局」で受け取るものとされていました)。

 

当時の新聞記事には、老齢福祉年金を受け取った老人たちが、「これで孫におもちゃを買ってあげるんじゃよ」などと喜んでいる様子が書かれています。

 

※ 老齢福祉年金は、その後、昭和36年4月1日時点において50歳を超えている者が70歳に達したときから支給されることになります。

 

【2】拠出制国民年金法の施行と同時に20歳になった人の年金額等を計算してみると…

拠出制の国民年金法は、当初「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民」を適用対象として施行されました。

※ 当初は「日本国内に住所を有し、かつ、日本国籍を有する20歳以上60歳未満の者」に限定して適用されていたということです。つまり、日本国籍を有しない者や、日本国籍を有していても外国に住所を有する在外邦人には、旧国民年金法は適用されなかったのです。

 

ここで、拠出制国民年金法が施行された昭和36年4月1日にちょうど20歳に達した人、つまり、昭和16年4月2日に生まれた人に登場してもらいます。

 

この人の名前を仮に “田中太郎さん” としておきましょう。

 

⑴ 昭和36年4月当初の国民年金保険料(月額)は、35歳未満の者については「100円」、35歳以上の者については「150円」の定額制とされていました(令和7年度現在においても定額制ですけどね)。

年齢によって保険料額を変えていたのは、負担能力を考慮したものと思われます。

 

⑵ 40年間(480月)保険料を完全納付した者の老齢年金の満額は、「42,000円(月額3,500円)」と定められていました。

 

この老齢年金の満額がどのように決められたのかというと、国民年金法制定直前の昭和33年当時の生活保護法による農山村地域における生活扶助の基準額である「月額2,000円」を基準としていました。

 

これを、明治期からの経済成長率や諸外国における経済成長率などを調べ、年率1.5%程度上昇と推定し、40年の拠出後には「月額3,500円(年額42,000円)」になるものと計算したようです。

 

ここで、田中太郎さんの国民年金保険料の納付総額を次のように計算して、令和7年度現在の年金額等と比較する人がいますが、正しくありません。

①20歳から34歳までの保険料納付総額

100円×12か月×15年=18,000円

②35歳から59歳までの保険料納付総額

150円×12か月×25年=45,000円

つまり、①+②=63,000円

 

わあ、すごい!

老齢年金の満額が「42,000円」だから、わずかに1.5年で元が取れるぞ!

 

そんなこと、あるわけないですよね。

そもそも田中太郎さんが60歳に達するのは、2001年(平成13年)4月1日ですし、65歳に達するのは2006年(平成18年)4月1日です。

 

しかも、「老齢年金」という給付の名称についても、昭和61年4月1日から「老齢基礎年金」と改正されています。

 

田中太郎さんが家業を継いで、一度も厚生年金保険に加入しなかった(企業に就職しなかった)という前提であれば、まあ、あり得るかもしれませんが…。

 

40年もの間には、通貨の価値も物価も賃金も、世の中全体がとんでもなく変化していますから、国民年金保険料も、老齢年金や老齢基礎年金の満額もずいぶんと引き上げられています。

 

田中太郎さんが60歳に達する直前の2000年度(平成12年度)の国民年金保険料の月額は「13,300円」でした。

 

また、田中太郎さんが65歳に到達して老齢基礎年金を受給し始める2006年度(平成18年度)における老齢基礎年金の満額は「792,100円」でした。

 

※ 田中太郎さんが令和7年度現在もご健在であり、老齢基礎年金(829,300円:令和7年度価額)以外に何らの収入所得もなければ、老齢基礎年金に加えて「老齢年金生活者支援給付金」(5,450円:令和7年度価額)も受けられます。

 

【3】額面で計算してみると

国民年金保険料額については、日本年金機構のホームページに昭和36年4月分からの推移が掲載されていますので、それを利用して計算してみました。

   

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hensen.files/hokenryouhensen.pdf

 

田中太郎さんが1961年(昭和36年)4月分から2001年(平成13年(昭和76年))3月分までの480月(40年間)もの間、1か月も欠かさずに国民年金保険料を納付したとすると、その合計納付額は「2,434,320円」になります。

 

つまり、額面通りで計算すると「3.07年」で元が取れることになります。

 

もちろん、老齢基礎年金の満額も毎年度改定されますが、40年間の大きな変化と比べればたいした変化ではないので、65歳で老齢基礎年金を受け始めて、およそ68歳以上生きれば元が取れることになります。

 

しかしながら、本当のことを申し上げれば…

保険料を納付してから給付を受けるまでには数十年という大きな時間差があり、貨幣価値が大きく変わるため、以上のような名目額の比較は意味をなさないことを認識しておいてください

 

本日、令和7年4月29日は「昭和の日」でもあるのですが(令和7年は「昭和100年」でもある記念の年です)、令和6年度における障害年金の不支給決定割合が異常に高いとのニュース記事が大きな話題となっていましたので、緊急年金速報として(?)、上記の額面額試算をしてみたという次第です。